第1回 すっちー

ある日、自分の中にある大阪のお笑いのDNAに気づいた。


―「座長になりたい!」と言い続けて6年8か月。ついに座長就任。

入った時から「座長になりたい、座長になるために入った」ってアホみたいに言うてましたね。今から考えたら、ようあんなん言うたな~と(笑)。僕はコンビの時から新喜劇っぽい仕事が多かった(「新喜劇フー!!」「新喜劇ボンバー!!」)ので、お芝居の中にも笑いの取り方があると思えました。コンビをやめた時、ピンの選択もありましたが、新喜劇という選択肢は僕の中ですごく大きかったんです。入る時には、新喜劇には染まらんとこう、新喜劇を変えたんねん!くらいに思っていました。いざ入ったら、カルチャーショックというか、知らないことばっかりで、奥深いなあと。

―新喜劇の奥深さとは?

新喜劇での笑いの取り方の難しさがわかったんですね。漫才の時にやっていたことが通用しないし、邪魔になる。もともと漫才から新喜劇に来た小籔さんから、なるほどな、と思えることを教えてもらいました。細かいボケを挟むのではなく、お芝居に乗っかって、緊張感持たせて一気にボケたほうが、お芝居としては笑いは取れる、と。漫才師は出てきて何もボケてないのが怖いから細かくボケたがるけど、それはせん方がええで。両方試してみたら?と。結果、台本どおりに戻して一番ウケたり。新喜劇の歴史の重みというか、だから面白いんや、と。攻めなあかんというのは、常に思っていますが、漫才を11年くらいやっていた時と、考え方が一変しました。

―実はもともとお笑い志望ではなかった?

お笑いの仕事をしようとか全然思ってなかったし、そんな目立ちたがりでもなかったんです。ただ、大阪に住んでいると、ずっと「新喜劇」をやってるし、「4時ですよーだ」も夕方にやっていたし。日常にお笑いがあふれてる。たぶんですけど、男の子が目指す職業の上位には、「お笑い」があったと思うんです。僕はバイクが好きだったので、専門学校を出た後、車関係の整備関係の仕事をしてたんですけど、「あれ?違うなあ…」と。で、「何がしたいんやろ」と真剣にちゃんと職業を考えた時に、そこに、お笑いがあった、ということですね。お笑いを始める時には、新喜劇は全く考えなかった。好きなことが出来へんやろと(笑)。どんな役になるかわからないし、言うことも限られる。お笑いで最初に門を叩くところやないな、と。若手にもそう思っている子が多い。そこは変えていかなあかんと思います。「新喜劇」はやってみたら意外にチャレンジできるし、発信も出来る。「歌ネタ」とか「ドリル」とかで東京に呼んでもらえたり、いろんな可能性がある。この先、若手が、最初から「新喜劇をやりたい」とお笑いの一発目に門を叩くところになればと思います。

―「ドリル」が超子どもウケしてます。

子どもさんが、よう真似してるって聞きます。「ドリル」はわざわざ作ったネタではないんですよ。気ぃついたらあの形になって、気ぃついたら皆さんに面白いと言われてた。実際、自分らも楽しんでやってたので。どう作りましたか? ってよく聞かれるんですけど、「作った」感覚はないですね。最初は浮気相手と疑われる人物を、内場さんと僕でボコボコにするだけ。そのうち、エスカレートして服を脱がして、僕がマキザッパ(叩き棒)で乳首をぎゅっとやったら、「乳首ドリルすな!」それだけでふわっと終わってたのが、ドリルが回を追うごとにだんだん長くなって。異常に長いでしょ(笑)。フルでやったら3~4分。そんな長い尺のネタを自分のリーダー週にいろいろ試せたのが良かったですね。チャンスをもらえて試せた。その中で生まれたのが「ドリル」なんです。

―座長として。これからの新喜劇

伝統的なことは守っていかなあかんし、技とか技術は覚えないといけない。ただヘンにそこにこだわりすぎると、ブレーキになってしまって、新しいことは生まれないと思うんです。若手と新しいことしよう、とならない。定番だけやって、ある程度平均点を狙った芝居になってしまう。新喜劇は定番の笑いと言われながら、昔からちょっとずつ変わっていっていると思うんですよね。内場さん、辻本さん、石田靖さん、吉田ヒロさんの時代は、攻めていた。小籔さん、川畑さんの時代にもレイザーラモンがいた。いつもスパイスになる人がいる。守りながらも攻めなあかんなあ、と。だから、染まらんとこうという気持ちはたぶん今もあります。

―子どもも新喜劇が大好き

2007年、結婚して子どもが出来て、その2か月後に解散して新喜劇に入りました。娘が6歳、もうすぐ7歳ですが、新喜劇のことが好きですね。「お仕事、頑張って」じゃなくて、「いっぱいふざけておいでよ~」って言ってくれる。すごく応援してくれます。だから、一生懸命ふざけてやろうと思って舞台に上がってます。「お前んとこの親父、おもんないな~」と言われないように(笑)。「ドリル」も大好き。子どもの目って素直だと思うんです。だから子どもの感想は大事にしてます。ただ、奥さんは「ドリル」が嫌い…じゃなくて、大っ嫌いです(強調)。「あれ、何でするの?」と。ただただ不快のようです。子どもと一緒に舞台を見に来た時、喜んでいる子どもの横で、あまりに笑いがなくて。ずっとしかめっ面してました。プライベートでは厳しい。それだけ冷静に見てくれてます。実際、「ドリル」をやりながら客席を見ると、笑ってないお客さんもいるんですよ。

―若手&先輩 気になる新喜劇メンバー

若手は女の子に頑張って欲しいですね。新喜劇は若手の女の子が弾けるシーンが少ないので。もちろん、すごい先輩がいっぱいいらっしゃるんですが、男性は熾烈な争いを繰り広げている。女の子もアットホームな雰囲気も満足せずに、「次は私が頑張る」というギラギラしたものを持って欲しいですね。基本、競争社会ですから。 先輩方はすごいギャグを持っている人が多いので、あのギャグをマイナーチェンジして若手と組んで新しいものを引き出せないか、と思います。あと、個人では青野(敏行)さん、面白いです。新喜劇に必要な年齢層の方で、お芝居を締めてくれる人。男前で舞台栄えするんですが、アホなところもあるので、真逆の面を見たいな~と思います。

―ハマっているもの

トランペットをやりたいなあ、と思っています。以前、一瞬やりたいなと思って楽器の値段を見たら、こんな高いんか!と。それが最近、ネットで入門用が1万円であったんです。まだ手に入れてないですが。新喜劇の若手で作る「ほんわかパッパー隊」というのがあって、それを見てると楽しそうなので、やってみたいなと。あと、英語もやりたいですね。小籔さんと前から「英語で新喜劇やりたい」と言ってるんです。

プロフィール
1972年1月26日 大阪府生まれ。2007年10月吉本新喜劇入団。