第65回 辰巳智之

アホなんで、いろいろ言われることが多いです。


―NSC26期ですが、お笑いを目指されていたんですか?

新喜劇を目指してたんですけど、NSCでは25期で新喜劇コースがなくなったんです。とりあえず、NSCに入って、ピンでずっとやってました。
(新喜劇に憧れが?)
ちっちゃい頃に見てたんですが、それで出たいなと思って。藤井隆さんとか大山英雄さんとか、内場さん、辻本さん、石田さんのニューリーダー時代で、見てて楽しいな~、元気出るな~と思って。ギャグとかは頭の中で全然理解していなかったんですけど…。藤井隆さんがずっと男役で普通に出てたというのが、記憶に残ってます。まだ女装とかする前で。題名は覚えてないんですけど、藤井さんが井上竜夫師匠のお孫さん役で出てて、そのシーンだけが頭の中に残ってます。「あれ? なんでそこだけ覚えてるんやろ?」と思いながら。

―ピン芸人ではどんな持ちネタを?

「実況昔ばなし」というのを考えてやったりしてました。プロレスとかで古館さんの実況がメッチャ好きやったんです。桃太郎だったら、「あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おばあさんは川へ洗濯に、おじいさんは山へ芝刈りに。おじいさんの芝刈りの目的は一体なんでありましょうか? はたまたアルツハイマーの前触れでしょうか?」みたいな感じで…実況っぽく。
(じゃあ、結構早口で?)
でも、滑舌悪かったんで、あんまりうまくなかったんですが。

―NSC卒業後は?

ピン芸人は考えてなくて、新喜劇に入りたいと思ってました。卒業後は、当時NGKの下にあった吉本笑店街というお笑いテーマパークで、1年半くらいアルバイトでお客さんの相手をしてました。ネタを披露するとかじゃなくて、笑いのある街並みがモチーフなんで、街の警官の衣装を着て、目の前のお客さんを笑わせたり楽しませたりするんです。バルーンアートを作ったり、いい思い出が残るように。ちょうどその時、同期だったバイク川崎バイクも一緒でした。

―新喜劇に入れるかどうか不安はなかったですか?

不安は…ないというか…入れるまで何度かオーディションを受けて、無理やったら諦めようとは思ってました。
(ご家族は?)
新喜劇に入る前は「いつ辞めるの?」って聞いてたんですけど、入った瞬間、「いつ出るの?」に変わりました。わかりやすい家族です。
(オーディションの時の一芸披露は、昔ばなし実況を?)
その時は、見た目にわかりやすい方がいいと思いまして、プロ野球選手のネタをさせていただいて。あとは自己紹介ギャグをさせていただきました。
(「子丑寅卯、(パンパン手を叩く)辰巳です」)
はい。あれは実はNSCの頃からずっとやってます。だいぶ年季入ってます。
(オーディションの手ごたえは?)
全然わからなかったです。今は作家になった大脇里村ゼミナールの里村さんに、新喜劇入る前からいろいろアドバイスしてもらってたんで、そのおかげがあったと思います。
(どんなアドバイスを?)
実況昔ばなしとかいうネタをお前がやっても、アホみたいな見た目してんねんから、お客さんが納得せえへん。もっと見た目でわかりやすいやつやったらええん違う? と言われて、ものまねをしたり。

―憧れの新喜劇に入られた印象は?

楽屋とか舞台では厳しいけど、やっぱり楽しいですね。一緒におってみんな楽しいです。新人の仕事も苦にはならなかったです。もともと野球部やったので、やるのは普通かな、と。めんどくさいとかはなかったです。
(スポーツマンなんですね)
高校だけ硬式野球部でした。中学の時は剣道やってまして、一応、初段持ってます。野球もやりたかったんですけど、走るのがメッチャ嫌いやったんです。でも、高校以外、野球するとこってないなあと思って野球部に入りました。最終的にはベンチ入りまででしたけど。

―初舞台は覚えてますか?

入って半年経たないくらい、3~4か月くらいで立たせていただきました。小籔さんの週で、その時はセリフがなくて、今別府直之さん達と機動隊の役でした。
(セリフのある役は?)
辻本座長週だと思います。伊賀健二さんの秘書役を初めてやった時に「○○建設ですけど、こちらのオーナーの方は?」と言って、自己紹介ギャグさせていただいて、辻本さんにいじっていただいて。それが結構何回が続いたんですけど。覚えているのは、オープニングはやったことがない、ということです。皆さん、最初に通られる道なんですけど、やったことがないです。祇園で1週だけ、3年前に1回あっただけで。
(そのほかどんな役を?)
営業に行った時に、ヤクザの用心棒の役で出た時は、島木師匠とまったく同じ衣装の色違いやったとか。奈良健康ランドやったら、女装したりしてます。
(女装も!? ちなみにやる気のないダンサーはいつから?)
去年の2月、3月くらいからやったと思います。初めて「もうちょっとやる気無くして」というダメ出しを演出家さんからもらいました。
(最初に役を振られた時は?)
台本で見て「セリフない!」って思いました(笑)。
(いままでの一番の長ゼリフは?)
営業で寛平師匠のツアーに連れて行ってもらったことがあるんですけど、その時に何故か二枚目をさせていただいて。その時が一番長ゼリフでした。寛平師匠の娘役の婚約者で。
(ご自身はどう思われました?)
これ、ミスキャストやないかと。まず最初に、(僕)二枚目ちゃいますよ、って。セリフが多いのはうれしかったですけど。メチャメチャ緊張しました。
(緊張するタイプですか?)
メッチャ緊張しいです。メッチャ汗かきます。

―舞台での失敗は?

あります。川畑さんの舞台の時に、忍者の里っていう設定で、吹き矢を吹く時に、効果音が出るんですけど、僕が、「フッ!」ってほんまに言うてしまったという。それもテレビ収録の時に。「何で本番の時だけ言うねん! 今までちゃんとやってたのに。音が二重になったがな」って怒られました。

―お世話になった人はいますか?

一の介師匠にスナックで雇っていただいているので、メッチャよくしていただいてます。
(舞台や演技の上では?)
いろいろありすぎて…アホなんでいろいろ言われることが多いんです。いろんなエピソードをいろんな人がしゃべってくれる、っていう…。僕がしゃべるより、他人がしゃべってくれた方がメッチャ面白くなるんで…。清水啓之、音羽一憲、今は辞められましたけど小米良啓太さんにもよく言っていただいてました。
(例えば?)
小米良さんに舞台袖で、「ちゃんと周りみてやらなあかんぞ」って言われて、「すみませんでした!」って頭下げて謝ってたんですけど、目線をたどっていったら、相撲の結びの一番を見てたっていうのをメッチャ突っ込まれました。
(ほんとに見てたんですか?)
意識がちょっとだけ、いってたんですけど…自分では気づかないけど、天然らしいです。
(ほかには?)
そうですね。新喜劇に入る前ですけど、高校の時、自転車で帰ってたら、コウモリが顔に当たったり。
(えーっ!? 普通、向こうも避けますよね)
田舎というか、東大阪なんですけど、周りが畑なんで、コウモリがいっぱい飛んでるんです。それが顔に当たって…普通やと思ってたら、普通じゃないことが多くて。僕より他の人に聞いてもらった方が良いと思います。
(語るより語られるタイプなんですね)

―辰巳さんにとって新喜劇とは?

オーディションの応募書類に「大阪にある芸術作品やと思ってます」と書いたんです。計算されつくしている笑いに、台本にないアドリブがどんどん入っていくのがすごいところやと思います。個人的には、一番落ち着く楽しいところです。楽屋が一番です。家帰ったら1人やし…と思ったら、人としゃべれるのが楽しいです。人見知りメッチャ激しいんで…。
(スポーツマンなのに)
そうなんですよ。野球やっててもチームメイトは仲良くなるんですけど。ほかの人とはあんまりしゃべってなかったり。

―10年目になりますが、これからの抱負は?

毎週新喜劇に出たいというのはずっとあります。目指すところは島木師匠かなと思ってます。島木師匠のことは舞台袖でずっと見てました。僕自身、ギャグは何個か考えたんですけど、やってみた時にあまりウケなくて。ギャグのセンスはあんまりないのかも知れません。こんな見た目やのに、実は違うというのを活かせれば…。

―ご自身でハマっていらっしゃることや特技は?

掃除のバイトを10年以上やってるんで、人の家をきれいに出来るというか。洗剤の成分みて、どんな感じかわかるというか。ダスキンでずっとバイトしてるんで。だいたい汚れのことはわかります。
(壁の汚れとかも?)
壁紙の中の糊がはがれないような成分のものを使わないといけないとか、あるんです。
(プロフィールを見るとアニメ好きとか)
昔のアニメというか…。僕が小学校、中学校、高校とかの時は好きやったですね。その辺の知識はけっこうあるんですけど。ロボットものが好きやったので、ガンダム好きですし。「マジンガーZ」とか「ゲッターロボ」もわかります。最近のアニメは深夜にやりすぎているので、ちょこちょこネットで見てるくらいです。最近はないですけど、アニソンを歌いに行ったりしてました。アニソンって売るために作っている訳じゃなくて、アニメの内容にあった曲じゃないですか。そこがいいです。
(十八番は?)
アニソンも歌っているんですけど、Mr.Childrenを歌ってます。しゃべってる声と歌ってる声が全然違うって言われます。メッチャ高いんです。高い声でメッチャ歌が上手かったらいいんですけど…。

2017年6月13日談

プロフィール
1982年7月6日 大阪府生まれ。
2003年 NSC大阪校 26期生。2006年金の卵オーディション2個目。