MBS(毎日放送)

第109回 生瀬行人
(いくせ・ゆきと)

1つのことだったら、けっこう集中出来るんですよ。

―NSC40期ですが、もともとお笑いはお好きでしたか?

お笑いは好きでしたけど、お笑い芸人になろうという気はなかったです。中学校の頃に1回、ダウンタウンさんにハマって、芸人もいいなと思ったことはあったんですけど、だんだん変わって行きましたね。
(子どもの頃の憧れは?)
小学校の1年生からボクシングをやっていたので、世界チャンピオンとか。あと、旅とかが好きだったので、世界一周旅行とかに憧れてましたね。
(スポーツは得意な方?)
でも、球技は得意じゃなかったです。僕、体力とかフィジカル系は強いんですが、球技はちょっと無理で(笑)。ボクシングのほかに、剣道とかカンフーとかもやったんですけど、全部1人競技じゃないですか。チームプレーが出来てなくて。
(あはははは~)
サッカーのボールをもらったら、1人で全部やりたくなっちゃうタイプで。上手かったらいいんですが、下手なんで、結果、ボールを取られて終っちゃうんです。

―NSCに入られたきっかけは?

受験勉強が嫌すぎて…。
(勉強はイマイチ?)
勉強は全然出来なくて、ダメダメやったんです。一応、受けようとした大学があったんですけど、普通の大学へ行って、普通のサラリーマンになるよりは、若いうちにNSCへ行って、ヘンな人とか、おもろい人とか見たいと思って。親に言ったら、OKって言われたんですけど、「大学は行ってくれ」ということで、NSCに行きながら、夜間制の大学に1年間通ってましたね。僕、出身が京都なんですけど、朝から大阪のNSCへ行って、大学は京都やったんで、NSCが終わってから大学へ行くっていう。すごい充実した1年間でした。

―NSCではどんなことを?

コンビ組んだり、トリオ組んだりとか、してました。すぐに(上に)行けると思ってたんですけど、大学生活と両立が出来てなくて、実績は残せてなかったんです。1回、女の子2人と男1人でトリオを組んだんですよ。
(珍しい組み合わせですね)
なんかオモロイなと思って。その時は、ライブで一瞬だけ上に行ったというか、オーディションに出られる資格みたいなのを取りましたけど、それくらいなんで。全然ちゃんとはっちゃけられなかったという、悔いはありましたね。それで、NSC卒業と同時に、新喜劇の金の卵のオーディションを受けたんです。

―新喜劇を受けようと思ったきっかけは?

NSCで相方がなかなか見つかってなくて。解散とか一杯してたんで、「どうしよう?」と考えてた時に、当時のNSC担当の方に相談して、「新喜劇に行こうとしてるんですけど」と打ち明けたら、その方が以前、新喜劇のマネージャーをされてた方で、「行けるんちゃうん?」と言ってもらって。お芝居も好きやったんで、オーディションを受けてみました。
(新喜劇は子どもの頃から見られてました?)
そうですね。見てたんですけど、オクレ師匠が宙吊りで出て来られた話が、僕の記憶では最後です。で、NSCで祇園花月のビラ配りとかしに行ったんですけど、それが終わったら、勉強のために観覧出来るんですよ。その時に新喜劇を見て、「久しぶりに見た~!」っていう感じで。当時はまさか1年後に自分がそこに入るとは思ってなかったです。

―オーディションはいかがでしたか?

僕自身、そんなキャラとかなかったんで、特技披露は困ったんですけど。とりあえず、ボクシングやってたんで、シャドーボクシングをしながら、エルモのものまねみたいなことをやりました。
(エルモって、あの…)
セサミストリートの。ものまねやりながら、シャドーボクシングするっていう、意味の分からんことをやって、「絶対落ちたわ~」と思って。ふふふ(笑)。でも、ありがたいことに受からせてもらって。
(お芝居の審査は?)
演劇は、それまでにもやる機会があって。僕、小学校5年生から京都市少年合唱団とか入ってたんですが、その時に歌いながら、ちょっと(演劇を)やってたり。高校の時にも、僕の学校には演劇部がなかったんですけど、中学校の同級生が他の高校の演劇部で、いろんな学校の演劇部が集まって、「お芝居しよう!」みたいなのがあって。僕もそこに入って、なぜか主人公をやらせてもらったんです。そんな経験もあって、大丈夫だろうと思ったんです。オーディションの時は自分ではバッチリやと思ったんですけど、その後、新喜劇に出た時に自分で芝居を確認したら、ひどいもんだと思いましたね。

―新喜劇に入っていかがでした?

まさか新喜劇に入れると思ってなかったんですが、NSCを卒業して、すぐに新喜劇に行くことになって、それで大学は中退したんです。
(ご両親は?)
新喜劇やったらええやろ、ちゃんとやりや、みたいな感じでした。実際、入ってみると、NSC時代に考えていたのとは違うな、と思いました。NSCの頃は、漫才師とかは自分たちでネタを作って、ライブとかで勝ち上がって舞台に行かなくちゃいけない、そういうシステムだと思ってたんですけど、新喜劇は安定というか。簡単にNGKとか祇園花月に立つことが出来る、言ってみたらお笑いの公務員やと思ってたんですよ。そんなイメージやったんですけど、いざ入ってみると、待ってるだけじゃ、仕事は来ない世界やな、と。何かどんどんモーション起こさないと、呼んでもらえない。呼んでもらったとしても、下手なままで、結局売れないということに気づいて、甘い世界じゃないなと改めて思いました。

―初舞台は覚えてますか?

金の卵のデビューライブが終わってからの10月、NGKのすっちー座長の週(「すっちーの、カゲッシーで村おこっしー」)でした。村に来たリポーターの声を拾う音声さんの役で、長いマイクを掲げて、ほぼほぼ出て来るだけの役でしたね。全然セリフもないし、出て来るだけなんで、緊張しなかったんですけど、同期の横地はセリフがあったんですよ。それで、「悔しいな~」と。「俺も出来るで!」と思いながら。

―印象に残っている舞台は?

祇園花月のすっちー座長の時に、初めて服を脱いだんですけど…。
(服を脱いだ?)
ボクシングをやってたんで、ちょっと身体がいいくらいやったんですけど。今どきの草食系男子が、女の子を守るために、服を脱いで、ボクシングで悪い奴をビビらせる役やったんです。その後、営業でも使われるようになりまして、何回かやらせてもらいました。
(なんか、ぴったりの役ですね)
今思えば、すごいありがたくて。やりやすかった役ですね。
(さすが、すっちー座長ですね。服の下まで見てますね)
「いい身体してるやん!」から始まって、そっからでしたね。
(座員の中では、もりすけさんもいい身体してますよね)
あ~そうですね。思い出したんですけど、祇園花月が女子中高生で貸切になったことがあって。その時、もりすけさんと好きな女の子を取り合う役で、僕が舞台で服脱いだら、もう「キャア~!!」みたいな歓声で、「俺、一瞬、嵐になったんか!?」と思うくらい。そこに、もりすけさんが上手から「ちょっと待った!」って乱入して来て。また、女の子たちが「キャ~!」「何か始まる?」みたいな。それがすごい印象的で。めっちゃ人気者になったな~と思って。
(舞台で悔しい思いとかは?)
祇園花月で川畑さんの座長の時に、簡単なセリフが全然喋れなかったんです。喋れなくて悔しかった思い出があります。その頃、「僕、すっちー座長みたいになりたいんです」って言ってたんですけど、舞台上で川畑さんから「すっちー座長目指してるらしいけど、あんなんなれるか!」と言われて。悔しかったですね。

―先輩からのアドバイスとかは?

この前、先輩と2人でオープニングやらせてもらって。いろいろとしごかれました。
(しごかれた!?)
それまでオープニングの出番は少ない方で、大抵カップルで出て来て、結局、僕がフリに使われるというか。ブサイクな役の人と比べられて、ツッコまれるという形だったんで、オープニングの芝居を全然考えてなかったな、と。川畑さんから「普段から考えて、いつでも出せるくらいのストック持っとかなアカン」と言われてたんですけど、確かにその通りやな、と思いましたね。
(どんなことを言われたんですか?)
お芝居の入り口と出口というか、お芝居の流れからネタに入って、ちゃんとしっかりお芝居に戻す、っていうのが大事なので。それで、お客さんを最短の時間でどれだけ笑わせられるかというのが、オープニングだと教えてもらって。聞いてたら簡単なんですけど、考えたら難しいなと思って。それは学びましたね。
(オープニングって大事ですよね~)
そうなんですよ。僕は服を脱ぐネタを考えよう、考えようとしてて。
(ボケとかは?)
考えたりするんですけど、僕みたいなのがギャグをやったら大学生がちょけてる(ふざけてる)だけにしか見えないかな、と思って。そこは難しいですよね。筋肉ボケは、なかやまきんに君さんとかいらっしゃいますし。僕はボディビルダーじゃなくて、ボディメイキングの方なんで、健康な身体で、細マッチョ。今はこれ以上、デカくしたくないな~っていうくらい理想の身体なんです。オープニングでも脱いだら、ウケはするんですけど、そっからがダメですね。あんまり肉体で打ち出しても、そんなにウケへんな、と。また違う方向で考えて行かないと。

―ご自身のこれからの課題は?

とりあえずは大きな声出そうというのを心がけてます。声の大きい人はマジでうらやましいです。僕も声は大きい方やと思うんですけど。萎縮したら声が小さくなって。喋るのも早い方なんで、「全然聞こえへん」みたいになっちゃうんですよ。かといって、違う声を出しずぎると、芝居芝居して、「学芸会みたいや」と言われるんで。そこをどういいバランスで調整できるか、それがすごい課題です。4年目で「声が小さい」と言われたら、もう、「何してんねん!」っていう話なんで。声を大きく出して、しっかりと滑舌よく喋れるようになるのが目標ですかね。
(緊張するタイプですか?)
メッチャ緊張してますね。普段は緊張しないんですけど、舞台とか先輩の前に出ると、萎縮してしまう自分がいるんですよ。これは慣れていかんと、変えていかんなと思うんですけど。

―お世話になっている先輩は?

皆さんにお世話になっているんですけど。この人、というのはもう、辞められた方なんです。1個先輩なんですけど野下敏規さんっていう、かわいらしい方がいて。新喜劇は同期なんですけど、NSCでは先輩なんで、僕、初めて先輩としていろいろ教えてもらったんです。「ずっとついていきま~す」って言ってたんですけど、辞められちゃって。置いていかれました(笑)。今は新型コロナもあって、先輩には全然連れて行ってもらえないし。僕は小さい時からあんまり群れたり出来なかったんで、いろんなところに(1人で)行けるタイプやったんです。なんで、今は結局1人みたいな感じかな、って。

―新喜劇はチームプレーですが、その辺はどうですか?

そうなんです。新喜劇ってすごいチームプレーなんですよ。こっからどう、チームプレーが出来るようになるかっていうのも課題ですね。今は先輩ばっかりなんで、先輩についていけば大丈夫みたいな感じなんで。いずれ、下を引っ張る立場になってくると思うんですけど、取りあえず、甘えながら、勉強させてもらって、チームプレーを出来るようになって行きたいな、と。
(チームプレーをやるために、自分で大事にしたいと思うことは?)
そうですね。まず、積極的に先輩と喋って行こうと。コミュニケーション能力はあるんで、内容はともかく、喋りかけていろいろと教えてもらったりとか、人間関係を作って行けたらと思ってます。

―将来的に、やってみたい役どころは?

一応、計画的には、回しをやりたいなと思ってて。僕は見た目がブサイクな役とか出来ないんで、回しとかの方が役に入りやすいなと思って、回しの勉強はしてるんですけど。全然、出来てないですけど(笑)。この前、YouTubeの「にいなチャンネル」で、新名徹郎さんと清水啓之さんが、若手座員のドラフト企画をやってらして。お2人とも僕の名前を出してもらったんですよ。そこで、「これからツッコミとか出来たり、いじられた時に先輩とかの返しが出来たら、さらに成長していく」って言っていただいたんです。回しが出来るようになれば、次にボケをどんどん出来るようになって、夢は大きく、二刀流で頑張りたいなと思ってます。
(回しの先輩で憧れは?)
回しの方はほとんど憧れてますけど。内場さんが大きな目標というか。ほかに清水さんの頭の回転の速さだとか、信濃さんや吉田裕さんのツッコミはやっぱり凄いなと思いますね。目指したいのは内場さんなんですけど。人として、男としてもカッコいいのがすっちーさんなんで。全てにおいて、すっちーさん、スゴいと思うんで、すっちー座長を目指します。
(まずは舞台をたくさん踏んで…)
踏みまくりたいです(笑)。メンタルは強い方なんで、失敗しまくって、ボコボコになっても、また頑張ります。
(ボクシング精神で頑張ってください!)

―今ハマっていることや趣味は?

料理です(笑)。いえ、筋トレです(笑)。料理も筋トレの一部やと思ってるんで。
(なるほど! 今夏、「サマー・スタイル・アワード2021大阪」の2部門で優勝されましたが、以前から大会に?)
いえ、出てなかったですね。初めてです。
(エントリーのきっかけは?)
新喜劇で1座員1企画というがあって、新喜劇芸人からファンをつけていこうというので、いろんな企画、YouTubeやったりとか、TikTokやったりとか、みんな何か始めたんです。僕は最初、プロボクシングのライセンス取ろうと思ったんですけど、ボクシングに精通してる社員さんがいらして、その方に電話でお話させていただいたら、ひと言目に「顔、変わるで」って言われて。
(あ~あ)
顔変わるのは困るな~と思ったんで(笑)。筋トレは2年前くらいからちょっとだけやってたので、大会に出てみようかな、と。出ることを目標にやりましたね。
(健康的で逞しく、スタイルの良さを競う大会、短期間で絞られました)
初めて減量というのをやって、もう、しんどかったですね。丁度、新型コロナで舞台もあんまりなかったんですが、大会の2週間前にすっちーさんの営業があって。僕が服を脱ぐ役で使ってもらったんですけど、1年ぶりで身体がムチャクチャ変わってたんです。すっちーさんに「身体、絞れてますよ~」って言ったら、「仕上がってんの?」と聞かれて、脱いだ時に「どこがや!」と言いたかったと思うんですけど、ホンマに仕上がり過ぎてて、引いてはりました。
(ははは~仕上がり過ぎて引かれる…)
はい、「出来すぎはアカンわ~」って(笑)

―大会に出られて、ご自身の中で何か変わりました?

やっぱり、ちょっと自信がついたのと、新喜劇の先輩方に出来るところを見せられたので、良かったかな、という。ひとつ話題が出来たので、それで先輩方にも覚えていただけたりするんで。けっこう、ダイエットの話とか、聞かれたりします。
(減量がメインで、運動面ではどんなことを?)
僕、減量期だけ、朝5時に起きてたんです。夜11時に寝る生活をずっとしてて。朝40分運動して、夜もトレーニングした後に運動を40分くらいして。1日2回ジムに行ったりとかしてました。
(それだけ集中出来るのはすごいですね)
1個のことやったらけっこう集中出来るんですよ。ホンマに、ほかのことを捨ててまで出来るんで。その力はあるんで、あとは新喜劇にどれだけその力を注げるかっていう話なんですけど。
(この先、ほかにやってみたいことは?)
取りあえず、勉強はしたいな、と。頭の回転とか速くないとダメやと思ってるんで。今は、本を読みまくって、知識をつけて。ちょっと遅いですけど、30歳くらいにはまともな大人になってるくらいに勉強したいなと思います。実は新喜劇以外でもやりたいことがいっぱいあるんです。キッチンカーでハンバーガーショップやったりとか。
(えっ!?)
カフェとか経営したりとか(笑)。もちろん、新喜劇が中心ですけど。出番がない時も、ずっと仕事しときたいな、と思って。もうちょっと新喜劇だけでちゃんと頑張らなきゃダメなんですけど。でも、筋トレで、ホンマにやろうと思ったら出来るってことはわかってるんで、気持ちさえあれば出来ると思うんです。ま、1個ずつやって行きます。
(この先、楽しみですね。全力集中で頑張ってください)

2021年9月25日談

プロフィール

1998年11月4日京都府出身。
NSC40期生。
2018年金の卵10個目。

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