MBS(毎日放送)

第96回 伊丹祐貴
(いたみ・ゆうき)

舞台では一日一日がオーディションやと思ってます。

―いつ頃からお笑いを目指されていたんですか?

お笑い芸人に実際になりたいと思ったのは遅くて、大学の時なんです。ずっと「いいなあ」とは思ってて、それこそ、小学校の頃からナイティナインの岡村さんを見て育って来たんで、岡村さんみたいになりたいというのはありました。でもやっぱり就職せなあかんかなあと思って、大学へ行かせてもらって。ずっと悩みつつ、大学でインターンシップという職業体験があったんですけど、その時に「楽しくないなあ」と思ったんですよ。それで、「もう、好きなことしよう」と、お笑い芸人っていう方向になりました、はい。
(大学まで行って…とか言われませんでした?)
メッチャ言われました(笑)、もう「何言ってんねん!」みたいな。僕自身、受験勉強をせずに、高校はバスケで入って、大学は陸上で推薦いただいて。スポーツ推薦でトントンと行ったんで…。
(あ、そうなんですね!)
実は大学に入りたての時に、お笑いを目指してたと思うんです。とりあえず単位を全部取ろうと、決めてたんで。単位を取って、お金も貯まったんで、大学の4回生になるタイミングでNSCに入ったんです。

―NSCでは33期生。いかがでした?

誰と一緒に入ったとかもなかったんで、最初は不慣れな中でギラギラしてたというか…。僕がお笑いのことをあまり知らなかったんで、まず、ピンでお笑いのことを学ぼうと思って、ずっとピンやってました。半年後にコンビ組んで解散して。
(コンビはすぐに解散?)
最初のNSC時代のコンビはすぐに解散しましたね。ピンになって卒業して、卒業してからまたコンビ組んで、という感じです。そのコンビは2年ぐらいじゃないですかね。結構、解散、結成、解散が続いてまして…。
(何回ぐらい?)
えっと…NSC合わせたら5回ですかね。3回目に組んだコンビは結構長くて、5年くらい組んでたんで、そこで解散した時はどうしようかと思いました。27、8歳の時でしたね。実はそのコンビが、「キングオブコント」の準準決勝でダメやったんですよ。正直、僕の感覚では、決勝に行ける準備も整ってて、準準でつまづいて、「来年は行ける!」っていう時に、その相方が結婚する、辞めるとなっちゃったんで、なんかずっとモヤモヤしてて…。
(うーん、それは惜しい…)
コンビが解散した時に、すごいお世話になったNSCの講師の先生から、「お前、新喜劇行きや」と言われて、そういう選択肢もあるんや、と。新喜劇かまたコンビ組み直すかという2択やったんですけど、自分の中では、「キングオブコント」の優勝目指してずっとやってましたんで、やっぱりちょっと優勝諦められへんな、と思って、新しくコンビ組んだんですけど、うまく行かずに…。解散になった時に、辞めようかなと思ったんです。その時に先生のお言葉を思い出して、お笑いやるんやったら、新喜劇に行こうと思って、金の卵オーディションを受けたんです。
(漫才で目指していたのは?)
この人らに面白いと思われたいなと思った先輩は、アキナさんだったり、ジャルジャルさんだったり、その時のバリバリの人たちで。やっぱり、一緒に闘っていた人たちですかね。「勝ちたいな」と思ってました。

―西宮神社の福男選びで二番福になったのは?

新喜劇のオーディションに応募して、1次の書類選考待ちの時やったと思うんです。二番福を取った後に、「2次選考です」って連絡が来て、「よかった、受かってた」みたいな。
(それまでにも走られたことが?)
僕は地元なんですけど、大学の時に遊び半分で「くじ引きに行こうや」と行っただけで。その時は先着順でくじも引けなかったんです。ちゃんと並んでちゃんとくじを引いたんは初めてですね。
(まず、くじを引かないと走れない?)
そうなんですよ。だいたい5000人くらい参加するらしいです。その中から先着1500人くらいがくじを引けるんですよ。くじに番号が振ってあって、スタート場所が完全指定なんです。僕、4番のくじを引かせていただいて。それが門の開く前やったんで、ポールポジションと言いますか…。
(二番福ってすごいですよね)
いや~ありがたかったですね~。いろんなことが重なって。実は番組の企画やったんです。新喜劇のオーディション書類を送った後に、「ワイドナショー」(フジテレビ)の企画が来て。なので、番組のプレッシャーとかも感じながら走りました。
(大学で陸上をされてたとはいえ、かなり経ってます)
10年くらいですね。大学では400メートルで。
(ちょうどいい距離ですね!あはははは)
福男は200メートルなんで、「勝てそうやな」と思いながら。門開いて、終盤あたりで、あれ? 俺、二番やと思った時に、「ワイドナショー」の松本さんの顔がよぎりまくってたんですよ、うわ~って。それで走ってましたね。
(ふふふふ)

―その勢いで新喜劇のオーディションはトントン拍子に?

僕はこれまでに9年やってるんで、9年分ぶつけました。漫才劇場の一応メンバーやったんで。そこでやってたネタとかを。はははは(笑)
(審査員の反応は?)
まあ、でも…まあまあ。あははは。
(いいじゃないですか。全然笑ってもらえないというか、笑ってはいけない、くらいの…)
そうなんですよ。あんまり笑わないでしょ、笑ってもらえない中で、そんなにキリッとしてなかったイメージもあったので。その時に、メチャクチャ自分に自信がついたといいますか。やっぱり福男取ってから、「あれ取れたんやったら、俺、何でも行けるやろ」という、いい意味の自信がついたので。ちょうどいい感じのメンタルでもありました。

―3次はお芝居ですが、芝居経験は?

僕、5年コンビを組んでた最後の年から、お芝居を始めたんです。そこから何年か、劇団コケコッコーという劇団に…。
(令和喜多みな美の野村さんが主宰の?)
ずっと野村さんにお世話になってまして、これまでに5作品くらい出させてもらいました。
(いい作品を作られてますね)
そうですね。その中で鍛えていただいたというか、考えながら、力をつけていただいたというか。それも大きいですね。
(新喜劇のお芝居とはまた違うと思いますが)
ちょうど関西演劇祭の時に、金の卵のデビューライブが重なったんです。午前中、劇団コケコッコーの芝居の稽古をやって、午後は新喜劇の稽古をやるんですけど、2つが全然違ってて。新喜劇って客席にお尻を向けないじゃないですか、でもお芝居の方はお尻を向けないといけない。新喜劇は前を向いて突っ込んだり、しゃべったりするんですけど、お芝居は「そこで生きてる者やったら、前見てしゃべれへんやろ?」みたいな感じで、ずっと逆のことをやってたので、めちゃくちゃ混乱してましたね。お芝居の時に怒られて直したことを新喜劇に行ってやったら怒られて。ぐちゃぐちゃになってました(笑)

―新喜劇の初舞台は覚えてますか?

昨年10月の祇園花月で、須知さんが座長でした。けっこうイレギュラーで、公演が4回くらいしかなくて。OPでカップルの役をやらせてもらって、「え~とこやなあ」というセリフに、「これが新喜劇や!」と思いながら(笑)。NGKは今週が初めてです。
(やっぱりNGKは違いますか?)
そうですねえ。NGKはちょっと特別ですね、やっぱり。圧いうか、広さというよりも、圧ですね。お客さんの圧もそうですし、セットとかも違いますし、最初の方は押され気味やったと思います。大きさは同じくらいのクールジャパンパークのwwホールで新喜劇をやらせてもらった時には、あまり感じなかったんですけど。NGKは、段違いにすごい圧を感じます。コンビ時代も何回かNGKはあったんですけど、違いますね、新喜劇でのNGKは。
(1週間やってみていかがでした?)
やっぱり気持ちいいですね。今週、警官の代演をいただいたんです。めちゃめちゃワクワクしながら、結果、メチャクチャ緊張しましたね~はははっ(笑)1公演だけやったんで、「え~どうすんねんや」と。はははは(笑)案の定、警官の衣装を着る時に、拳銃がついたベルトが全然つけられなくて。ガッチガチになってました。

―劇団と違って新喜劇の稽古の短さも大変では?

もう、ビックリします。早すぎます、やっぱり。めちゃくちゃ早いです。警官は代演だったので、本読みすらなくて。もともとは幼稚園の先生の役で、セリフも短かったのに、警官の役は出て来てハケて、また出て来て…というのがパニックでしたね。でも最初から代演と言われてたので、めちゃくちゃチャンスだと思ってました。警官役の新名さんと桜井さんをずっと見て、イメージトレーニングはしてました。
(見て覚えるんですね。お芝居には元々興味が?)
ずっとコントをやってたので、コントってどうやったら、鍛えられるんやろ? と思った時に、コントの原点ってお芝居やなあ、お芝居の技術も身に着けといた方がいいんやろなと思って。
(お芝居の技術というのは?)
まだ、取得できてないと思うんですけど。そのキャラクターのバックボーンを考えながらとか、こういうことをしゃべりかけられた時の反応の、感情の温度であったりとか。そういうのをずっと考えないといけない。そこがすごい。考えたことなかったので。
(新喜劇にも通じますね)
そうですね。新喜劇もお芝居で、ちゃんとストーリーがあるんで、締めるところは締めて。今のところ、全く出し切れてないですけど…。まだ新喜劇になじめてなくて。自分でも思うんですけど、声の大きさとトーンが合ってないのかな、と。ピンの時は僕1人、コンビの時は2人だけなので、新喜劇というお芝居の中で突っ込む時の声が大きすぎるとか。新喜劇独特のツッコミってあるじゃないですか。それがまだわかってない、というか…。僕は芸歴9年目なので、試されているのかなあ、と。「こいつ、どのくらい出来るんや?」っていう感じで見られてる気がするんで…。

―先輩方とはよくしゃべられますか?

はい、積極的にしゃべろうと思って、いろいろしゃべらせてもらってます。
(印象に残っている話は?)
信濃さんがすごく熱い方やなというか。「ひたすら努力する奴が残っていく」と言ってくださって。印象的でしたね。お笑いにも熱くて。新喜劇への思いを感じました。
(新喜劇の楽屋はどうですか?)
独特ですね~。やっと楽日で慣れてきましたけど。すごい独特ですね~。U字型の鏡張りで、皆さん自分の場所に座ってはるので、しゃべる時とか、鏡越しにしゃべってたり。そんなこと、コンビではなかったんで。
(先輩のお世話とかもありますよね)
次の公演の時間を先輩に言わなあかんのは意外でしたね。コンビの時は勝手に散って、勝手に集まってるんで。1日何回「よろしくお願いします」って言うんやろ、というのも思いましたね。楽屋を出る時も、始まる前にも言うので。あと楽屋でご飯食べるの、気ぃ使いますね。朝、カレーパン買ってきた日があったんですよ。その時は1人で階段に行きましたね。朝マック買った時も非常階段に行きました。

―伊丹さんにとって新喜劇とは?

ザ・吉本というか、吉本の看板というイメージですね。それは入る前からも、入った後もそうですね。大きな家族というイメージもありますね。吉本と言ったら新喜劇、その中に僕が入って、子どもの頃から見てた方と同じ舞台に立って…。
(新喜劇の中で目指しているのは?)
僕は、目指されるような座員になりたくて。もちろん、入ったからには、おこがましいですけど、座長目指して、やってます。僕はツッコミしか出来ないので、回しに憧れがあるというか。これから闘って行かないといけない、とは思うんです。これが、1、2年目やったらいいんでしょうが、9年目なんで。何とかね。あははははは(笑)
(回しの目標は?)
今週はやっぱり清水さんはすごいなあと思って、ずうっと見てました。信濃さんも川畑さんもそうですが、それぞれ違って、それぞれすごいと思うんですけど。清水さんは元々コンビからやってらして、僕ぐらいの歳で(新喜劇に)入ってはるので。余計に清水さんを意識しますね。信濃さんも元々コンビから入って、早くに馴染んで、新喜劇を背負ってやってらっしゃるので。そこはすごい意識はしてます。
(早く抜きたいと?)
そうですね。抜かないと座長になれないですね。自分が一番楽しくてワクワクしながらやれるのがツッコミなんで。
(これからツッコミの場がどんどん増えるといいですね)
今、まだ試されていような気がするので、一日一日がオーディションやと思ってます。やるからには頑張ります。

―プライベートでハマっていることや趣味は?

僕、「ONE PIECE」が大好きで。人生で尊敬してるのが、モンキー・D・ルフィなので…はははは(笑)。
(あはははは)
ド世代なので小学校からですね。アニメでアーロン編をやってた時からハマって。それから漫画を集めて。
(小学校からだと20年くらい?)
そうですね。ずっと好きですね。僕の人生の教科書みたいなもんで。落ち込んだ時は「ONE PIECE」を見るか、モーニング娘。を聞くか、ですね。夢がいくつかあるんですけど、そのひとつが「安倍なつみさんと共演する」っていう。あとは「めちゃイケ」(フジテレビ)の赤DVDというのがあるんですけど、それを見て「真剣にアホしてるな~」って。ほかに個人的な趣味で言うと、僕、映画もすごく好きなので。映画のパンフレットは見に行ったら全部買ってて。300冊くらいあります。あとフライヤーとかも3000枚くらいあって、それを楽しんでます。
(何回も見てる映画は?)
「ホーム・アローン」と「トイ・ストーリー」は何回も見てますね。あと「アラジン」が好きですね。絶対見てますね。

2019年11月25日談

プロフィール

1988年9月20日兵庫県西宮市出身。
NSC33期生。
2019年金の卵11個目。

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