MBS(毎日放送)

第83回 重谷ほたる

子どもの頃、テレビを見てなくて、新喜劇を全く知らなかったんです。

―もともとこの世界を目指されていたんですか?

高校で進路を考える時に、何がしたいかなと思った時に、漠然と芸能系目指したいなと思ったんです。私、一人っ子やったんで、すごいいっぱい習い事をさせてもらっていて、2歳から中学になるまでジャズダンスをやっていて、中学・高校とはテニス部に入って、ダンスを一旦やめたんですけど。芸能系で最初に引っかかったのが、声優でした。専門学校を探している時にOSM(大阪スクールオブミュージック専門学校)のオープンキャンパスに行ってみたんですが、あまりにも難しくて。「こんなん絶対ムリや」と、1回で心が折れちゃったんです。へへへ(笑) 次にミュージカルが好きだったので、ミュージカル俳優を目指そうと思って、そこのミュージカル俳優コースに行ったんです。いろんな授業がある中に元劇団四季の先生もいました。その方がほんまにスパルタで、口の開き方とか、発音とか基礎を徹底的に教え込まれて。それが演技に触れた最初でした。夏休みとかもないぐらい、朝から晩までずっと、みんな泣きながらやるくらいの厳しさで。ちょっとでもサボったり、ちょっとでもセリフを間違えたら役が無くなるみたいな。セリフのしゃべり方とか、演技の間とかを教えてもらってやってたんですけど。でも、毎日が同じことの繰り返しで、お芝居が変わるわけでもなく、自分が目指すと決めた役だけを半年間やるっていうことに、飽きちゃって(笑)

―新喜劇との出会いは?

2年生の時にその学校に初めて吉本新喜劇の授業が出来て…。
(え? そうなんですか!?)
吉本とコラボしたんです。そこで新喜劇の作家さんが授業をするというのが始まって、吉本とのコラボで新喜劇の座員さんも結構来てくださって。YESシアターで舞台して。そこで初めて新喜劇に触れたんです。学生やのに練習量もすごく少なくて、お話もすぐ変わって。演劇にもこういう世界があるんや、って。そこで新喜劇に興味を持ったのがきっかけです。でも、最初は入りたいとは思わずに、まずミュージカル俳優はやめようと決めて、ダンスを活かしてテーマパークのキャラクターをやりたいと思って。そこを目指して頑張ってたんですけど、テーマパークの試験は落ちちゃって。その時に、新喜劇に入ろうと思いました。
(テーマパークのキャラクターって、世界一有名な、あの人たちのことですか?)
はい。いろんなコースがある中にテーマパークキャラクターという授業があったんです。
(どんなことをやるんですか?)
音源を使用して、先生が振付を教えてくださって、実際に踊って。ほんまのオーディションみたいな感じで。レオタード一枚で。
(実際、新喜劇の舞台でもすごいキレのいいダンスを踊られてますね)
ありがとうございます! 今もバレエは続けてます。高校3年生で部活を引退してから、またダンスしたいって思って。家の近くにバレエ教室があったので、エクササイズ程度に始めました。それを今も続けてます。好きやから続けてるだけなんですけど…。
(踊りの魅力は?)
2歳で物心つく前から始めたので、「好き」という自覚はなかったんですけど、1回テニスを挟んだら、無性にまた踊りたくなって…。音に合わせて踊るというのが楽しいです。

―新喜劇は子どもの頃から見られてました?

私はテレビ自体をあんまり見てなかったんで。新喜劇を特に知ってたわけでもなく。専門学校の授業で初めて触れたくらいで…。
(その時の印象は?)
それこそミュージカルの演技しかやってこなかったんで、新喜劇の魅力でもあると思うんですけど、警官とかお店の人の役が付いているのに、自分自身じゃないですか。それがすごい不思議で、そこに惹かれました。ミュージカルの時も「○○役」というのがありましたけど、何で自分じゃない人を演じなあかんのか、ちょっとしんどいな、っていう。「この子は今こういう気持ちでしょ?」と言われても、「いや、私やったらそう思わへんわ~」とか。
(あははは~)
そこがどんどん、しんどくなって来て。半年やってるうちに。なんで自分じゃない人のことをこんなに一生懸命演じなあかんねんやろ、と。
(そういう風に思ったんですね~)
いや、私だけかも知れないけど、なんか一つ被らなあかん、というのが。被るものを目指してたんですけど、しんどくなって来て…。そこで新喜劇と出会って、「自分のままでいいんや!」というのが新鮮でした。アドリブといわれるやつなんかはスゴイ面白いな、と。1週間、1日3回、4回公演の中で、同じことをやっているはずなのに、アドリブとかハプニングで変わって行って。飽きないというか、やってるこっちの方もすごく楽しくて…。

―初舞台は覚えてますか?

憶えてます。すっちー座長の祇園花月で、バスガイドの役でした。けっこう、メインの役で、セリフも長ゼリフがあったりとか。すっちー座長がすごいなと思ったのが、台本自体に私のイジり方が書かれてて「なんやお前! 高校の文化祭でなんか決める時にしゃしゃり出て来る女子みたいな奴やな。お前の人気なんて学生までや! 鼻につく!!」って、最初から書かれてたんですよ(笑)
(あはははは~)
お会いしたことも、あいさつくらいしかないのに、「えっ!?」と思って。初舞台の時に、専門学校で学んだ通り、口を大きく開いて、ハキハキしゃべってたら、「顔でしゃべるな! 餅食うとんのか!?」って。えへへへ(笑) 私は滑舌良く、噛かまんように一言一言丁寧にやったんですけど…。
(へえ~初舞台でツッコミまくられですね!)
そこで「やって来たことが正解じゃないんだ」って初めて気づいて。
(セリフを覚えるのも大変だったのでは?)
初めてすぎて、それが普通やと思ったので、これが多いのかどうかもわからなくて。
(順応性高いですね~)
最初は何が悪いかもわかってないから、「怖いものなし」なところがありました。逆に初舞台の方が緊張がなくて…。間違っても初めてやから、みんなしょうがないやろって思ってくれる、というのがあったんで。だからちょっと無敵な感じやったんです。最初の頃の方が緊張なかったですね。何したらダメ、とかわかってなかったんで。

―NGKでの初舞台は?

川畑座長で、子ども役でした。まりこ姉さんの子どもで、清水啓之さんと兄妹。本当に初めての舞台は金の卵8個目のライブやったんですが、そこも小学生役やったんですよ。周りからも子どもっぽいと言われてましたから。稽古の時からすごい怒られましたね。一個一個全部怒られました。動き方とか。もう、「ハイ」しか言わなかったんで。「ハイ、ハイ」って。
(どう違ったんでしょう?)
帰る時に回る方向が逆だったりとか…。それを見て、金原早苗さんがすごく笑ってました(笑)
(稽古の次の日はもう本番ですからね)
専門学校でその部分は経験しちゃってて。ほんまに新喜劇って1日しか稽古しないんやという感動は、その時に体験しちゃったんで。いろいろわかってからの方が大変でした。
(どんなところが?)
自分が変な演技やしゃべり方をしてるという認識が、まずなかったんです。自分の中でちゃんと気持ちを作ってお芝居してるつもりが、テンポ悪かったり、間が悪かったりとか。新喜劇って連係プレーなんで、流れとかがあって、みんなが同じ感じでないといけないんです。「お前しゃべったらテンポ崩れるわ」っていうダメ出しとかもすごい多くて。お姉さん方にすごいいっぱい相談しましたね。相談しても、「そこを直すより、そのしゃべり方で面白いの見つけた方が早いん違う?」とか、「直した方がいいん違う?」とか。いろんな意見で。いまだに直ってるかどうかわからないんですけど、以前よりまだましかな、と。
(見てて、ちょっと違うなというのはわかりました)
専門学校の同期も見てて、「ほたる、しゃべり方が専門学校のミュージカルと一緒やん!」みたいな(笑) 「えっ!?」と思って。自分では全然わからなかったんですけど。それを直すのが、すごい大変でした。抜けなくて。
(今はどうですか?)
川畑座長が、「とりあえず、お前の形態やったら、森田まりこのしゃべり方を一言一句、映像見ながらしゃべって、間とかも全部真似して、完コピをしろ」と言ってくださって。ちょっとずつ完コピをするようになって。まだ全然出来てないかもしれないんですけど、ちょっとわかってきたというか、違ったな、と。
(で、森田まりこさんとコロコロシスターズを?)
まりこ姉さんとは16歳差なんですが、入った時から、見た目の体型が似てて、そっくりで。本番前の夜、本読みと立ち稽古、舞台稽古の3つしかしないじゃないですか。それが終わった夜中の1時くらいから2人で振りを合わせて、ダンス作りました。朝本番やのに、まず振りを覚えなって、けっこう大変やったんですけど、でもすごい楽しくて。まりこ姉さんも「あんた、私の妹より似てるわ」って(笑)

―印象に残っている舞台は?

初出番の時と、今、お話した舞台ですね。あとは、石田靖さんの営業に去年初めて行かせていただいて。そこで初めてお会いして。すごい新鮮でしたね。石田さんって、ツッコミもしてボケもする方なので、衝撃を受けました。こういう新喜劇もあるんやって。私がテレビ見てなかったのが、ダメなんですけど。
(新喜劇を全然知らなくて入って来られるのは珍しいですね)
ほんまに知らなくて、申し訳ない話なんですけど…。テレビ自体を見なかったんで。今はもっと見といたらよかったって、後悔してます。ネタひとつでも声のトーンが違っただけでウケなかったりとか、間が違っただけでウケなかったり。テレビで見て来なかったんで、自分の中のお笑いの引き出しが少なすぎて…。何が面白いのか、わかってなかったんで。面白いこと見つけるのが、すごい大変です。
(その辺は先輩方が見つけてくださるでしょう?)
そうなんです、そうなんです。すごいなあと思って。「今のネタやったら、もう1個トーン上げたらウケるようになるねんで」とか、「もう1つ間を置いたらウケるで」とか。それがバチっとハマって、ウケるようになったりするんで、ほんとにすごいと思う。

―先輩から言われて印象に残っていることは?

新喜劇の練習の仕方、みたいなことなんですけど、諸見里さんが言ってくださったんですけど…あれ、書いたんですけど。(ノートを開いて)
(書いてきた?ふふふ(笑))
これは書いたんですよ。これに関しては書きました。
(あはははは…)
まず、「愛嬌が大事」っていう。舞台上で、ぱっとお客さんが見て、どんな役でも、男でも女でも、「かわいいな」と思われることがまず、大事って言ってはって。そこからウケやすくするポイントを言ってはって。自分のセリフとかボケとかやって行くうえで、どこでウケたとか、どんな間でやったらウケたかというのを、全部突き詰めて行って、一個一個覚えて行って、滑ったところも同じで、全部覚えて、自分の中の辞書みたいに積み重ねて行くのが大事って言われて。あ、そこまで突き詰めて一個一個のこと、考えてなかったな、って。それが印象的なのと、あとは、川畑座長が、新喜劇はお金を稼ぐためのひとつの道具やから、私生活が潤っていないと、って。「彼氏作ったら新喜劇集中できなくなるから、作らないんですよっていう奴、よくおるけど、まず、そっちが幸せにならんと、こっちも潤わへん。なんのために新喜劇やってんの?ということになる」と言うてはって、すごいそれが印象的で。だからと言って恋人が出来るわけじゃないんですけど(笑) 「仕事なくても、私生活楽しそうな奴の方が俺は人生として正解やと思う」、と言うてはって。みんな新喜劇、新喜劇ってなりすぎてるから、もっと人生として大きく見た方がいい…みたいな。私も「あっ!」って思って…。
(そういわれると深いですね)

―お世話になった先輩は?

やっぱり諸見里さんが一番、お世話になってます。勉強の仕方も教えてくださってますし。私が目指してる森田まりこ姉さんは、ボケもすごく出来て、目指すところなんです。演技も出来て、ボケもすごく数多くて、面白くて。出て来るだけで拍手が来るような、絶対笑い取るところが、すごいカッコいいな~と思ってて。あと、岡田直子姉さんもいじられた時の返しとかが、全部面白くて。直子さんが教えてくれはったんですけど、新喜劇で「かわいいなんて、いややわ~」って、カバンでバン!って叩くのあるじゃないですか。あれなんかよく、お兄さん方が、「恥ずかしがってるんやから、もじもじして叩け」っていうんですけど、直子姉さんは「ほたる、私らみたいな見た目がちょっと気持ち悪い、変な奴がもじもじしたら、そこが面白くなっちゃったらアカンから、軽くでいいねん」みたいなアドバイスを要所要所でくださるんです。そこがうれしくて。まりこさんや直子さんみたいな感じになりたいな、って。

―この先、やりたい役とか夢とかありますか?

ひとつの役というより、いろんな役をやってみたいなというのがあって。どんな役でもこなせるようになりたいですね。すごい不思議な役、いっぱいありますから。このあいだ、諸見里さん週でやらせていただいたのが、記憶喪失の民間療法士っていう(笑) 初めて聞く役で。ははははっ。
(記憶喪失の民間療法士?)
記憶喪失を病院の先生やったら、普通に治療していくと思うんですけど、新喜劇のお話の中では、民間療法士は、「脳にショックを与えたら治ります」っていう感じで、音楽すごい鳴って、バッって服脱いで、太もも揺らしたり、毛むくじゃらやったりとか…あははは。
(ふふふふふふ)
斬新な、詐欺師みたいな感じで(笑) そこで、こんな面白い役あるんやって思って。
(ま、何でもアリ、ですからねえ…)
何でもアリなのが、楽しいからこそ、何でも、いろいろやってみたいです。

―重谷さんは定番のギャグを作ってみようとかは?

ギャグを作りたいという気持ちは常にあるんですけど、やっぱり、お芝居をもっとしっかりできるようにならないと、何を作っても一緒やと思うんで、まず、基礎をしっかり出来るようになりたいと思います。
(お芝居という点での目標は?)
まりこ姉さんと岡田直子姉さんの芝居が好きです。
(お2人目指して頑張ってください)

―最近、ハマっていることや趣味は?

最近、動物園に行くことにハマってて。単純に癒されるっていうのもあるんですけど、すごい、動物園と新喜劇を重ねて見てて。例えば、鳥とかしゃべるじゃないですか。オウムとか。しゃべるトーンとか発音とかがすっごい面白かったりするんですよ。そういうのも、メッチャ勉強になるなあ、とか思ったり。すごい、楽しいです。こんな間で振りむいたら、かわいいんやとか。
(ほほ~)
お猿さんとかは特に人間と近いから、毛づくろいとか。こんなんなんですよ(と毛づくろいのマネ)早いんですよ。スピードが違って。そんなとことか新鮮で。何か面白いこと見つけられへんかな~って。
(まりこ姉さんのゴリラに毛づくろいしてみます?)
あははははは~(大笑い)寛平師匠もサルやってはるからちょっと危ないゾーンですね。
(一番好きな動物は?)
ペンギンが好きです。歩き方が可愛いです。いろんなところの動物園に行くのが楽しくて。神戸どうぶつ王国とか、姫路セントラルパークとか。私、めっちゃ行ってますよ。アドベンチャーワールドはもちろん、愛媛県立とべ動物園も。
(ぜひ、面白いこと見つけてくださいね)

2019年1月21日談

プロフィール

1995年4月5日和歌山県和歌山市出身。

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