MBS(毎日放送)

第110回 新井崇史
(あらい・たかふみ)

「俺に明日はない、今日が最後の日だ!」という気持ちでやってます。

―小さい頃からお笑いは好きでしたか?

新喜劇は好きだったので、毎週土曜日は欠かさず見てました。友だちと遊びに行くのも、新喜劇を見てからで、僕だけ出遅れるくらい。新喜劇を見て元気をもらってから、次へ行くというか。ただ自分がやることは考えてなくて、見て楽しませていただくというイメージでした。新喜劇座員としての今は、自分でも何か縁があって繋がって行ったんだな、と。
(どんなご縁があって新喜劇に?)
実はアナウンサーを目指してまして…アナウンサーの長い就職試験の折り返し地点ぐらいの時に、毎週見てた新喜劇のエンディングで、「金の卵オーディションがあります」という告知を見て、僕の大好きな新喜劇に入れるチャンスがあるのであれば、これも就職活動の一環だと思って、受けてみるもいいんじゃないかと思って。そしたらアナウンサーの試験よりも先に合格をいただけて、入らせていただきました。

―アナウンサーになろうと思ったきっかけは?

もともとスポーツが大好きで、小学校の頃はずっと草野球をしてて、中学生と高校生の時は野球部に所属してました。今も毎週日曜日は、バッティングセンターへ行ってます。
(アナウンサーのなかでも、野球の実況アナを?)
そうですね、実況だけじゃなくて試合のヒーローインタビューや現地に行って取材したり出来るような。そんなことに対して興味がありましたね。子どもの頃は、プロ野球選手になりたいという夢を抱いてたんです。
(憧れの選手は?)
城島健司選手に憧れてました。小学生の頃に見てた時はダイエーホークス。ソフトバンクになっても見に行ってました。2009年のWBCに城島選手が出た時に、日本が優勝したんですね。2大会連続優勝で、MVPが松坂大輔選手だったんです。その影響もあって、城島選手に受けてもらえる偉大なピッチャーになろうと、中学からピッチャーを志しました。プロ野球選手になりたいという気持ちと同時に、選手の活躍を伝える仕事に就きたいなと思って、プロ野球選手になれなかったら、アナウンサーになりたい、と。現役の時はそんなに学力がなかったんで、予備校に行って、1浪の時に同志社大学に入ったらアナウンサーの道に通じるのではないかと思って、同志社大学を目指して、2浪させてもらったんです。親にも負担をかけてしまったので、専門的な学校へは行かず、独学でアナウンサーの技術を探ってました。就職活動では、東京・大阪のキー局、準キー局は全部受けました。書類で落ちたところも、現在進行中のところもありました。

―ギャグも演技経験もないのに、オーディションはどうやって?

1次の書類審査で通ると思ってなかったので、まず「通ったんや!」というのが驚きでした。2次審査の特技披露の時に、僕、SMAPが好きなので、人の心に響くのは、やっぱり歌じゃないかと思って、「STAY」という曲を歌わせていただいたんです。審査員の琴線に触れたらいいな~と思って。それが何故か思いのほか、ウケて…。
(えっ!? ウケた? どんなギャグもウケない審査なのに…)
そうなんですよ。大笑いというところまでは行かないですけど、なんかクスクス笑っていらっしゃって(笑)。「あれ!? 思わぬ方向へ行ったな」と。たぶん、必死に歌っているところを面白く滑稽に感じられたのか、ともかく笑っていただいたので、心を動かせたのかなあ、と。3次審査はお芝居だったんですけど、それも何故か笑っていただいて…。
(どんな役を?)
正直、あんまり覚えていなくて。7通りくらいあって、頭には入れたんですけど、終わったら何をやってたんかな、っていう(笑)。
(全力投球的なところが良かったんですね)

―新喜劇に行くという決断をされたのは?

僕の就活のテーマは新井崇史という人間を1番評価してくれる企業に行きたい、だったんです。もちろん、アナウンサーになりたいというのはありましたが、受けさせていただいた手前、合格をいただいたら、こんな素人を迎え入れてくださった恩義じゃないですけど、新喜劇に身を投じてみようと。それで、もし、ダメと言われたら、又、アナウンサーを目指すということでもいいんじゃないかと。今しかできないことをしようというのがあったので、すんなり決断しました。
(ご両親は何か言われました?)
アナウンサーになりたいと言っていたので、「えーっ!?」というのはあったんですけど、「まあ、合格させてもらったんやから、やるだけやってみ」っていう感じでした。親も大阪なんで、新喜劇に息子が行くんやったら、応援してあげようという感じで、反対とかは全くなかったです。

―初舞台は覚えてますか?

覚えてます。西梅田劇場(2019年8月閉館)の川畑座長の週でした。これが2018年3月6日~12日の公演だったんですけど…。
(あははは~細かいですね)
実は台本をまだ持ってまして(笑)。ちょうど僕の誕生日が7日だったんですよ。そんなことは意識してないと思うんですけど、川畑座長が僕の誕生日プレゼントに用意してくださった初舞台なのかな~と(笑)。
(緊張されました?)
え~と、緊張より楽しさで勝っちゃうところがあって…あんまり緊張は感じないタイプです。
(NGKには?)
この後にすっちーさんの座長週に犯人役で出させていただいて、走って逃げて、青野敏行さんに捕まえられて、「くっそ~」と悔しがる芝居して。それは鮮明に覚えてます。その後、酒井藍座長の週にも出させてもらいました。京都の大学出身なのに、祇園花月は1回も立ったことがなくて。また縁があれば祇園花月にも出させてもらえたらなと思います。

―新喜劇に入ってみて、いかがでした?

最初は、戸惑いよりも楽しみの方が大きかったかも知れないです。舞台に立ってみると、演じる上で役柄の気持ちにならないといけないというか、役柄になりきらないとプロの演技ではないのかな、というのが難しくて。役柄を落とし込めてないよと、先輩方にご指導賜ったこともあるんですけど。役に憑依するじゃないですけど、この場面に適した気持ちだったり、言葉だったりが、演じる上では一番重要なことなのかなと思ってます。
(どの先輩からのアドバイスが印象に残ってますか?)
座長のすっちーさんです。緊迫した場面で、僕自身の顔がちょっと笑い顔だったんです。緊迫した場面だったら、厳しい顔になったりするのもセリフに乗って来るから、そういうところを付けた方がいいよ、と。
(さすが、すっちーさん。端から端まで見られてますね)
周りに目配り、気配り出来る方なんで。座長として凄い先輩です。

―印象に残っている舞台は?

酒井藍さんの座長週の時に、警察官の役で出させていただいたんですけど、その時にインフォマーシャルというのを撮らせていただいて。その舞台は印象に残ってます。あと、「若手ライブ まだまだ、青い」という新喜劇の若手の舞台に、3回出させていただいて、その時に、ご一緒した先輩の小西武蔵さんや吉岡友見さん方と、いろんな案を出し合って、芝居を合わせた時に、セリフを覚えることにフォーカスするんじゃなくて、そのセリフを自分自身の言葉として言うのが大事だから、一言一句きっちり覚える必要はないんだよ、自分の中に自然に落とし込むことが出来るんだったら、丸々変えてもいいよ、と。真面目に一言一句覚えなあかんと思ってたんですが、用意されたセリフと内容が違っていなければ、自分の言い回しでも、怒られることはないんだな、というところに気づいたりしました。

―新喜劇をやって行く上での悩みやモチベーションは?

今、舞台に立つ機会が少なくなっているので、何か僕に足りないところがあるから呼ばれないんだなというところがあって。最近は「よしもと新喜劇NEXT」(MBS)に呼んでいただくのがすごいモチベーションになってます。「俺に明日はない、今日が最後の日だ!」というぐらいの気持ちで、1回1回全力でやってます。1回で爪痕を残さないと、次に呼んでもらえないんじゃないかという気持ちで。この番組で活躍して、舞台に還元したり、飛躍のきっかけになればいいなと思うんですけど。番組には、ゲストの方もいらっしゃるので、同じ同志社大学出身の霜降り明星の粗品さんや、レイザーラモンHGさんと大学つながりが話のきっかけになったりとか。そんなきっかけで、憧れの先輩と絡んだり出来るのが、自分の中では自信になったり、活力になったりしてます。

―ご自身のアピールポイントは?

とにかく物おじせず、明るく元気というか。僕としてはそれしかない(笑)。僕、ずっと完璧主義だったんですよ。あの時こうやってればとか、けっこう後悔して、1回1回反省してしまうタイプだったんです。前向きに考えようとしても、やっぱりどっかで、「うあ~こうしておけば」って。それは気持ちが後退するだけなので、やめようと。舞台に呼ばれなくても、気落ちするんじゃなくて、前向きになれるのが取り柄です。とにかく、ひたむきに一生懸命頑張るだけだ、と。
(何か武器は? 足がメッチャ速いとか)
う~ん、普通よりは速いかもしれないです。でも、「新喜劇NEXT」のロケで、元陸上部だった大島和久さんと走ったら、やっぱり特有の走り方というか、めちゃめちゃバネがあるんですよ。バネが凄いから、全然速くて。上には上がいるな、と思って。一番自信あるのは、動体視力がいいことじゃないかな?
(動体視力? 舞台では見せにくいですねえ(笑))
そうなんですよ(笑)。野球のバッティングとかでもあれば…。

―憧れの先輩はいますか?

大島和久さんが憧れの先輩です。オーディションで「憧れの先輩は誰ですか?」と聞かれた時に「岡けんたさん」と答えたんです。「エエ声~」の。お2人に共通してるところが、出て来ただけで、その場の雰囲気が一新するというか、独特の雰囲気を醸し出すというか。すごく華やかで、カッコいいな~と思ってて。そういう奇をてらった役じゃないですけど、僕も「コイツが出て来たぞ、何かが始まる」とお客さんが食いついてくれるような演技が出来ればいいなと思います。特殊なキャラクターで出られればうれしいな、と。やってみたいキャラクターはあるんですけど。信濃さんとか吉田裕さんみたいな、バシッとしたツッコミは自分にはまだ出来ないですが。どうしても「ツッコまなきゃいけない」と思ってツッコむので。
(ツッコミもボケも間合いが大事ですよね)
それこそ場数を踏んで、わかることもあると思うんですけど。ボケとツッコミの調和が取れてなかったら、ツッコミだけが独立してしまう。頭では分かってても、実際は難しいなと。

―お世話になっている先輩は?

入澤弘喜さんですね。金の卵9個目で一緒に入団したんですけど、入澤さんはNSC39期なので、いろいろとお世話になってるんです。若手ライブが終わった後で、僕が終電を逃すと漫画喫茶に泊らないといけない時に、「泊るとこないやろ? うちに来るか?」と優しく言ってくださったり。いろんな意味でお世話になってる先輩ですね。一緒に草野球やったり、遊びに行ったり、一番仲いいって言ったら、入澤さんですね。実は今年6月に、入澤さんと玉置洋行さんと野崎塁くんと、4人で野球チームを立ち上げたんです。永田良輔さんもマネージャーで加わって、5人で「幕の内ガリバーズ」っていう。
(え!? 幕の内ガリバーズ!?)
僕が考えたチーム名でして。みんなで案を出し合って決めたんです。みんなの呼び方も考えて、永田さんは何故か「おでんの良太」と呼ばれてて。
(おでんの良太?)
よく分からないですけど(笑)。僕はピッチャーなんで、「エースの渚」。入澤さんは「扇の要」、玉置さんは普通に「キャプテン」。このチームの創始者が玉置さんなんで。最後に野崎君が「レジェンド・ベーダ―」。
(あはははは~何でそのネーミング?って思いますけど、楽しそう)
いずれ、「幕の内ガリバーズ」が9人になったら試合しようということで。「今別府ジャパン」と対決出来たらいいな、と思います。

―朝ドラ「カムカムエヴリバディ」にも野球で出られてましたね。

ありがとうございます! そうなんですよ。エキストラとはいえ、出演させていただくということがありがたいことで。先輩方、若井みどり師匠や玉置さんも出てらして。玉置さんは、足だけの出演だったみたいで。
(えっ、足だけ!?ふふふふ)
ちょっとよくわからないんですけど。玉置さんに「カムカムエヴリバディに出させていただきます」、という話をしたら、「俺も出るよ。足だけの出演やけどな」って(笑)。
(あはははは~気になりますね)
諸先輩方と少しでも同じ空間にいられるというは、ちょっとした自信になるので、エキストラに満足せず、役をもらえるように頑張りたいと思います。

―今ハマっていることや趣味は?

一番ハマってることと言えば、アニメとか漫画なんです。少年ジャンプにハマっている人は多いと思うんですけど、僕、独特のことでハマってまして。オリジナルグッズが当たる一番くじというのがあるんですよ。
(一番くじ!?)
何かというと、コンビニとかドラッグストアとかでくじを引けるんですね。箱の中に、80回くらい引けるカードがあって、引いてめくったら、A賞とかの上位賞はフィギュアなんですよ。下位賞はタオルとかいろんなものがあったり。僕はフィギュアを集めるのに、けっこう今、ハマってます。「ワンピース」、「鬼滅の刃」、「僕のヒーローアカデミア」が、僕の中ではジャンプの3本柱。くじは1回あたり680円だったり、ちょっと高いワンピースの一番くじだったら、850円。それを10回とかするんです。
(え~っ!?)
さらにラストワン賞というのもありまして、くじの一番最後を引くと自動的にもらえるフィギュアがあって。そのためだけに、残りくじを全部引く、っていう。
(うわあぁ~大人買い! フィギュアはどれだけ集めたんですか?)
かれこれ、家に60体くらいはあるんじゃないかな。「鬼滅の刃」だけでも10体~20体くらい。新喜劇の中でも一番くじのフィギュアを集める方はあんまりいないんじゃないかな~と。引いたことはあっても、たぶん、ここまで沼に入ってないんちゃうかな。
(あはははは~
一番くじはA賞が一番っていうわけでもないんですよ。たぶん、自分の中の一番を当ててくれ、ということやと思うんです。正直、フィギュアが当てれなかったら落ち込むじゃないですか。だけど、お気に入りのキャラクターのハンカチが欲しいという人も稀にいるんですよ。それがその人にとっての一番だったら、その人の一番くじとしては成功なんです。
(なるほど~みんなが同じ一番じゃないんですね)
だと、僕は思ってます。ラストワン賞が一番の人もいるだろうし。
(ぜひ、新井さんも新喜劇の一番くじになってください)
新喜劇のファンの方にとっての一番になれるように(笑)。今、パッと思いついたんですけど、新喜劇座員100人以上いらっしゃるので、「新喜劇座員を一番くじにしてみました!」とか(笑)。カードを引いて、ビリビリっと破って、例えばすっちーさんが出て、「よっしゃ~!」、小籔さん「よっしゃ~!」になると思うんですけど、新井を引いた時に「う~ん」ってなるんじゃなくて、「よっしゃ~!」と思ってもらえるように。そういうグッズがもし、出たら、なんですけど。
(それ、いいじゃないですか!)
でもフィギュアとかは採算取れないんで…。
(キーホルダーとか?)
酒井藍さん、似顔絵メッチャ上手いんですよ。
(描いてもらって、おみくじみたいな形だったら、紙で出来るし。引いて、「うわっ、新井だ~!」とか(笑))
そうそう、そうそう、「新井だ~こんなんいらね~」って捨てられるよりは、「うわっ、レアやな~よっしゃ!」てなった方が。はっはっははは~(爆笑)。
(あはははは~おみくじだから、その辺に結んで…(笑))
「よっしゃ~!」ってなれるように頑張ります!

2021年11月14日談

プロフィール

1994年3月7日大阪府和泉市出身。
2017年金の卵9個目。

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