2019年に36人が犠牲になった京都アニメーションの放火殺人事件で、殺人などの罪で起訴された青葉真司被告の裁判。午後からの裁判では、生存者のほか当時現場に駆け付けた35年の経験がある消防隊員の供述調書が読み上げられました。

 (読み上げられた消防隊員の供述調書)
 「現場に到着した時点で普通の火事ではないことは容易に分かった。昼間の火事にしてはあまりに早く燃え広がっていた。私は35年間消防隊員をしているが、これほど凄惨な事件は初めてだ。36人が亡くなるほどの火災になったのはガソリン放火によるものと考えられる。あまりに火が早く燃え移るので、防火によって防げるようなものではない」
 
 また、事件当時京都アニメーション第一スタジオの1階にいた生存者の供述調書も読み上げられました。

 (読み上げられた生存者の供述調書)
 「私はすぐに窓から外に逃げようとした。とっさに鍵を開けて出ようとしたが、バランスを崩して転ぶようにして外へ出た。そこで、自分の服や体が燃えていることに気が付いた。頭は熱く全身に痛みを感じた」

 生存者は青葉被告と鉢合わせになったといいます。

 「犯人が玄関から出てきて私と鉢合わせして、南へ逃げていった。(現場)近くの家の前に行って『目が見えません、誰かいませんか』と言っていたら、救急隊が来て『大丈夫?』と声をかけられ、ストレッチャーに乗せられて救急車に乗った段階で記憶がなくなりました」

 読み上げられた供述調書によりますと、生存者は約2か月後ベッドの上いた状態で意識が戻ったということです。また、全身にやけどを負って、複数回にわたり皮膚の移植手術を受けたということです。

 5日午前の裁判では、青葉被告は車いすに座り、上下青のジャージ姿で午前10時33分ごろ法廷に現れました。その後、認否を尋ねられると「私がしたことに間違いありません」「事件当時はそうするしかないと思っていた」「たくさんの人が亡くなるとは思っていなかった」などと述べました。

 弁護側は事実について争いはないとしたうえで、青葉被告は心神喪失だったため無罪、あるいは無罪でないとしても心神耗弱のため減軽されるべきだと主張しています。

 一方、検察側は冒頭陳述で青葉被告に完全責任能力があるとしたうえで、「筋違いの恨みによる復讐」などと指摘しました。