びわ湖の周辺に生息する水鳥「カワウ」が、閑静な住宅街で急増。フン・臭い・鳴き声に「迷惑でしかない」と、住民たちが悩まされています。
「いい天気やのに雨と思ったら…鳥のフン」
滋賀県高島市を流れ、びわ湖につながる安曇川。下流周辺には閑静な住宅街が広がっていますが、住民を困惑させる問題が起きています。
「迷惑でしかない。とりあえずなんとかしてほしい」
こう不満を口にするのは、70年以上この町に住む川妻成美さん(77)。
(川妻成美さん)「フンが斜めに落ちてくる。ひさしがあっても壁や窓ガラスとかに付着する」
自宅の壁や窓にべったりとついた白いフン。このフンの原因というのが、長い首が特徴の水鳥「カワウ」です。体長は80cmほどで、羽をぱたぱたと小刻みに羽ばたかせて飛びます。5年ほど前からこのあたりを飛び回るようにり、深刻なフン害に憤懣しています。
(川妻成美さん)「上を通ると怖いんですよ、フンをするので。いい天気やのに“雨”かなと思ったら、鳥のフンがついている」
他の住民も被害を受けています。
「(車の上の)この白い点々は全部フン。多いときはこの白い点が一面に。車の洗車は毎日、毎朝。洗っても翌朝には水玉状態。雨が降ると今度は臭いがすごい。生臭いような」
「以前は布団やカーペットを外に干しましたが、今は全然しません」
早朝からこだまする鳴き声 林にはおびただしい数の巣が
住民がみな一様に目の敵にしているカワウ。その活動は朝早くから始まります。取材班が午前5時から取材をすると、すでに鳴き声が住宅街にこだましています。上空では数十羽の群れを作って飛び回っていました。
よく見ると、木の枝や葉をくわえ運んでいます。カワウがたどり着いた林を見てみると、おびただしい数の巣が。滋賀県のカワウは今、繁殖の真っ盛り。1本に20もの巣がある木もありました。そこにはカワウのひなの姿も。
(記者リポート)「カワウの巣のすぐ近くに、直径5cmほどの卵が複数落ちています」
周囲にはカラスに食べられたとみられる卵の殻が散乱していました。別の日の昼すぎには…
(カメラマンリポート)「安曇川の中州にカワウの大群です。羽を休ませています」
昼間は巣を離れるカワウも多く、中州には数百羽が集まったり、エサを探しているのか川で泳いだりしています。日が落ち始めると、ねぐらとしている巣に帰ってきました。
滋賀県内の別エリアでも過去に“大繁殖”
こうした状況は今に始まったことではありません。びわ湖の北部に浮かぶ竹生島では、カワウが1990年代に増加。
(記者リポート 2006年)「何百・何千というカワウが島の周囲を我が物顔で飛び回っています。まさに鳥の楽園といった感じです」
2006年ごろには約2万6000羽が生息していて、全国のカワウの半数がこの島にいたとみられます。カワウが枝や葉をとりすぎたり、フンをし過ぎたりした影響で木が枯れてしまいました。
行政が対策に乗りだし、卵に石鹸水を吹きかけ雛が孵化するのを阻止したり、ヘリコプターを使ってネットを木にはりめぐらせ巣作りを阻止したりする大規模な駆除作戦を敢行。銃での駆除も行い、現在は1400羽程度にまで減りました。
その竹生島のカワウが減る一方で、安曇川のほかに野洲川や愛知川などびわ湖につながる川などで急増。竹生島・伊崎のエリア以外では2006年には100羽をきっていましたが、去年には約1万70000羽と爆発的に増加しました。
アユ漁にも影響「びわ湖中の漁師が心配」
困っているのは住民だけではありません。川をせき止め遡上してくるアユを捕まえる伝統的な「やな漁」の関係者も、カワウによる被害を警戒しています。滋賀県によりますと、県内には約1万8000羽のカワウがいるとされています。1年間で食べる魚の量は推定1370トンで、これは県内の漁獲量の約2倍にものぼります。地元の漁協はカワウによる被害を防ぐため、防鳥ネットを設置しています。
(北船木漁業協同組合 山田謙二代表理事組合長)「カワウは一日の食べる量が多い。それが1000、2000と飛来してくると、とてもではないが…。子持ちのアユを捕食する、一番困る。びわ湖中の漁師が心配している」
カワウの数を数えると…5年前の6倍以上に
住宅街で急増したカワウ。最新の状況を把握するため、行政からの委託を受けた民間企業が今年5月3日、調査を行いました。
(イーグレット・オフィス 須藤明子さん)「(巣が)あの木とこの木に増えてしまった。外に出てきている感じ、集落側に」
双眼鏡を使って木の上にある巣や飛んでいるカワウの数をひとつずつ数えていきます。
(須藤明子さん)「滋賀県全域がカワウにとっては住みやすいところ。滋賀県の中でいい川、アユが遡上する川として安曇川は1、2位を争う。安曇川か姉川か」
5年前の調査で確認されたのは568羽でしたが…
(須藤明子さん)「3760羽です。全国的にみてもすごく苦労されているところというのは間違いないです。放っておくとどんどん増えるので、とにかく総数は減らして、銃器で捕獲することで圧力をかけると営巣しにくくなる」
繁殖してこれ以上カワウが増えないように今後、銃を使って駆除するということです。びわ湖周辺で30年以上続くカワウと人間の戦い。終止符が打たれるのはいつになるでしょうか。