第81回 吉岡友見

役に入ってお芝居している時、舞台上で活かされているなあ、と。


―ずっと演劇をされていましたが、新喜劇に入られたきっかけは?

もともとはお笑いがメッチャ好きやったんですよ。中学高校の頃、2丁目劇場とかに通ってるくらいのお笑いオタクで。「すんげー!Best10」(ABC)とか今も実家にビデオがあるくらい好きでした。高校受験の時に、兄の友だちが宝塚の演劇科がある公立高校を受験するって聞いて、「そんな高校あるんや」と思って。宝塚北高等学校という公立で唯一演劇科ができた初めての学校なんです。自分が受験する時に「面白そう」だし、内申点だけだったんで、「楽~」と思って受けてみたら、演劇とか全くやったことないのに、受かってしまって。そこから3年間、授業に演劇が組み込まれている高校で演劇やって、舞台って面白いな~と思ったんです。大学も芸術学科で演劇専攻に進んで、結局、舞台をずっとやっている感じで。お笑いに戻って来たのは自分でもすごいなと、思っているところです(笑)実は高校卒業する時に大学受験かNSCか迷ったんですよ。でも学校の先生に、「女の子やから大学は行っておけ」と言われて。もともとは面白そうやからと思って、演劇を始めた感じです。

―大学卒業後は?

卒業後、東京とか行く気がなかったんですけど、専門学校や劇団も受けたら「キャラメルボックス」のできたばかりの養成所の一期生に受かって、お父さん、お母さんに「東京へ行っていい?」と聞いたら、「行っておいで」と。うちの親、メッチャメチャ楽観的なんです(笑) すべての人生において「反対」ということがなくて。東京に出て、養成所で出会った人たちと一緒にお芝居始めて、結局10年間お芝居やってました。アングラにも関わったし、ミュージカルとかも関わったし。いろんなことをさせていただきました。物事に好き嫌いがないというか、何でも楽しめるタイプなんで、どんな演劇でも楽しんでやってました。小劇場だったので、食べて行けるとかではなく、自分たちで衣装を作り、稽古場を取り、みたいな生活をしてたので、今がすごくありがたいんです。衣装が用意されてたりとか。小道具が用意されてたりとか。新喜劇はメチャクチャ恵まれてると思います。

―経歴が異色ですね。6個目を受けるきっかけは?

10年東京にいて、食べて行けへんし、もうそろそろ実家帰ろうかなと思っていた時に、父が体調を崩して、看病で大阪と行ったり来たりしてたんです。そしたら父が病室で「新喜劇」見てるんですよ。お母さんに聞いたら、「お父さん、メッチャ新喜劇好きやねん」っていうのを、その時、初めて知ったんです。私、30代前半で、関西に住んでて出身も兵庫県なのに、新喜劇を生で観たことがなかったんですよ。確かに子どもの時とかテレビでメッチャ見てたけど、生で見たことないな~、と思って。NGKに1人で当日券で観に行ったんです。そしたら、「うわ~何これ?」って。内場兄さんの週やったと思うんですけど、すごい感動してしまって。その帰りに金の卵6個目のオーディションの募集を見て、ちょうど関西に帰って来ようと思ってたし、受けてみようと。
(すごいタイミングですね)
オーディションの期間中は東京に住んでいて、オーディションのたびにこっちへ来てたんですよ。で、「受かったから、帰るわ」と10年間も住んでたのに、すーっと帰ってきました。タイミングとお父さんのおかげです。

―運命的ですね。オーディションの特技披露は、何をされたんですか?

特技が何もないので、私を知ってもらおうと考えて…私は食べるのが大好きで、お母さんが作ったいなり寿司がメッチャ好きやったんです。お母さんに朝、いなり寿司を作ってもらって、「これが好きです!」ってタッパーからいなり寿司出して、会場でただムシャムシャ食べるっていう…ふふふ(笑)
(そんな特技披露、初めて聞きました。東京ではコメディの舞台も?)
台本のかっちりしたお芝居が多くて。お笑い要素の多いものは出たことがなくて…お笑い苦手なんです。あははは(笑) でも、好きなんです。見るのはずっと好きだったので。今、中高生の時に追っかけてた人たちが劇場にいらっしゃるので、「あ~っ!」と思いつつ、何も言えないですけど。当時は千原兄弟さんがトップで、私はハリガネロックさんの漫才がメッチャ好きで。水玉れっぷう隊さんもバリバリの時だったので、今、アキさんが近くにいるのが信じられない…。夢みたいな環境ですね。
(受かった時は?)
「わ~うれしい!」というのと、関西に帰って何をしようかはっきり決めてなかったので、「やることができた」と思いました。お母さんに連絡したら、めっちゃ喜んでくれたし。大変な世界やけど新喜劇ってやっぱり、みんな知ってるじゃないですか。自分自身も小さい頃から見てた世界やし、「ほんまに良かったね」ってみんなが言ってくれて…。

―入ってみて驚いたことは?

稽古を前日にしかしないことに、「ひえぇ~っ」て思いました。演劇は1か月くらいやるのが普通だったので。あと、台本もらうのも何日か前で。初めての舞台の当日の朝、緊張して家でもどして…(笑) こんなことあるんや~と。
(ちなみに初舞台の座長は?)
祇園花月で辻本兄さんの週でした。しかも初舞台なのに、太一郎兄さんの奥さん役で、物語の中心的な役だったんです。
(いきなり?)
セリフ覚えも遅いのに。訳わからんうちに初日が終わって。その時、末成由美姉さんと前田真希姉さんと一緒で、皆さん優しくて「大丈夫、大丈夫」ってずっと言ってくださって。1週間の公演で、セリフが抜けたりもしましたが、それも皆さんが笑いに変えてくださって。対応力がすごいし、舞台に立ってしまったら、絶対何とかしはる力がほんまに凄い!と思って感動しました。旦那さん役の太一郎兄さんも、私が初舞台で演劇経験しかないのがわかっているので、時間があったらセリフ合わせしてくださったり。「ビックリしたやろ? 稽古こんだけしかないねんで」って、いろいろ教えてくださって…。
(NGKの初舞台は?)
それも辻本兄さんでした。同期の鮫島幸恵さん、木下鮎美さんと一緒やったんで、楽しかった記憶しかないです。大きな劇場やな~と思って。笑い声って、「こんなにドン!ってなるんや」すごいなと思いました。

―正統派のお芝居ですよね?

私、見た目とか年齢とかいじられることが多いので、ボケたりとか、笑いの方もちょっと頑張らないといけないと思っているんです。いじられた時にちゃんと返したりとか、なかなかできなくて。全部が中途半端なんで。
(お芝居の方から来られた先輩も多いですよね。浅香あき恵さんとか…)
皆さんから「あき恵姉さんを目指せ」って言われます。「ほんまにそうやな」と思って。あき恵姉さんも「友見ちゃんはお芝居をやっていれば、ボケとか笑いは全部芝居の流れやから、きっとできるから大丈夫」っていつも言ってくださるんですよね。「無理じゃないボケとか、その役だから出る言葉とかもあるから、芝居だけをちゃんとやってたら大丈夫やから」って言って下さって。頑張ろうと思ってます。

―お芝居の上で失敗したこととかは?

最初の頃は、普通の芝居しかやったことがなかったので、「笑い待ち」を知らなくて。芝居はセリフのテンポがあるので、自分のセリフの番だとすぐに喋ったら、「笑い待ちしろ」って言われて。あ、そんなんあるんやと思って。セリフが飛んだ(忘れた)とかもいっぱいありますし。いろいろ失敗してますよ、私。初舞台の時にセリフがパーンって飛んで、でも緊張と興奮で息だけ「ハァハァ」してて。その時、竜じいさんが一緒の舞台で横にいたので、回しをやってた高井兄さんから「次のセリフが出て来なくて息だけ聞こえるから、竜じいかと思ったら、お前か!」って(笑) この前、信濃岳夫兄さんとご飯を食べに行った時には「噛むとかじゃないねん。セリフ通りじゃないことに慣れて行かないと。そこが苦手な人は違ったら止まっちゃうことが多い。会話やから、楽な状態で喋った方がええで」って言っていただきました。

―10月から7年目になりましたね。

私、「向いてない」ってずっと思ってて…。辞めようと思ったことはあんまりないですけど、あ~向いてないなっていうのは、ことあるごとに思ってます(笑) メンタル弱いんです。先輩はみんな強いなあ~って。私はお笑いとか下手くそだし、ネタ考える力もないし…。向いてないな~って。
(落ち込む方?)
落ち込む方なんです! 根暗です。引きずってしまうし、考え込んでしまうし。でも何かあるたびに、先輩に救われてます。何かあるタイミングでご飯誘ってもらって、私は何も言ってないのに、その時の話で、頑張ろうって思えたりとか。波が下がって来た時に、いつも先輩にポン!とあげてもらってる感じです。
(お世話になっている座長は?)
すち兄さんには、けっこうターニングポイントになるような役をいただいてます。祇園花月で、ブスやけどマドンナみたいな役をさせていただいたことがあって。ずっと好きな人を思い続ける役なんですが、その時に初めて、新喜劇でちゃんとお芝居をしてるって思えたんですよ。
(ほおお~)
少し慣れて来たのもあるし、気持ちがちゃんと乗っかっているというか。舞台上の役で生きれた感じがすごいあって、「新喜劇もお芝居なんや」って。その時に、すち兄さんが「あき恵姉さん目指さなあかんから、これからもお芝居ちゃんとしていきや」って。その後もすち兄さんと由美姉さんと3人で韓流アイドルの追っかけをするオバちゃん役をもらって「こんな役は楽しんでやりや」と言ってくださったり。オープニングでもツッコミをやらせてくださるんです。いじられて、返す役。それも「ちゃんとできるようにしときや」って。すち兄さんは道しるべというか、目指すところ、やらなあかんことを、与えてくださるので。ほんまにお世話になってます。
(すごいですね~すっちー座長。よく見てらっしゃいますよね~)
あと藍姉さんもよく見てくださってて、適材適所で使ってくださるというか。そこで勉強せなあかんし、ちゃんと結果も出さなあかんなって思う役をいつも与えてくださるので。すごいありがたいです。入ったばっかりで右も左もわからない時には辻本兄さんにいろいろ教えていただいたし。川畑兄さんは芝居のレッスンをずっとやってくださったし。

―これからやりたい役は?

私にしかできない役をやりたいですし、お母さん役とかもできるようになりたいし、お芝居で締めるところは締める、っていう役をやりたいです。ネタをやる方に比べて地味かもしれないですけど、新喜劇のお芝居を支えれる役者になりたいです。
(夏休みに浅香さんのおばあちゃんと藍ちゃんの孫娘の話がありました。吉岡さんはお嫁さん役でしたね)
烏川兄さんの奥さん役で。あれは本当にありがたくて。あき恵姉さんのおばあちゃんのお芝居を間近に見られたのもメッチャ勉強になったし、その時に藍姉さんが、「この年代のこの役は吉岡ちゃんしかいないから!」って言ってくださって。別にセリフがいっぱいあるわけでもないけど、ずっと舞台上にいて、家族でいるというのが、すごいナチュラルにできて。メッチャ楽しかったんですよ。舞台上で生きてる感じがしたんで。ああいう役をもっとできるように…。
(お母さん役もされてますよね)
若手のイベントだとそうですね。ほんとは実際のお母さんになりたいんですけど、ね。あははは。そこは(自分で)頑張らんと…(笑)

―吉岡さんにとって新喜劇の魅力とは?

1時間半~2時間のお芝居で泣かせる、笑わせるはいっぱいありますけど、そもそも45分で話がちゃんと完結して、笑いもあんなにあって、感動もできてっていうのがスゴイです。稽古時間あれだけで。個々の力もあるし、新喜劇の法則というのは素晴らしいものだなと思って。それをしかも皆さん、簡単そうにやってはるじゃないですか。すごい文化です。全国の皆さんに知ってもらいたい文化です。

―最近、ハマっていることや趣味は?

本を読むのは好きです。去年まで兵庫県の三田の実家から通ってた時は電車でずっと本を読んでました。後は…友だちと文通してます。関西に住んでて普通に会えるんですけど、文章を書くのが好きで、将来作家さんを目指している子で「文通してみる?」ってなって。やり始めたら、もう5年間続いていて。手紙っていいですね。うふふふふ(笑)
(どの辺が?)
なんかすべて、面白いです。自分が書く時は、その友だちに合う封筒やレターセットを選ぶ、書く時間、手紙を送る時間、届くまでのワクワクする時間があって、忘れた頃に返事が届く、ポスト開ける、うれしい、封筒を開ける、読む…全部が素敵な時間なので。皆さんに、お勧めします。お手紙楽しいです(笑) 私アナログなので、手帳にもいいなあと思った言葉とか手書きでメモったりしますね。入った時に32歳だったので、あき恵姉さんにその話をしたら、「年齢は取るものじゃなくて、重ねるものよ」とおっしゃって。「わっ、素敵!」と思って、すぐにメモしました。

2018年11月6日談