平成以降最悪となる36人の犠牲者を出した、京都アニメーション放火殺人事件。143日間の長期に及ぶ裁判に、あす判決が言い渡される。あの日から4年以上経過した2023年9月から京都地裁で始まった公判。
12月7日は22回目、結審の日を迎えていた。
(検察官)「殺人、殺人未遂事件として日本の刑事裁判史上、突出して多い被害者数と言えます。まさに地獄さながらの状況にさらされた恐怖や絶望感は筆舌に尽くしがたく、亡くなった無念さは察するに余りあります。」
検察側は、「被告の筋違いの恨みによる類例なき凄惨な大量放火殺人事件」と指摘した。「妄想の影響は限定的で極刑を回避すべき事情はない」として死刑を求刑した。
弁護側「事件を起こしたのは『ナンバーツー』と京アニへの反撃」
京都アニメーションの第一スタジオを放火し、社員36人を殺害、32人を負傷させた罪に問われた青葉真司被告(45)。最大の争点は『刑事責任能力』。裁判で青葉被告は、事件の動機やいきさつをこう述べてきた。
(青葉真司被告)「京アニに小説を落とされたり、パクられたりされて根に持っていた。闇の人物『ナンバーツー』に、応募した小説を落選させられた」
青葉被告は、闇の人物『ナンバーツー』とは、「ハリウッドや官僚などに人脈があるフィクサー」だと主張。弁護側も「事件を起こしたのは『ナンバーツー』と京アニへの反撃だった」とした。そして犯行当時は「心神喪失」、善悪を判断し、行動を制御する能力が失われた状態だったとして、無罪を求めていた。
2人の医師 鑑定の判断も分かれている
青葉被告の妄想をめぐっては、2人の医師が法廷に立った。
起訴前に鑑定した医師は「動機の形成には影響したが、犯行自体には影響しなかった」と指摘した。
一方、起訴後に鑑定した医師は「重度の妄想性障害から被告は犯行を決意するに至った」と述べ、見解が大きく分かれていた。
遺族らが法廷で訴えた「思い」
そして裁判では、社員の遺族や、生き残った社員らが意見陳述で、切実な思いを自ら訴えてきた。
▽兼尾結実さんの母親「被告人には一番重い死刑を望みます。娘に『あなたの命は犯人の命より軽んじられることはなかったよ』と報告したいのです」
▽京都アニメーションの男性社員「青葉真司!聞いているのか!色々な人たちの力によって、あなたはまだ生きている!生きたくても生きられなかった人もいるのに、あなたはまだ生きているんだよ!その意味を、よく考えてください!」
そして、結審の日、寺脇(池田)晶子さんの夫も、裁判員らに強い口調でこう訴えた。
「判決は、12歳の息子が聞いて理解できるような内容であってほしいです。晶子が受け入れられる判決を仏前に報告できるよう、強く、強く望んでいます」
一方、弁護側は最終弁論で、心神喪失で無罪または心神耗弱で刑を減軽すべきと改めて主張。
最後に青葉被告はこう述べた。
(青葉真司被告)「この場において付け加えて話すということはありません」
注目の判決は、あす午前10時半から、京都地裁で言い渡される。