2019年に36人が犠牲になった京都アニメーションの放火殺人事件で、殺人などの罪で起訴された青葉真司被告の初公判。9月5日午後からの裁判では、生存者の証言などが明らかになりました。

 検察側は、事件当時1階にいて、建物から抜け出した生存者の供述調書を読み上げました。

 「私はすぐに窓から外に逃げようとした。とっさに鍵を開けて出ようとしたが、バランスを崩して転ぶようにして外へ出た。そこで、自分の服や体が燃えていることに気が付いた。頭は熱く全身に痛みを感じた。なんとか火を振り払おうとして火が消えたが、服がほとんど焼けて肌が露出した状態になった」

 生存者は青葉被告と鉢合わせになったといいます。

 「犯人が玄関から出てきて私と鉢合わせして、南へ逃げていった。(現場)近くの家の前に行って『目が見えません、誰かいませんか』と言っていたら、救急隊が来て『大丈夫?』と声をかけられ、ストレッチャーに乗せられて救急車に乗った段階で記憶がなくなりました。次に起きたら9月下旬でベッドの上でした。私は全身にやけどを負って、皮膚の移植手術を受けていたことを知った。その後も皮膚の移植手術を受け続けた」

 検察側が読み上げた供述調書によりますと、この生存者は25回もの皮膚移植手術を受けたということで、『現在も麻酔をしても体が痛く、人差し指を切断せざるを得なかったり、爪もはがれてしまったり痛みがとれない。顔もやけどで今までの自分の顔ではなくなった』ということです。

 午後からの裁判では、このほかに現場の消防隊員の供述調書も読み上げられました。

 5日午前の裁判では、青葉被告は車いすに座り、上下青のジャージ姿で午前10時33分ごろ法廷に現れました。その後、認否を尋ねられると「私がしたことに間違いありません」「事件当時はそうするしかないと思っていた」「たくさんの人が亡くなるとは思っていなかった」などと述べました。

 弁護側は事実について争いはないとしたうえで、青葉被告は心神喪失だったため無罪、あるいは無罪でないとしても心神耗弱のため減軽されるべきだと主張しています。

 一方、検察側は冒頭陳述で青葉被告に完全責任能力があるとしたうえで、「筋違いの恨みによる復讐」などと指摘しました。