ネットショップで急増している「偽物」の出品。中でも最近増えているのが「偽の化粧品」だといい、購入者からは怒りの声が噴出しています。その実態に迫るべく、取材班は“正規品と似た商品”をネットショップから入手し、調査しました。

ネットで買った化粧下地に違和感「これ正規品ですか?」

 「まさか化粧品で偽物が作られていると想像もしなかったので、衝撃でしたね。こんなことあるんだって」

 こう話すのは、関東地方に住む30代のAさん。去年、「Yahoo!ショッピング」で購入した化粧品が偽物だと感じたといいます。

 Aさんが購入しようとしたのは、資生堂が展開するブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」の化粧下地。定価7700円(税込み)です。ネット上で売られていたのは、半額以下の3090円でした。

 (Aさん)「(届いた物は)普段、百貨店で買うようなパッケージと若干違いがあって。(中身を)出してみたらペンキみたいな感じで、かなりクリームが重くて、全然伸びないんですよ。あと香りがかなり強かったです」

 おかしいと感じたAさんは、出品者に連絡します。
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 【メッセージのやりとり】
 (Aさん)「これ正規品ですか?」
 (出品者)「弊店では国内正規品と海外正規品を扱っており、どちらが引き当てられるかはお選びいただけません。海外正規品(並行輸入商品)については国内の百貨店などでお買い求めになった商品とパッケージ・香り・質感・色味・付属品が若干異なる場合がございます」

 (Aさん)「これはテクスチャーとかが違うけども国内正規品の海外バージョンですって言われて。それって偽物ですよね?って聞いたら、『そうじゃなくて』と。偽物ということをかたくなに認めなかったです。返金するからこれ以上何も言わないでくれみたいな。誠実な対応ではないと思います」

「正規の商品を試したら全然違うとすぐにわかった」

 被害を訴える人は他にもいます。

 (Bさん)「わーいって思って。憧れのクレドみたいなところで、早速使ってみたら…香りが強い」

 関東地方に住むBさん(30代)も2023年、Aさんと同じ化粧品をYahoo!ショッピングで4割ほど安く購入。当初は疑うことなく商品を使い続けたといいますが…

 (Bさん)「(クレ・ド・ポー ボーテの)正規のお店に行って、正規の商品を試したところ、全然違うのがすぐにわかって『偽物だったんだ』と」

正規品とどう違う?比べてみると…

 そこで取材班も、ネットショップでクレ・ド・ポー ボーテの化粧下地として正規品より1500円ほど安く出品されていたものを入手しました。

 (記者)「本物と比べますと、まず、商品本体の厚さが全然違います。正規品の2倍ほどに膨らんでいます。香りも、中身を手に出した時点で、顔と離れていますが、ツンとするような香りがします」

 中身を出してみると、正規品はなめらかに広がっていくのに対し、安く売られていた商品は固く見えます。

 資生堂は偽物が販売されていることを確認していて、「健康被害を引き起こすおそれもある」として公式サイトで注意を呼び掛けています。
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 国民生活センターによりますと、偽化粧品に関する相談件数は増加傾向にあり、昨年度までの5年間で4倍近くに伸びています。

偽物が出回る人気美容液 専門機関に鑑定を依頼

 取材班は、さらにもう1つ、偽物がよく出回っているとしてメーカーが注意を呼びかけている化粧品を入手しました。

 その商品は、ロート製薬の人気美容液「オバジC25セラム ネオ」です。正規品とネットショップで販売の商品は一見同じように見えますが、パッケージの「C」の部分に違いが。正規品には「C」の上に黒い線が重なっているのに対して、もう一方の商品には線がありません。
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 中身を確認してみると…ネットショップで販売されていた商品は、若干濁っているようにも見えます。

 取材班は、専門機関に鑑定を依頼しました。

 (日本分析化学専門学校 宮道隆副校長)「ビタミンCが入っていると言われている化粧品なので、本当にビタミンCがあるかどうかを確認したいと思います」

 この商品には、濃度の高いビタミンCが含まれているため、ビタミンCに反応する「ヨウ素」を使って鑑定します。まずは、正規品。ヨウ素液に1滴入れるだけで、ほぼ透明に。3滴入れると完全に透明になりました。

 続いて、ネットで購入した商品は1滴、2滴、3滴入れても色は変わりませんでした。

 (宮道隆副校長)「ネットで購入した商品はビタミンCが含まれていないということからも、偽物ということが言えるのではないかと思います」

 ほかにも化粧品の組成を調べられる機械を使って違いをみると…

 (宮道隆副校長)「見ていただくと明らかで、(波形の)へこみがずいぶん違います。(偽物は)だいぶ入っているものが少なくて、そして入っているものの質も違うのかなと思います」

 ネットショップで売られていた美容液は、偽物の可能性が非常に高いことが分かりました。

化粧品会社の代理人「どんどん出されると止められない」

 こうした中、大阪府警は偽化粧品の販売に対して取締りを強化しています。

 ただ、今年に入ってから警察が摘発に乗り出したケースでは、偽化粧品は中国から発送されていました。犯罪グループの拠点は中国にあるとみられていて、事件の全容解明は困難だといいます。

 ネット上に溢れる偽化粧品。化粧品会社の代理人を務める弁護士は、偽物とみられる商品があった場合、ネットショップ側に削除するよう求めていますが、追いつかない状況だといいます。

 (IP FORWARD法律特許事務所 鷹野亨弁護士)「(ネットショップに)最低限の審査で通ってきて、権利を侵害しているとか模倣品かどうかまではチェックをされずにたくさん出ている状況かなと思っていまして、企業・権利者・ブランド・メーカーでチェックするのはほぼ不可能。こういった中で、プラットフォーム側でどんどん出されていくと止められないという状況になっています」

 中には健康被害も出ているという偽化粧品。利用者側も細心の注意を払う必要がありそうです。