兵庫県加古川市にある24時間営業の大型スーパー。広大な駐車場を完備するこの施設が数年前から頭を悩ませているのが「放置自動車」です。取材を進めると車の中に住んでいる人も!?ずらりと並ぶ放置された車に施設側は憤っています。

タイヤがない車も 3~4年ほど前から目立つようになった「放置自動車」

 兵庫県加古川市。海辺の工業地帯で今、起きている“憤マン”というのが…

 (記者リポート)「加古川市内の大型スーパーの駐車場にある放置自動車。こちら3台ともナンバープレートがついていません」
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 そう、駐車場にずらりと並ぶ「放置自動車」です。ナンバープレートがないだけではありません。タイヤもなくなっています。サイドミラーが外れた車両も。別の車はライトがすっぽりくり抜かれています。
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 そして、車の中はというと…ゴミ!ゴミ!ゴミ!脱ぎ捨てられたような衣服や女性用の下着が散乱する車まであります。放置自動車についてスーパーの利用客はどう思っているのか、話を聞くと…

 「けっこうありますよ、何台か。撤去してほしいですよ、ほんまはね。場所とってしまうからね。お客さんが1台置けなくなるから」
 「見栄え的にもよくないし、放置してる車がそのままほったらかし状態になってるので、なぜなんかなというのは思っていました」
 「悲惨なことになってる車がある。この車はもともとタイヤもあったしね、ラジエーターまわりとか…来るたびにどんどん悲惨になっていく。1台あると2台3台と増えていくからね、こういうのは」

 24時間営業のこのスーパー。駐車場にはいつでも無料で入ることができるということで、利用客によりますと、3~4年ほど前から放置自動車が目立つようになったといいます。一見、普通の車と変わらないものも…
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 (記者リポート)「この車はナンバープレートもタイヤもあるので怪しい点は一見ないのですが、車検が令和4年(2022年)10月で切れてしまっています。この車は公道で走ることができないのです」

 こうした放置自動車が駐車場に何台あるのか、数えてみると…

 (記者リポート)「駐車場の一区画だけでも、少なくとも10台の車が放置されている可能性があります」

 これには、店の関係者も頭を悩ませていて、「駐車場がこのまま放置自動車で埋まってしまっては困る。有料ゲートをつけざるをえなくなる。ナンバープレートがない車も多く、捨てる気満々なんだろう」とコメントしています。
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放置されていたトラックに「車両通門証」 業者を訪ねたところ…

 一体、誰が何の目的で車を放置しているのか。取材班は1台のトラックに残されていた「車両通門証」を発見。そこに書かれていた兵庫県姫路市内のとある鉄鋼業者を訪ねてみると…
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 (記者)「こんにちは毎日放送です。止めっぱなしの車がけっこうあって、その中の1つの車が…」
 (取締役の女性)「ありましたか?うちの?」
 (記者)「トラックがあり、そうなんじゃないかと思い、お聞きしようと」
 (取締役の女性)「いや、うちの車は全部管理していますよ」
 (記者)「写真がこちらです」
 (取締役の女性)「中ぐちゃぐちゃやん。うちのは(車の横に)名前書いてるから。うちの工業所の車ではない」
 (記者)「なぜ御社の名前の車両通門証がトラックの中に?」
 (取締役の女性)「下請けの人を雇っていますから、そういう関係で許可証が渡ったのかもしれない。期日がきて書き換える時に古いものをそのまま持ったんでしょうね」
 (記者)「御社の名前の車両通門証があることについては?」
 (取締役の女性)「はっきり言っていい迷惑」

 放置自動車の持ち主を突き止めることはできませんでした。店の関係者によりますと、たとえ所有者を特定できても、本人と連絡がつかないケースが多いといいます。

「車の中で寝泊まりしている人も」取材班は張り込むことに

 一方、取材を進めると、スーパーの利用客からは次のような声も聞かれました。

 「夜中によく来るので、夜中に(放置自動車が)あると異様な感じがしますよね」
 「車の中で寝泊まりしている人もいらっしゃるもんね…」

 放置自動車で寝泊りする人がいるとの情報。実態をつかむべく、取材班は夜、駐車場に張り込むことに。すると午後9時、“動き”がありました。
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 (記者リポート)「今、車から人が降りてきました」

 あの車検切れの車から高齢男性が出てきました。

 (記者リポート)「手にタバコを持ちながら、ゆっくりとスーパーの方に歩いていきます。買い物客なんでしょうか」

 ところが店内には入らず、トイレへ直行。数分後、何食わぬ顔で車の中に戻ろうとします。そこへ取材班が直撃しました。
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 (取材班)「毎日放送です。これ、放置自動車なんですか?少しお話伺っていいですか?」
 (男性)「なに」
 (取材班)「車を止めているのを、お店の方が困っている。どういった理由で止めているのですか?」
 (男性)「どけようと思っとんねん。車検がきれて、エンジンもあかんから、どこかに持っていこうと思ってな」
 (取材班)「車の中で寝泊まりをされているんですか?」
 (男性)「(私には)息子がおるんやけど、いろいろ事情があって、もう嫁さんもはやくに亡くなったから、一緒におるのも嫌だし、そやからこないに」
 (取材班)「息子さんの家に帰ることはないんですか?」
 (男性)「帰らんな、もう帰ることないですわ」
 (取材班)「スーパー側は困っているが?」
 (男性)「もうぼちぼちのきますわ」

 しかし、張り込み中、この車が移動することはありませんでした。

“暇つぶし”でやってきたという2人組「YouTubeで知った」

 さらに待つこと2時間。午後11時、放置自動車の前で1台の車が止まりました。中から2人組の若い男性がでてきます。

 (記者リポート)「懐中電灯を持ちながら、男性2人が車を“物色”しているようにも見えます、あっ、今、車の扉を開けました」

 1台ずつ放置自動車を見て回る2人組。一体何をしているのか、こちらも直撃すると…
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 (記者)「お兄さん2人は何をしている?」
 (2人組)「暇つぶしで…ふふふ」
 (記者)「ライトを照らしながら見ていたが?」
 (2人組)「なんかおもしろいものあるかなって」
 (記者)「いつも来るんですか?」
 (2人組)「いや初めてです。有名って聞いて」
 (記者)「何が有名?」
 (2人組)「放置車両が」
 (記者)「それで見に来られたと?」
 (2人組)「そんな感じです」
 (記者)「どこで知った?」
 (2人組)「YouTubeです」

 あくまで“暇つぶし”でやってきたという男性2人組。しかし、取材の後もまるで何かを探すかのようにあたりを見回ったあと、30分後、ようやくその場を立ち去りました。

警察はなぜ撤去できない?

 駐車場の場所を占領するだけでなく、防犯面にも悪影響を与える放置自動車。そもそも、警察が撤去することはできないのでしょうか。事情を聞くと、加古川警察署の幹部は「私有地なので、警察が勝手に撤去する権限がないから、施設管理者に対応をお願いするしかない。警察は、車にいたずらがされていないか、この場所で違法行為が行われていないかをパトロールをすることしかできない」とコメント。
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 道路の場合は法律上、自治体や警察が撤去できるものの、私有地の場合は行政が介入できません。土地の管理者は車の所有者に訴訟を起こし、裁判所の許可を得たうえで、初めて撤去することができるのです。しかし、半年以上の月日を要するほか、かかる費用を全て負担せねばならず、簡単にはいきません。

改めて現場に行くと…厳しい文言が並ぶ「警告書」

 今年3月、改めて取材班が問題の駐車場に行くと…

 (記者リポート)「放置自動車には新たな警告書が貼られていました。そこには、“3月21日までに移動しない場合はこちらで撤去・処分する”と書かれています」

 厳しい文言が並ぶ警告書。店側の最終手段なのかもしれませんが、それでも放置自動車の数に変化があるようには見えません。
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 あの男性が寝泊りしていた車も残されたままでした。多くの人に迷惑をかける放置自動車。乗り捨てた者達は許されるべきではありません。
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