MBS(毎日放送)

第98回 野崎塁
(のざき・るい)

自分が作りたいと思う理想の舞台の先に、新喜劇があったんです。

―金の卵11個目ということは、入ってからまだ1年ほどですね。

レッスンが始まったのが(2019年)5月になります。
(もともとお笑いを目指されていたんですか?)
もともとは幼い頃から映画やドラマが好きで、高校の時に映画をすごく見てたんです。自分でもやってみたいな、出てみたいなと思って、ネットでオーディションを探して、舞台の方に何回か出させていただいて。ちょうど進路を考える時だったので、大学でも演劇の勉強をしたいと思いまして、演劇の大学を探して、桜美林大学に入学しました。僕は埼玉出身なので。
(そうですよね。どうして埼玉の方が大阪の新喜劇に?)
大学では役者をやったり、裏方の舞台監督とか照明とか、いろんな勉強をさせてもらいました。自分たちでチームを組んで、学生主体で公演をやるような活動が盛んな大学だったんで、自分でもいろんな作品を作ったりしてたんです。その時、一緒にやってた友だちがみんなお笑い好きで、お笑いの公演をやろうってなって。僕ももともとお笑いも好きだったし、お笑い芸人さんの話の演劇の途中に漫才があったりするような公演をやったり、漫才とコントだけの公演をやったりして、初めてその時に漫才をやらせてもらいました。いろんな形の演劇をやって行く中で、生意気ですけど、自分の理想の演劇像というか、自分の作りたい演劇とか舞台ってどういうものだろうなと考えてみた時に、ずっと自分の頭の中に吉本新喜劇という存在がありました。僕の小さい頃は埼玉ではやってはなかったと思うんですけど、父親が滋賀県出身で、お正月になると祖父のところに遊びに行ってたんです。その時に新喜劇を見てたと思うんです。オープニングの「ホンワカパッパー」っていう音楽、あれがお笑いの代名詞みたいな。自分の中で「お笑いの原点の音楽だ!」というイメージが、ずーっとあって。高校時代や大学でお笑いをやっている時も何回もYouTubeとかで見させていただいて、その時にはもう、東京でもMXテレビで放送してたので。毎週必ず録画して見るようにしてました。

―新喜劇のどういうところに魅力を感じられたんですか?

僕が舞台を作る上で一番大事にしてたものがあるんです。わかりやすさと見てて楽しい、ちゃんと笑うことも出来るし、感動があってメッセージ性もあって、ちょっとホロっと来て…という、そういう作品がものすごく大好きだったというのがあったんです。そういうのを自分も作りたいなという。ずっと追っかけてた先に、まさに自分がこれだな、という新喜劇がボーンと自分の中に出て来た、という感じでいすね。
(そういう形で新喜劇が好きという人は珍しい…)
あはははは~(大笑い)いや、もともと普通に好きだな~って感じだったんですけど。なんでこんなに好きなんだろうって考えた時に、自分はこういうのが作りたくてやって来たというのを気づかされた感じ、ですかね。
(これは新喜劇に行くしかないと?)
そうですね、思いました。
(裏方のことも学ばれていたので、その選択もあったかと…)
自分の性格的には、人前に出て何かやるというよりかは、裏方にいて、表に出ていく人をサポートする方がやってて楽しいというか、向いてると思うんです。でも、裏方でやるには体力的にたぶん持たないかな、自分は一生これを続けることは出来ないなと思って、裏方の選択肢は早目になくなりました。自分が表に出たいという気持ちもありましたし。

―新喜劇のオーディションを受けられたのは?

僕が大学4年の時の12月31日が金の卵10個目の〆切日でした。大学での最後のお笑いとか漫才の公演が3月にあったので、ちょっとその時はオーディションを受けられないと思って止めたんです。次、オーディションがあったら、漠然と受けてみたいなと思ってたんです。一旦、実家に戻ってゆっくり考えようと思って、卒業してから1年間実家で過ごしてました。
(11個目のオーディションには埼玉から?)
毎回新幹線で来て、受けて帰るって感じでした。
(2次の特技披露は何を?)
一応、プロフィールに「特技」って書かせてもらってるんですけど、コントとか漫才をやってる時に、顔マネというか、顔でオーバーリアクションをするというのがあって。ツッコミではないんですけど、リアクションネタが何個かあって。一発ギャグという感じでもないんです。フレーズみたいな感じなんですけど…。
(変顔みたいな?)
まあ、そうですね。
(お写真で紹介しますね。3次審査のお芝居は?)
はあ~そうですね……緊張してて……(しばし無言)…台本をいただいた時に、関西弁じゃなきゃいけないんだろうなと思ったんです。それで、今も滋賀県に住んでいる従兄弟に電話して、「ここのイントネーションどうかな?」と確認して、なるべく覚えようと思って覚えた記憶はありますね。緊張しちゃって、人と目を合わせるのがすごく怖かったですね。
(あはははは)
ちゃんと相手の目を見てしゃべらないといけないシーンだったんですけど、すごい恥ずかしくなっちゃって、顔が真っ赤になってしまって…。
(あはははは~でも、合格。落ちた時のことは考えてました?)
ほんとは考えなきゃいけなかったんですけど、考えてなかったですね。受かるしかない、と。受かった時は、ものすごくうれしかったです。

―約半年間、お芝居の稽古はいかがでした?

僕は滑舌があんまり自信なくて。言われるだろうな~と思ってたんですけど、やっぱり、先生に「滑舌が悪い、舌先の動きが上手く行ってない」とご指導いただいて、自分で何とかしなきゃな~と思ってたんですけど。声も自分的には通りにくい声だなとは思うんですけど。声量自体は悩んでなかったというか、気になってなかったというか。滑舌は今でも課題なんですけど。

―今回が初舞台ですね。

本公演は初めてです。金の卵のデビューライブが10月2日にありましたが。
(いきなりNGKでの初舞台、どうでしたか?)
まだ舞台全体を見れないというか、バババッと出て行って、もりすけさんを僕が捕まえるんですが、ちょい、これくらいの一部の景色しか見えてなくて、舞台のセットとか、全体を全く今、見れてなくて。首を動かすのも怖いというか。
(稽古の短さにもビックリされたのでは?)
驚きましたね。ほんとにこのまま舞台に上がるんだ~と思って。すごくビックリしましたね。お話はもともと聞いてたんですけど。本読み1回して、立ち稽古して、舞台稽古して、次に本番だよって聞いてたんですけど。ほんとにそれでやるんだ~というのに物凄くビックリしましたね。あれだけのセリフ量を覚えて、合わせられるのが凄いなと。

―大阪に来られての生活は?

普段、よく行くところが難波周辺なんで、大阪の中でも特に人も多いし、観光客の方も多いですし。全然、気持ちの落ち着ける場所がないな~という感じはありますね。1人はあんまり苦ではないんですが、知らないところに1人でいるっていう感覚がすごい強くて。家に帰っても落ち着かないな~みたいなのはありますね。
(大阪弁が飛び交う楽屋での戸惑いはなかったですか?)
最近、すごい聞き取れないな~というのが、あります。
(え? 最近聞き取れない?)
川畑さんとかとしゃべっている時は大丈夫だったんですが、けっこう、ご年齢が上の先輩方とかのゴリゴリの大阪弁が、ちょっと聞き取れないというか…最近、ちょっと?ってなってますね(笑)
(ふふふふ。大先輩の方が聞き取れないって…)
そうなんですよ。「ごめんなさい」みたいな感じっていうか。関西弁はすごい好きで、僕にとってはお正月のイメージというか。お爺ちゃんの家に行ったら、従兄弟とかみんな関西弁だし。関西弁聞くと安心感があるのはありますね。今は自分でも関西弁をしゃべれるようになりたいと思います。

―初舞台を踏んだばかりですが、新喜劇でやって行きたいのは?

そうですね、目標はでっかく、ではないですけど、すっちーさんのような座員になれるように、いつか座長になれたらと思っているんですが。そうですね、それに、清水けんじさんのような正当な回しも出来たらなとは思うんですけど。やっぱり、ちゃんとした関西弁だったりとか、全体を回せるような力が必要だなと。しっかりした芯の通ったキャラクターみたいなのが必要だと思うんですけど。まだ全然だいぶ人見知りなんで、出せてないですけど。
(あはははは~それはどんなキャラ?)
僕はけっこう、ふざけたがりというか、真面目な話をしてる時ほど、すごいふざけたくなっちゃうんです。1人でぐわ~っと暴れるというか、かき乱して笑いを取ったり、いきなりパッと出て来て、全体の雰囲気を変えるみたいなことをやりたいな、とか。
(見かけによらず大胆ですね。新喜劇の中でいうと?)
そうですね、レイチェルさんとか。すごいギャグをお持ちで。僕は今、ギャグはないんですが、ギャグを持てたら、すごくいいなあとは思います。僕がよく見させていただいているのは、もじゃ吉田さんが回してる横で、レイチェルさんがちょこっと出て来て、ふざけるみたいな。その形がすごくきれいだな~、見ててすごくいいな~と思うんです。回しの方の横にいて、ちょこちょこ、パァっとやったりするみたいな。それを憧れというか、目標にしてます。
(「きれい」という表現が、作り手の立場ですね)
あはははは。いえいえいえ~(笑)自分の中で考える時間が沢山あるので。えへへへへ(笑)
(先々は舞台を作っていきたいという気持ちが?)
そうですね。自分のプロデュース公演というかイベントみたいなのが出来たらいいなあと思うんですけど、その辺はまだ漠然というか。だいぶ先の話になると思いますね。

―人見知りと言われましたが、仲のいい先輩は?

今は、10個目の横地眞平さんなんですけど。同い年で住んでるところも近くて、何回か飲みに連れて行っていただいたんですけど。いろいろとお話してくださって。
(大先輩には近づき難い?)
そうですね(笑)出番の間の1週間で何とか仲良くなりたいとは思っているんですが、なかなか。楽屋にいても、話しかけていいのかがわからなくて。皆さん、スマホを見られていたり、寝てたりとか、1人の時間を過ごされているので。お邪魔しちゃいけないと思って。今、この出番をいただいてる時にコミュニケーション取っていかなきゃなと思うんですけど。踏み出せずにいますね。
(演劇をやっていらしたのに、人見知りって)
パッと舞台に出たり、セリフ言ったりするのは大丈夫なんですけど。やっぱり、最初のコミュニケーションがすごい苦手ですね。ちょっと話して、ほんのちょっと慣れたら、もう全然、話できるようになるんですけど。新喜劇の先輩は「憧れの新喜劇の大先輩」というのがプラスで乗っかって来てるので、なんか下手なことを言っちゃいけないとか、失礼になっちゃいけないというのがすごくあって。
(まずは先輩としゃべることですね!)
うははははは(笑)そうです、そう思います。

―プライベートでハマっていることや趣味は?

やっぱり映画を見るのが好き、ですね。映画館にはあんまり行かないんですけど。アマゾンプライムとかネットフリックスとか動画配信サービスで、家でずっと見てたりしますね。
(好きな俳優さんとかは?)
脚本とかもやってる宮藤官九郎さんが、すごい好きで。俳優とかやられる時ももちろん好きなんですが。監督をされてる作品がすごい好きですね。
(どんなところが?)
やっぱり面白いです。僕が好きな作品の感じなんですけど、すごい面白くて、ちゃんとお話もしっかりしてて、ちょっとホロッと来るような感じもあって。いつみても面白いと思いますね。
(いずれはほかの舞台にも出てみたい?)
そうですね。今はあまり考えてないですね。まずは新喜劇、というのが僕の中にあるので、新喜劇に集中したいですね。まずは新喜劇のことをしっかり勉強させていただいて、と思ってます。

2019年12月2日談

プロフィール

1995年11月29日埼玉県富士見市出身。
2019年金の卵11個目。

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