物心ついた時から新喜劇が好きだったんで、ずっと新喜劇をやりたいと思ってました。中学生くらいの時に、よく舞台を見に行ってて。生で見てるうちに自分も出てみたいな、と思うようになって。
(中学生で1人で新喜劇を観に?)
1人で行ったり、友だちと行ったり。
(友だちにも新喜劇をやりたいと言ってたんですか?)
言ってなかったですね。「なれるわけないやろ!」とか言われたら恥ずかしいんで、誰にも言ってなかったです。でもその頃からずっと心の中で(新喜劇に入りたいと)思ってました。
(進路を決められたのは?)
高校の時に、どこに就職するとか、次どこへ行くとかいう話になると、バレたりするので、そういう時は「吉本のマネージャーになりたい」とウソついてました。
(あははは~新喜劇でどんなことをやりたいと思ってました?)
僕、ジャッキー・チェンがすごい好きで。ジャッキー・チェンみたいなことを新喜劇でやってみたいなと思ってました。
高3の在学中に受けて、卒業式の時は、もう新喜劇に入ることが決まってて、友だちに「吉本のマネージャーになれるように頑張りや」って言われて。心の中では「もう、新喜劇入ってるねんけどな」と(笑)。
(まだ隠してたんですね)
言うてなかったです(笑)
(オーディションの特技披露は何を?)
僕、昭和の「仮面ライダー」も好きなんですよ。藤岡弘、さんが好きで。藤岡さんが「仮面ライダー」で言うセリフの真似を全力でやる、っていうのをやりました。
(どんなシーンですか?)
「間違えてショッカーの運転するタクシーに乗り込んだ本郷猛」
(それ、ショートコントですよね?)
実際にあったシーンを真似しました。そういうシーンが1回あったんですよ。
(へえ~どんなセリフですか?)
(低い声で)「君、道が違ってやしないか? おい、聞こえないのか? おいっ!!」
(あははは~結構ウケました?)
2次審査の時はあんまりウケてなかったです。3次審査の時に、「2次でやってた仮面ライダー、もう1回見せてもらっていいですか」って言われて。
(え!? 3次審査はお芝居ですよね)
お芝居が終わってから、審査員の方からリクエストがあって、その時にウケたんですよ。それやったら、2次の時に笑って欲しかったって正直思いましたけど。ふふふ(笑)。実は、3次審査の連絡がメチャクチャ遅かったんです。僕は完全に落ちたと思ってたんです。なので、僕の中では落ちたのに、這い上がって来たという感覚なんです。1回落ちた、その悲しさ、悔しさがわかってるから、「絶対落ちんとこ」と思って、3次はメチャクチャ練習しました。
(合格された時は?)
メチャクチャうれしかったですね。もちろん不安もありましたけど。「ホンマに入ったんや。上手いこといけるかな?」と。
(ご両親も応援を?)
反対はなかったですね。親も新喜劇見てたっていうのもあると思うんですけど、「好きなことやったらええんちゃう?」みたいな。
見てるのとやるのは全然違うなと思いました。好きで見てる時は、単純に楽しもうと思って見てたんですけど。入ってから、セリフをしゃべりながら移動するとか、ほかの意識が働いて、難しかったですね。先輩方は「難しく考えすぎなんや」と言われるんですけど、僕からしたら、難しいなと思いました。見てる分には簡単そうに見えるんです。実際やってみると難しいんですよ。声が高くないので、「オープニングでお客さんを盛り上げるタイプではないな~」と、よく言われました。
(なるほど)
まだチンピラとか警官とかの役の方が来やすいって、いろんな方に言われました。芸歴4年なんですけど、金の卵ライブ以外では、1回もオープニングをやったことはないですね。
初舞台は12月やったんですけど、NGKですっちー座長の「すち子の口を閉ざす男」という映画撮影現場の話で、僕はセリフが一言の音声スタッフの役でした。
(どんな一言ですか?)
幕が開いた瞬間に「各所OKですか?」「OKです!」という一言でした。
(憧れの舞台、どんなお気持ちでした?)
セリフが一言やったんで、舞台ではあんまり緊張とかなかったんですけど、稽古とか、楽屋では座員さんに緊張しましたね。小さい頃からテレビで見てる人ばっかりだったんで。僕、「OKです!」だけなのに、稽古の時に、ぽんぽん、ぽんぽんといつの間にか始まってて、「各所OKですか?」の後に、すぐに「OKです!」って言えなくて。隣に同期入団のけんたくんさんがいて、肩で僕をトントンと、つついてくれて、あわてて「OKです!」と言ったのを覚えてます。
(舞台で緊張したことは?)
川畑座長の舞台で、一度、清水けんじさんの代役をさせてもらったことがあって。その時は今までよりセリフが多くて、緊張で、初日の1回目、完全にセリフ飛んで・・・。
(セリフが飛んだ?)
はい。「どうされましたか?」っていうだけのセリフやったんですけど、それが出て来なくて。舞台で同じことを繰り返し言うてて。その場にいた烏川さんが、「あれ? 何か忘れ物しはったんですか?」と言ってくださって。
(あはははは~)
「あ、そうなんです。ちょっと取ってきます」って、袖にハケて、台本見て、
「忘れ物取りに行ってました。どうされましたか?」ってつないだら、「それを忘れたんですか!」って。お客さんは温かくて、笑ってくださいましたけど。ほんま、アカンな~と思いましたね。この時は緊張で、いろいろ忘れてて、1回目にマスクしたまま舞台に出た場面もありました。その写真が今も新喜劇のHPに残ってます。
間寛平さんがGM(ゼネラルマネージャー)になってから出来た、セカンドシアター新喜劇のこけら落とし公演で、信濃さんと諸見里さんが座長の時に呼んでもらって、それが一番印象に残ってます。その時、2人組のヤクザ役だったんですが、もう1人のヤクザ役が日替わりゲストで、それが歴代の座長の方々、内場さん、辻本さん、川畑さん、すっちーさん、酒井藍さんやったんですよ。
(おお~すごいメンバーですね!)
ほぼほぼ、そういう方々と絡むことがなかったんで、メチャメチャ緊張しましたけど、メチャクチャありがたかったです。僕の中では、5回違う新喜劇をやった感覚でした。
(どなたとのお芝居が一番印象的でした?)
川畑さんの時だけ、僕が兄貴分で、ツッコミもあったんですよ。他の方々の時は、ボケだけやったんですけど。僕が兄貴でツッコミもあったんで、より緊張しましたね。ちゃんとせなアカン、みたいな。
(この後、寛平GMの推し座員に)
はい、寛平さんが(GM会見で)名前を出してくださって。こけら落とし公演の時にアンケートがあって、日替わりゲストで座長さんが出てたこともあって、ヤクザのくだりが盛り上がりやすかったんですよ。座長さんがおいしくしてくださっただけなんですけど、ありがたいことに「住吉君面白かった」と、いろんな方が名前を書いてくださって。そのアンケートを寛平さんや奥さまが見られて、「この子、絶対人気出る」みたいな感じで思ってくださったのがきっかけですね。
よくハケる前に目の前で扉が閉まってぶつかるシーンってあるじゃないですか? みんなぶつかるフリをするだけで、そんなに体重をかけてないんですけど、そんなこともあんまりわかってなくて、ほんまに壁ぶち抜いたり・・・。
(ぶち抜いた!?)
それを戻すのに、時間かかってすごい迷惑かけたり・・・。
(あは、あははは~力加減がわかっていない・・・)
あと、内場さんの座長週で警官役をやったんです。郵便局強盗の指名手配書を広げるシーンがあって、その時に力が入って、「郵便局強盗です!」って広げた時に、ビリビリビリッって手配書が破れた時があります。
(ははは~けっこう力技多いですね~)
ははは。そうですね。それもお客さんが温かくて。大爆笑やったんです。
(ご自身で手ごたえを感じた舞台は?)
もともとブルース・リーも好きで、練習とかもしてたんで、ネタに入れてみようと。営業の舞台でヌンチャクをやらせてもらって、セカンドシアターでも初めて披露したんです。ブルース・リーを見ながらやってたんで、全く同じ動きしか出来ないんですけど。ヌンチャクが一番手ごたえがありました。あと、祇園花月の酒井藍さんの回で、松浦さんのギターと2人組で、歌ネタをすることがあったんですよ。それが、けっこう反響があって。普段あんまりDMとか来ないんですけど、その週はめちゃくちゃDM来ました。「今日、初めて住吉さんのこと知りましたが、メチャクチャ笑いました」とか。こんな反響あるんやと。
入団当初から、ジャッキー・チェンみたいに、舞台のセットを使って暴れることをやりたいと思ってたんですよ。新喜劇に入ってヤクザの脅しネタを考えたり、警官のネタを考えたりしてるうちに、そういうことを忘れてたんです。なんですけど、寛平さんがGMになってから、久しぶりに寛平さんがNGKで座長をされた時に、寛平さんが杖を振り回して舞台で暴れて、お客さんが沸くのを生で実感した時に、「あ! そういえば入団当初、ジャッキー・チェンみたいに舞台で暴れたいと思ってた!」とすごい思い出して、今、それが頭にありますね。暴れて登場した時に、「住吉出た!」みたいになれたら、うれしいなと思いますね。
(今、あまりそういうキャラクターないですよね)
そうですね。もちろん、寛平さんやから許されるところあると思うんですけど。そういうところまで持って行けるように頑張らな、と思いますね。
(じゃあ当然、憧れの先輩は?)
寛平さんです。一番、自分が思い描いてた像に近いのが寛平さん。こんなこと言うのもおこがましいですけど。今、セカンドシアターで若手がリーダーする企画があるんですけど、そこで、1ボケで暴れる役をやりたいなというのはあります。
(いつか座長になりたいという夢はありますか?)
これも本当におこがましいんですけど、座長になりたいです。僕みたいなものがいうのもあれなんですけど。
(寛平さんみたいな?)
あの・・・僕ちょっとアホなんで、言い方が難しいんですけど。内場さんや川畑さんみたいな真似は出来ない。目指してはいたんですけど、無理やなとなった時に、一番、寛平さんが近いかな~と思ったんです。いや、やっぱりこれ、寛平さんに失礼な言い方かもしれない。
(でも全然、方向性が違いますからね)
自分が向いてるというか、目指すのはそこなのかな、と。
(大きな夢をぜひ、叶えてください)
新たに何かにハマるってことはあんまりなくて。お酒飲みながらジャッキー・チェンの映画を見たりとか。
(ジャッキー・チェン一筋ですね)
ずっと好きですね。さっき言うてなかったんですけど、ジャッキー・チェンみたいな映画俳優になりたいというのも多少あったんですけど。
(あったんだ~)
現実的に考えて、なれないじゃないですか。なので早目に諦めたんですけど、もしも、新喜劇でジャッキー・チェンみたいなことが出来たら、自分の中で2つ夢が叶ってるみたいな。新喜劇は自分の夢を叶える場所じゃないですけど。
(ジャッキー・チェンと藤岡弘、ならどちらが好きですか?)
・・・・・(悩んでる)。うわ~難しい・・・ジャッキー・チェンの方が憧れはあります。
(住吉さんから見た、ジャッキー・チェンと藤岡弘、の魅力とは?)
ジャッキー・チェンはアクションがとにかくカッコ良くて、ノースタントで全部自分でやってて。何回も骨折とかしてても、ビビらずにずっと続けてるのがものすごいなと思いますね。しかも、アクションを簡単そうに見せているのもすごいと思いますね。あと、それまでのカンフー映画って、ずっとシリアスな状況で、最後にブルース・リーみたいに1人強い人が現れて倒すっていう感じやったんですよ。ジャッキーで初めてコミカルなのが出来たっていうのと、あと、最初負けて、訓練して強くなるっていうのが、ジャッキー映画。それが単純に映画として好きですね。
(ジャッキーのこと語りますね~)
藤岡弘、さんは単純に渋くて好きです。あははは(笑)こんなカッコいい人おらんやろ、みたいな。なりたいものが何個あんねんって話なんですけど、正直、ちょっとだけ、藤岡弘、さんみたいな仮面ライダーになりたいっていう時もあったんです(笑)。
(ジャッキー・チェンはいつ頃からファンでした?)
小さい頃から好きですね。子どもでもジャッキーの映画ってわかりやすいんで。何も考えずに見れたんで。僕、理解力がちょっと弱くて、映画とか、「あれ? これどういう意味やったんやろ?」で終わることがけっこう多いんです。ジャッキーの映画は頭で考える必要がないというか。単純で見てて面白いんで、いくらでも見れるんです。
(それって、新喜劇と共通してますよね)
あ、そうです! 香港映画、新喜劇と似てるところがいっぱいあるなと思います。サモ・ハン・キンポーの映画とか。
(ぜひ、香港映画の面白さを新喜劇に反映してください)
2022年10月25日談
1999年10月17日兵庫県西宮市出身。
2018年金の卵10個目。