第77回 小林ゆう

何にも知らなかったんで、何もかもがすごい楽しいです。


―金の卵9個目ですが、お笑いを目指されていたんですか?

私は4歳からずっとバレエをやっていて、バレエの道に行こうと思ってたんです。でも、後でお母さんから聞いたんですが、バレエの先生から「ゆうちゃんはバレリーナとかじゃなくて、吉本入り~や」とよく冗談で言われていたと聞いて、私自身が一番ビックリしてます。思い出したら、一緒にバレエを習っていた弟と2人、ふざけて「チビターズ」とか言って漫才をやってたなあ、と。小学校5年の時もお楽しみ会でクラスの仲のいい友だちと組んで、オバさんになりきった面白くない漫才をやってたなあ、とか。
(バレエはいつまで?)
今も一応ずっとやってます。高校にもバレエの推薦で入ったんですよ。大学も行ってないので、受験なしの人生で…。
(おいくつですか?)
今、19歳です。高校卒業してすぐ新喜劇に入りました。新喜劇は18歳以上なんですが、応募書類を送る時は17歳で。最初、いけるのかな~と思いつつ。
(バレエ人生から一転お笑いに?)
高校の時のクラスがみんな面白くて、私がいろんなことをするタイプだったので、「オモロイやん!」と言われることに快感があって。人を笑顔にするのは昔から好きでした。小2の時に平野区から天満へ引っ越してきたんですけど、当時、「どうしたら友だちができるかなあ、そうや! 面白いことをしたらいいんや!」と言ってたみたいです。私は覚えてないんですが。

―新喜劇に応募されるきっかけは?

新喜劇は子どもの頃からテレビでは見てたんです。当時はまさか、入るとは思ってなかったですが。お母さんが初めて生で新喜劇を見たのが、「茂造と恋のエトワール」で、松浦景子さんが主役でバレエを踊ってたんです。で、「バレエの子いたよ。メッチャ踊ってたよ」と言われて、その舞台をテレビで見た瞬間、目が輝いて…「こんなんあるのか!?」と思いました。その時は夏で、いいなあとは思いながら、進路選択の時期に舞台人になりたいなあと。私、高校2年~3年の春休みを利用して、2か月間ロシアに留学したことがあるんです。バレエのコンクールで留学許可を頂いて。
(ロシアってすごいですね~)
最初は行った瞬間に「帰りたい!」と思いましたけど。もう、プロポーション(体型)が全然違う。みんな手も足も長いし、背は高いし。でも行ってるうちに楽しくなって。帰る時には帰りたくないっていう気持ちでした。1年留学できたんですけど、当時のクラスの友だちが大好きだったので、一緒に卒業したいと思って。バレエも大好きなんですけど、人を笑わせることが好きという思いが強くて。新喜劇でバレエっていうのを見て、「えっ!?」と思いました。すごいなあと。だから松浦さんがきっかけなんですよ。今、一緒に踊らせていただいているんですが、最初の時は「これは夢かっ!?」と思いました。踊る役だけだったんですけど、楽しくてうれしくて、幸せやなあと思いました。

―オーディションはどうでしたか?

2次の面接で「特技披露」って書いてあったので、歌って踊りました。体が柔らかいので、エビ反りで足が顔の横まで来るんですよ。その状態で歌を歌ったら、緊張とかいろいろ混じって、むせてしまって…。審査員の方から心配されるっていう。まわりはお笑いの人ばっかりですごく面白いのに1人だけ浮いてました。その場に行けたことだけでもうれしいなと。最後に「最近何か面白いことありますか?」と聞かれたので、何もなかったのに、「ハイ!」って手を挙げて、高校のお別れ会でみんなと別れるのがさみしすぎて大泣きしたことを話したんです。そしたら、その時のことが甦ってきて、ぶわっと涙が出て「私ね、ほんとに、もう、みんなが大好きで、たまらなく、さみしいんですよ~」と大号泣してしまって。泣いても笑っておこうとしたので、凄い顔になってました。それでメッチャ笑われました。
(次はお芝居ですよね)
3次はお芝居だったんですが、小学校5年から、ミュージカルを習ってまして、台本を読むとか覚えるのは大丈夫でした。ただどうしても、ミュージカル調になってしまったんですけど。とりあえず、笑顔を絶やさず、一生懸命やろうと思ってました。「合格です」となった時は、「!?」ってなりましたね。先のことを何にも考えてなかったんで。昔から行動力だけ凄かったみたいで。あと積極性と。実は吉本興業がやっているヒントン・バトルダンスアカデミーの1期生としても受かってたんです。同じタイミングで合格が来て、どっちを選ぶかってなって、新喜劇を選んだんです。

―入団されたのは?

2017年5月からなので、ちょうど1年になります。
(入ってみて驚かれたことは?)
すべてビックリでした。ほんとに社会経験をしないままガン!と入ってしまったので。何と言いますか、礼儀から何も知らなくて。未知、無知って感じで。だから、疑問がないんですよ。こういうもんなんだって。「なんでせなあかんのやろ?」がなくて。「あ~そうなんや」と。
(なんでも吸収できちゃう?)
いや、出来ないので、見てください、これ。(と、スパイダーマンの丸型メモを披露)全部、ルールを書いてるんですよ。私ほんとにバカで、忘れてしまうんで…。
(すご~い!)
これがもう唯一のよりどころというか、困った時に「何やったっけ?」と。書き過ぎて、どこに何を書いたかわからなくなるんですけど。忘れないようにしてます。
(困った時にスパイダーマンが助けてくれる…)
これがあるとちょっと安心します。
(先輩方もよく面倒を見てくださる?)
もう、ほんっとに優しいお姉さんばっかりで。なにもかも教えてもらってばっかりです。

―初舞台は?

11月の西梅田劇場の酒井藍さんが座長の舞台にオープニングの役で出させてもらいました。舞台に出た瞬間の快感、というか。「うれしい、楽しい、何これ!?」と思った瞬間に、「新喜劇いいなあ」と改めて思って。明るく元気に、をモットーにやったんですが、バレエでは声を張ってこなかったんで、大声を出し過ぎて、楽日の前日くらいに声がかすれて出なくなってしまいました。その時は加湿器とかも知らなかったんで、口開けたまま寝てて。朝起きたら、「声ない!」みたいな。お姉さん方は「大丈夫やで」と言ってくださったんですけど、家で泣きまくました。「初舞台で声飛ぶって、もう~」「次出番なかったらどうしよう~」って(笑)

―失敗談はありますか?

5月に入団して、7日にお披露目会があったんですよ。3座長公演のあとで9個目がお客さんの前で自己紹介していくんですけど、自己紹介で名前を言うのを忘れたのが、私なんです。
(え!? 自己紹介なのに?(笑))
はい。もうバカじゃないかと。私、2番目やったんですけど、「こんにちは~踊ることが大好き、歌うことが大好き、しゃべることが大好き。最近はビートルズとクイーンにハマってます。あ、バレエやってます!」。小籔さんから「名前言うて~」みたいな。
(あははは)
それに、私、めっちゃコケまくるんですよ。
(コケる? 新喜劇のコケじゃなくて?)
初めての辻本さん週で、曲が流れて突然出て来て踊って、帰る。「何で出て来てん!」っていうだけのところを、めっちゃ張り切りすぎたのか、踊った後にグラングランになって、帰る時にドタンバタン、ドタンバタンってコケて。全然帰れなくて、ボケをつぶしてしまったっていう…。辻本さんから「何や、あれは!?」とツッコまれました。
(バレエで体幹しっかりしてそうですけど…)
そうなんですよ。昔から鈍くさくて。この線も(額を指さし)、1歳の時に階段から転げ落ちて、パカンって割れて…。
(えっ!? 割れた!?)
初NGKの時には、出て来て、踊る前にコケて…。「またコケたよ」って。で、若井みどり師匠が、楽屋で「寝転がってみ」って。「あんた足の長さ違うわ!」って足を引っ張ってくださったんですよ。その次の舞台はすごく踊りやすくて…えへへへ(笑)。
(はははは)
一番面白かったコケ方は、警官役で「お前たち、現行犯で逮捕する!」って言った後に、バーン、ドンって前のめりにコケて。(床に伏せて)こんな風に舞台上で床にカエルみたいになってました。その次のボケも「なんやねん」みたいなことになって…。
(あの~ストッキングに伝線入ってます…)
えっ!? ギャハハハハ! もう、めちゃめちゃですわ~ホントに。

―これまでで楽しかった、印象に残っている舞台は?

初NGKで踊らせていただいたのも楽しかったですし、今年の2月の祇園花月の辻本座長の時に、初ヒロインといいますか、ロシアにバレエ留学に行く女の子の役をいただいたんです。セリフもいっぱいあって、踊るシーンもあって。楽しかったですね。松浦景子姉さんを見てたので、余計にうれしかったです。あんまり緊張しないタイプなんですけど、ビックリするほど緊張しました。あと、2月25日にあった烏川兄さんの「ひょっとこ大大感謝祭」で、高校生の役をいただいて。修学旅行生として旅館にやって来て、私ひとり別行動して大騒ぎになるという役で、とてもうれしかったのを覚えています。私でいいのか? 大丈夫なのか? と思いつつ、緊張しましたけど、あたたかいお兄さんお姉さん方に包まれて、とてもうれしかったです。
(ちなみにご家族は舞台を見に来られますか?)
お母さんは毎回来てくれます。「新喜劇入ってくれてよかったわ。お母さん、笑う機会が増えたから、すごいうれしいわ」って。それを聞いたら泣きそうになります。弟も見に来てくれて、ポロっと「姉ちゃん、ホンマすごいよ」って言ってくれたことがあって、「そんな風に思ってたん?」って。仲いいから何でも言い合えるんですけど。応援してくれてほんとにうれしいです。ありがたいです。

―まだ1年ですが、先輩の言葉で印象的だったのは?

珠代姉さんの、「弱音を吐いちゃいけない」という言葉が、その時の私には「わ~カッコいいな~」と思えました。ちょうど夜芝居の時で、3公演の後に2時間の夜芝居があるんです。そんな時で、特別な言葉じゃないと思うんですけど、特別に感じました。
(憧れの先輩は?)
新喜劇のお姉さんって全員ほんとにすごい素敵で。まず、優しい。教えてくださるし。新喜劇に入っていろんなことを勉強しました。お笑い、舞台、礼儀、言葉、歴史…あとメイクの勉強とか。ちゃんとしたメイクをしたことがなくて、適当にやってたんです。すごい面白いメイクしてたみたいで。初舞台の時は、顔真っ茶色にしてて…。
(茶色!?)
変な色のファンデーションを塗ってたみたいで。「サーファーか?」みたいな。それすら気づかず。おかしかったらおかしいと、ちゃんと言ってくださる、お姉さん方の優しさだと思います。

―この先、こんなことがやりたいという野望とかは?

メッチャちっちゃい野望なんですけど、暴走族の役がやりたいです(笑)。
(あははははは)
それこそ、新喜劇って日常じゃない役が出来るじゃないですか。警官の役をやった時のうれしさがハンパなくて…。「うわっ! やった!!」みたいな。全部楽しいんですけど。新喜劇って本当に不思議で、どんな役もあるじゃないですか。役いただけるだけありがたいんですけど、ドキドキ、バクバク。いろんな役が出来るようになりたいです。
(今はオープニングでネタを考えることも?)
それがなかなか難しくて…。面白いなって思ったことも、辻褄を考えて行ったら難しい。でもすごい楽しいです。若いというだけでやってる感じもしますが、元気と感謝を忘れずにやりたいです。
(お悩みはありますか?)
お悩みですか? 先がわからない…えへへへ(笑)でも生きてる限り、どんなことがあるかわからないんで。やらないより、やって後悔したいので、行動して行きたいです。

―プライベートでハマっていることは?

変身メイクです。私、変身願望が強いのか、変身メイクをするのが好きで。(スマホの画像を見せながら)これ「アリス・イン・ワンダーランド」の赤の女王で、これが「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」、ちょっと違いますけど。これ、怖いでしょ。目が左右で違うんです。これが「アバター」。これが「キャッツ」。これ「くるみ割り人形」。
(すっごおおお~い!!)
そういうメイクばっかりしてます。楽しいこと、面白いことを考えたくてしょうがなくて。
(どのくらい時間をかけているんですか?)
時間? 忘れてますね、やってる時は。だいたい夜中にやりたくなるんです。テスト前とか、特に。勉強せなあかんのに、「いや、もっと楽しいことがある!」って。何してるねん!って話ですけど。
(ほかに食べ物とか場所で好きなものとかは?)
食べ物…キムチ。全然かわいくないですけど、キムチが好き。
(意外なものが出てきましたね)
10歳の時にお父さんのつまみのキムチを食べたのが忘れられなくて。そこから辛いものの虜ですね。チゲ鍋とか。
(結構辛い物好きの先輩もいらっしゃいますよね)
そうなんですよ! 珠代姉さんとか森田兄さんとか。アキさんも。
(今まで食べた辛い物の中でおいしかったのは?)
この近くの「麻辣湯(マーラータン)」知ってます? なんばパークスとか日本橋にあるんですけど。春雨でスープがマーラータンで。初めて珠代姉さんに連れて行っていただいたんですけど、感動しました。おいしかった~。
(まだまだ楽しいことがいっぱいありそうですね)
よく「楽しい人やな」「楽しい人生やな」って言われます。
(この先も楽しんで新喜劇を続けてください)

2018年6月12日談