36人が犠牲となった京都アニメーション放火殺人事件の裁判。3回目の7日は、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)への被告人質問が行われた。

「お前ら全部知っているだろう」お前らは「警察の公安部」

まず弁護人から、警察官に確保された際のやり取りが録音された、音声記録に関する質問がされた。音声記録では、犯行の動機などを問われた青葉被告が、「お前ら全部知っているだろ」と話していた。

弁護人「警察官に『お前ら』と話していたが、『お前ら』とは?」
青葉被告「警察の公安部だと思った」
弁護人「どうして公安だと思った?」
青葉被告「火事だったので、まず最初に警察が来ることはない。救急車や消防車が先に来るはずなのに、その割には警察が来るのが早くて、疑問に思った。なので、公安の人ではないかと思った。行動が把握されているかと思った」

「立って歩くことができない」「汗腺取っ払って汗かけない」健康状態明らかに

続いて、青葉被告の身体の状態についての質問がされた。

弁護人「両手は固まっている?」
青葉被告「はい」
弁護人「今、車椅子で生活しているが、立って歩くことはできる?」
青葉被告「それはできないと思う」
弁護人「全身にやけどを負っているが、汗をかく機能は?」
青葉被告「汗腺、汗の出る組織はほとんど取っ払ってしまっているので、頭と胸のあたり以外は汗をかけない。痛覚も取っ払っていて、痛みを感じず、温度も感じにくい」

生活が次第に困窮「1円でも安い」インスタントラーメン求め生活

そして話題は、青葉被告の生い立ちに移る。

青葉被告は幼少期、両親と兄、妹との5人暮らしだったという。しかしその後、小学3年生の時に両親が離婚。父親が、兄や妹と共に青葉被告を引き取って生活をしていた。

(トラックの)運転手だった父親が無職になったことで、当時は食べるものに困っていたという青葉被告。スーパーマーケットでインスタントラーメンを買った時のことを、次のように話した。

青葉被告「1000円を持ってスーパーで50円のインスタントラーメンを探し回った。すると、1個47円の味噌ラーメンが売っているのを見つけた。家に帰ると、父に『買って来い』と言われ、買いに行った。50円の商品だと1000円で20個しか買えないが、47円だと21個買えるので、1個多く買えて父は喜んでいた」

離婚後に父の態度が一変…べランダの外に立たされ「素っ裸で立ってろ」

ところが離婚してしばらくすると、父親は徐々に、青葉被告や兄を虐対するようになったという。

青葉被告「父から正座をさせられたり、ほうきの柄で叩かれたりしていた」
弁護人「父にベランダの外に立たされたことは?」
青葉被告「『素っ裸で立ってろ』と言われた記憶がある」
弁護人「酷い言葉をかけられたことは?」
青葉被告「日常茶飯事すぎて、わからない」

京アニとの接点は紹介された「ゲーム」「やらなかったら、ハルヒも観なかったし小説も書かなかった」

話題は、定時制高校時代に移る。
当時、2学年上の先輩から京アニを知るきっかけとなるゲームを紹介されたという。

弁護人「その先輩とのエピソードは?」
青葉被告「京アニが有名になったきっかけとなった作品があって。『その前身の会社が作ったゲームが絶対に面白いから』と勧められて自分もやったという記憶がある」

青葉被告「『涼宮ハルヒの憂鬱』をアニメ化したのも京アニで。紹介されたゲームをやらなかったらハルヒも観なかったし、小説も書かなかったんじゃないか」

体育祭に向けズボンをアイロンで乾かし父親激高…体育祭行けず

さらに、青葉被告が父親に対して、「絶対的服従」に近い忠誠心を持っていたと思える経緯が明かされた。

中学時代、青葉被告は体育祭で履くズボンをアイロンで乾かしていたところ、突然、父親に怒られたと話した。

青葉被告「中学1年生の時に体育祭でズボンをアイロンで乾かしていた。すると、『何で乾燥機を使わないんだ』と怒られた。そして『体育祭に行くんじゃねぇ』と言われ、体育祭に行けなかった」
弁護人「実際に行けなかった?」
青葉被告「そう言われたら、逆らえなかった」
弁護人「アイロンで乾かしてもいいと思うが、父から理由は言われた?」
青葉被告「理由というか、もう意味もなく理不尽にやる、そこに理由はない」

兄と始めた柔道突然『盾を燃やせと言われ…』

さらに、青葉被告が柔道の大会で準優勝した際、贈呈された盾を「燃やせ」と父親から言われ、「1人で燃やした」というエピソードを話した。

弁護人「父親からは、どうしてこいと言われた?」
青葉被告「燃やしてこいと言われた」
弁護人「燃やす理由は?」
青葉被告「そこに理解を求める人間ではない。ああしろ、こうしろと、それだけ。上意下達みたいな感じ。燃やすしか方法はない」
弁護人「実際に燃やした?」
青葉被告「自分で燃やした」

青葉被告と父親との“いびつな関係”。来週以降の裁判でも、引き続き青葉被告への被告人質問が行われる予定だ。