MBS(毎日放送)

第84回 祐代朗功
(すけだい・あきのり)

いろんな方から「Mr.オクレさんを目指せ」と言われます。

―真面目そうに見えますが、お笑いに興味をお持ちでしたか?

他の方に比べれば、そこまでではなかったかもしれません。好きだったのは…個人的には夢路いとし・喜味こいし師匠の漫才で…。なんか、心安らぐ感じがしまして。にぎやかとは違って、落ち着く感じで。拝見したのは小学校の頃ですけど、改めて面白いなと思ったのは20歳くらいの時ですかね。YouTubeとかで久しぶりに見た時に、すごいな、と思いました。
(当時、お笑いの世界へ行こうという気は?)
あんまりなかったですね。
(なぜ、お笑いに?)
大学を卒業する時、就職活動とかしたんですけど、ダメでして。何か知らんけど、半分、投げやりみたいな感じかもしれないですけど…最終的にお笑いの仕事とか、やってみようかな、と。
(就職では何を目指されていたんですか?)
いろいろですけど、公務員とか…。最初は、学者とか、そっちの方面を考えていたんです。社会学を専攻していたので。社会学は分野が広く、僕は基本的に哲学とか思想方面で文学部に近いところを勉強してました。僕の中では、哲学はずっと昔からあって、一番新しい20世紀の実存主義の後に構造主義みたいなのがあって、その構造主義をやっているのが、社会学かなというイメージだったんです。でも学者とかは、東大とか京大のなかの優秀な人たちが行く世界やから、無理そうやなとか、いろいろ思ってやめました。
(メチャメチャ真面目じゃないですか~。それが、またどうして?)
就職活動で面接が全く無理だったというのがあったんで、この世界に入ったら、無理くりでも人前で話したりするから、最悪、人と話しをする練習にもなるかな、と。
(人とお話しするのは苦手?)
ものすごく苦手で…。楽屋とかでも「話した方がいいで」と言われます。

―NSC37期ですが、入られてどうでした?

あんまり変わらなかったかもしれない…。
(はははは…。いと・こいさんの漫才を目指そうとかは?)
目指したかったんですが、そもそも僕とコンビ組んでくれる方がいなかったので、漫才はやらずに、ひとりで、漫談というほどでもないですけど、しゃべってたという感じです。
(ひとりだと、ネタとかも大変じゃないですか?)
そうですね。NSCにいた時は、実力とかも何もないから、質より量かなと思って、毎回違うネタ作って、やってましたね。他の方は同じネタを何回かやって、ちょっとずつ精度を上げて行くっていう感じですが、僕は使い捨てみたいな感じで。NSCの時は、ネタでウケていたというよりもキャラクターでウケたっていうか。ネタ見せの時に、先生からダメ出しとかじゃなく、「君はいじられキャラやから。いじられた時の返しを考えた方がいいよ」と、ネタ以外でのアドバイスばっかりもらったことがあります。
(ご自身では、どう思われてましたか?)
周りがそう思うんやったら、そうかなあ、と(苦笑)

―新喜劇に入ろうと思われたきっかけは?

ピンでやって行くのは無理だなと思って。でも、コンビ組んでくれる人もいないから、どうしようかな、と思ってたら、NSC卒業する間際ぐらいに、金の卵8個目のオーディションがあったので、どうせやったら1回受けてみようかという感覚でした。受けてアカンかったらこの世界、辞めてたかもしれないですけど。
(2次試験はピン芸で通過されたんですね)
1人で淡々としゃべっていって、余計なセリフ言った後、けっこう間を開けてから、「そんなわけないやろ!」と自分でツッコむ、みたいな。
(3次試験のお芝居はいかがでした?)
たぶん、ムチャクチャやったと思います。ちゃんとセリフを覚えて一生懸命やっただけで。芝居の演技とかは何もわからなかったです。
(受かると思ってました?)
う~ん、わからなかったですね。ただ、審査員の方が笑ってるな、というのはありました。なんか変な奴がおるぞ、みたいな感じで。
(合格した時はどう思われました?)
受かった時は、やって行けるんかな、というのが強かったです。僕はあんまり集団行動とか得意じゃないのに、新喜劇は集団だから、集団行動できるかな、とか。しきたりとか厳しそうやから、耐えれるかなとか。心配とかが強かったです。
(学校生活では集団行動だったのでは?)
それも苦手な方でした。クラスでなじめない者同士、仲良くしていたっていうところでしたね。

―子どもの頃、新喜劇はご覧になってましたか?

見てはいました。僕の頃は、石田靖さんとか吉田ヒロさんがリーダーだった頃です。
(実際に入って驚いたことは?)
化粧をするのは驚きましたね。ドーラン塗ったりとか。こんなことするんやと思いました。ほかは思ったほどは厳しくないなという印象でした。聞いた話では、昔はもっと厳しかったそうですが、最近はそこまで厳しくないそうです。
(発声練習は?)
僕は声が大きくないので、腹式とか意識して声を出せというのは言われましたね。今もまだ小さいので、もっと大きい声出さないと…。

―初舞台は覚えてらっしゃいますか?

5月に入って、半年後くらいの祇園花月ですっちーさんの週でした。その時は、奥重敦史さんと2人でお客さんの役でした。セリフ通りで特にボケとかはなかったですが、緊張して、よくわからない状況でした。NGKでは、小籔さんの座長の週に出させていただきました。その時もオープニングでお客さんの役をやらせていただきました。
(印象に残っている役は?)
いろいろありますが、清水けんじさんの「座長になりたいんや!!」というイベントで謎の男という役をやらせていただいた時は、これ一体、なんなんやろ? と思いましたね。
(ふふふふふっ)
配役のところに、「謎の男」ってあって、その横に「運転手」「子ども」とかいろいろ書かれてて。「これ何なんやろ?」と思ったんですけど、タイムトラベルものの話で、歴史を変えたら違うところが変わってしまうということで、それで発生する何かが僕、みたいな役で…ほんまに謎の男で。わかんなかったですね。
(変わった役を振られますね。小籔さんとホームステイに現れる外国人役は印象的でした)
ずっと舞台に出る役がほとんどない状況の頃で、何もわからなくて、てんやわんやで。ボケ方も小籔さんから、「こういう時はこうやった方がお客さん笑いやすいで」とかいろいろ教えてもらいながらやりました。小籔さんにはお世話になってまして、NGKの初舞台も小籔さんでしたし、ツアーにも抜擢してもらって…。
(どんなことを教わりましたか?)
基本的には、お客さんが笑いやすい間とかテンポ、あと、このキャラクターやったら、普通と違って、こうやった方がいいとか。「普通やったら笑顔でしゃべるところを、お前やったら無機質に淡々としゃべった方がいい」とか。普通と違う指導を受けたという感じがあります。
(新喜劇のセオリーから外れたところにいる訳ですよね)
よく言われるのは、「オクレさんを目指せ」とか「オクレさんに師事せえ」とか。いろんな方から言われます。
(祐代さんご自身は?)
周りの方がそう言うなら、オクレさんみたいなのかな? と。最初、あんまり自分ではよくわかってなかったですけど。
(ほかに何か教わったことは?)
「祐代はちょっと違うからな」というのは多いですね。「普通やったらあかんけど、祐代やったらこっちのほうがええな」みたいな。
(すごいですね。合わせて来てくれるって…)
申し訳ないですね。

―新喜劇で目指されている方向は?

基本はオクレさんみたいな…そういう方面をイメージしてます。
(全く新しいキャラクターのようにも見えますが)
売れなかった時には使いにくいと思いますけど…。普通の役が出来ないし。
(普通の役をしたいという気持ちはあります?)
いやあ…どうなんでしょう? あるかもしれないんですけど、出来へんしな。お客さんの反応とか見てたら、普通のことをやってんのに、笑い起こったらアカンところで笑いが起こったりしてるので。やっぱり普通のこと出来へんのや、というのは、毎回思いますね。最初の頃、清水けんじさんが作ってくれたネタの時も、一生懸命しゃべってるだけなんですけど、清水さんのツッコミが「喋り方が気になって内容入ってけえへん」って。

―発音が変わっているという話を聞きました。

なんか、「ざ」行の「ざ」が「だ」に聞こえてしまうみたいです。
(今は聞いてたら気にならないですけど…)
たぶん、舞台では滑舌をはっきりしようと、口を大きく開けて大きな声で言おうとするので、そう聞こえやすいと思います。
(ご自分では意識されてました?)
発声のレッスンの時に初めて周りから言われて。何がおかしいのかよくわからなかったです。発声か、芝居かの時に、「やくざ」か「ざまあみろ」か。どちらかの時に誰かに言われたと。
(だまあみろ?)
何がおかしいのかなと思ってたら、ちゃんと言えてなかった。
(「やくざ」が「やくだ」になる?)
お笑いがいらんところに笑いが入ってしまって。でも、すっちーさんからは「直したらアカンで」と言われてて、そういうネタとか作ってくださったり。自分でも考えたりしてます。
(「祐代新喜劇」ですね)
ふふふ。普通のこと出来ないから。どうなるんだろうって感じです。
(最初は不安だったということですが、今はどうですか?)
そうですね。そんなに出番とかがないから…。どうなっていくのかなというのが、不安ではあります。若手なら普通の役というか、フラットな役が入ることが多いんですけど、僕はそこが無理やから、やっぱり出番が少ないんです。
(でも印象に残りますよね)
それが邪魔になることがあります。笑いがいらんところで笑いが起こったり、「祐代が気になって芝居に集中できない」とか。
(両方はできない?)
普通のことがあまりにも出来てなさすぎるし、しゃべり方も変やから、普通のセリフの言い方とか練習してたんですけど、ある時、小籔さんから「無機質に淡々とセリフしゃべり」「普通のことはせんでもいい」とご指導を受けたことがありまして。それから普通のことはやらないことにしようかな、と。小籔さん以外の先輩からも 「普通のことはせんでもいい」と言われることが結構あります。

―この先、やりたい役とか夢とかありますか?

座長になれたらええな、みたいなとこはあります。
(えっ!? 後ろ向きに滑ってて、いきなりトリプルアクセル飛ばれたみたいな…いつから座長を?)
一応、入った時から思っていました。実際なれるかどうかわかりませんが。ま、目標は高い方がいいかな、というところで。
(どんな座長を目指したいですか?)
最悪、自分よりも周りの方が目立てばいいかな、という感じです。自分のキャラクターを踏み台にして、他の人が無理なく目立つような感じになればいいかな、と。
(今、新喜劇の居心地は?)
入ったすぐの頃に比べたら居やすくなったというか、緊張は少なくなったというか。最初の頃は緊張しすぎて、何もしゃべられへんみたいな感じでしたけど。
(辞めようと思ったことはあります?)
出番とかあんまりないので、おっても無理かな? と思うことは、何回もあります。
(今の新喜劇はお芝居中心ですけど、祐代さんはギャグを作ろうとは?)
どうなんですかね~ギャグを作るのも得意じゃないし。僕なんかがギャグやったらわざとらしくなったりするから。難しいなと思ってます。
(昔のギャグは唐突なイメージもあります。「パチパチパンチ」とか)
島木譲二さんの「大阪名物パチパチパンチ」は、最後はとてつもないことされてますけど、そこに行くまでの最初のところは回しの方がいじったりして、流れで持って行ってるなという感じに見えます。よく見たら、いきなり変なことをやってるわけではなくて、段階踏んでるんやなと思ってます。
(分析してますね。普段、どんな形で新喜劇の勉強をされてますか?)
普段は録画した新喜劇の中で気になったところを何回もみたり、ネットで昔の新喜劇を何回も見るとか。1回見たただけじゃわからないから、気になったところは最低でも3回見ます。小籔兄さんからは、「周りの人と話して来なかったから、人の5倍、6倍見ないとあかんで」って言われてます。お客さんが笑う間とかテンポとかを意識して、5回、6回見て勉強せなあかんで、と。
(ご自身では自分の性格をどう思われてます?)
大人しい。クラスの端っことかにおるような。あんまり感情もなく…。
(感情もなく!? ふふふ)
感情表現とか苦手で。ほかの方から「わっ!!」と脅かされて、自分では驚いてるのに、「全然驚いてへんやん!」と言われたりします。
(何をしても動じない。大物感が…)
大物感でいいんですかね?
(何十年か経ったら、最初から「大物やったで」みたいな)
その頃に居てるかどうかわからないですけど…。
(もっと使ってくださいってアピールしときましょう!)
座長さん、これからもよろしくお願いします!

―最近、ハマっていることや趣味は?

趣味みたいなのはないんですけど、最近、1~2年くらい前から犬と戯れるみたいな。人と話するのとかは苦手なんで、犬はちょっと違うから接しやすいかな、と。
(はははは…どんな風に戯れるんですか?)
なでたり、適当にしゃべりかけたり。マルチーズで、ポルフィとミーナっていいます。世界名作劇場の「ポルフィの長い旅」(2008年BSフジ)というアニメのキャラクターの名前です。ほとんど見てなかったんですけど。名前をどうしようという時に、その兄妹の名前をつけました。あんまり思い入れがない方がいいかなと思って。
(犬と戯れていると安らげます?)
たぶん、安らげていると思います。あんまり家からは出たくないんで。
(本読んだり?)
大学生の時は読んでたんですけど、今はその反動であんまり読んでません。
(好きな小説家とかは?)
ドストエフスキーの「罪と罰」が一番面白かったな、と。1回目は全く面白くなかったんですけど、だいぶ時間が空いてから2回目を読んだら、面白いな、ってなって。
(ハマると突き詰めるタイプ?)
そうなのかも知れません。
(ぜひ、新喜劇にハマって突き詰めて行ってください)

2019年3月11日談

プロフィール

1990年3月6日大阪府泉南市出身。
NSC大阪校37期生。
2015年金の卵8個目。

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