“京都の玄関口”に多くの喫煙者が集まる公園があります。しかし、公園内に設置された喫煙所の外でたばこを吸ったりポイ捨てをしたりするなど、マナー違反が頻発。喫煙者に話を聞いてみると、驚きの主張を述べる人もいました。

 JR京都駅から西へ徒歩3分のところにある東塩小路公園。遊具はなくこじんまりとした公園ですが、ちょっとした空き時間に立ち寄る人もいます。しかし、この公園をめぐって不満を漏らす人がいるのです。
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 周辺で清掃ボランティアを行う篠部大五郎さん(52)。嘆くのは“たばこのポイ捨て”についてです。

 (篠部大五郎さん)「めっちゃ落ちてるよ、すごいな。残念ですよね、これだけ多いのは。これは大変ですね。京都は観光のモデルの都市でもありますけど、環境のモデルの都市でもあるので、みなさんの意識も高いのではないかなと思うんですけど…なんでしょうねここは。残念ではありますね」
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 公園には喫煙所が設けられていますが、いたるところにたばこの吸い殻が落ちているというのです。ここで何が起きているのか。取材班は実情を知るため張り込むことにしました。

喫煙所の外でたばこを吸う人、ポイ捨てする人…

 午前7時30分。通勤前に立ち寄ったのか、サラリーマンらしき人が数人います。そこから少しずつ人が集まりだして、喫煙者にとっての憩いの場となっていきます。
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 その後も利用者は増えていき、30分後の午前8時すぎ、公園は通勤前にたばこを吸う人たちであふれかえる状態となりました。
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 1時間後、喫煙所のまわりには“はみ出し喫煙”をする人が続出。この公園は京都市が定めた路上喫煙の対策エリアのため、喫煙所以外では条例違反となり1000円の過料が科せられますが…。

 (記者)「喫煙所の外ですが、男性がたばこを吸っていますね」
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 中には慣れた手つきで灰を地面に落とす女性も。すると、次の瞬間、たばこを捨て、靴で踏みつけ地面に放置。そして2本目も…。
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 (記者)「たばこを落としました。足で踏んでいますね、煙を消しているのでしょうか」

 その後もポイ捨ては横行。公園はすぐに吸い殻だらけに。

外国人観光客も驚き「この公園で起きていることは残念なこと」

 こうしたやりたい放題の状況について、たばこを吸わない人たちはどのように感じているのでしょうか。

 (公園利用者)「僕が嫌って言っても、みんなが、他の人が吸ってるから大勢に流される感じで。ほんまは嫌いやけどね、ものすごく」
 (通勤する人)「臭いも切ないし、ゴミがあまりきちんと整理されていない公園はちょっと切ない。たばこを吸う人たちのためだけの公園じゃないので、誰にとっても公平な公園であってほしい」
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 みやびなイメージを持って京都を訪れた外国人観光客も驚きを隠せません。

 (イギリスからの観光客)「ふるさとではたばこを吸える場所はないんだ。別のところに行って吸わないといけない。家とか庭とか、公共のスペースじゃなくてね。残念なことに、いいこともあるけど悪いこともある。この公園で起きていることは残念なことだね」

「喫煙所は非常に窮屈」喫煙者たちの主張

 公園には「パーティションの内側で」と注意書きもありますが、お構いなし。最低限のマナーをなぜ守ることができないのか、喫煙者に話を聞きました。
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 (喫煙者)「(Q吸うのは遠慮してと書いてあるが?)あーここ書いてあるね。電車が見えないやろ、だからこっち来て見てたの」
 (喫煙者)「狭いのは狭いので、非常に窮屈です、中は。僕は紙たばこを吸うんですけど、電子たばこの人とかは紙たばこの煙が嫌っていう方もおられるので、ちょっと気を遣うところもあります。あまり近くに行かないように。(Qだから喫煙所の方へ移動しなくてもいいと?)そうですね。路上と違ってあまり罪悪感は感じないですね正直」
 (喫煙者)「人が多いのであまり中に入りたくないのがあって。コロナの時は一応中も区切ってて4人ぐらいの感じだったんですけど。(Qパーティションあるがここで吸うのは?)やっぱり人が近くにいるのは嫌な感じがまだあるので」
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 中にはこんな持論を展開する人もいました。

 (喫煙者)「たばこの税金も払ってるので、コソコソすることはないと思うんですけど。税金かかっていなかったらコソコソしたほうがいいんちゃいますか?税金払って文句言われるなら税金とらない方がいいと思う。そこはどう思います?(Q公園のルールがあるが?)税金の方は?税金とってあっち行けこっち行けというのはどう思われます?」

 たばこ税を支払っているから問題ないと繰り返しました。

マナー違反を撲滅するべく市が対策に乗り出したが…

 喫煙者のマナー問題について公園を管理する京都市はどう考えているのでしょうか。

 (京都くらし安全推進課 奥井慶司課長)「公園内で喫煙する方が喫煙所以外でたばこを吸っている方が多いということもありまして、喫煙者の方がルールとマナーを守って喫煙所の中で吸っていただくことがいろんな対策につながると思っております」
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 対策を求める市民の声を受け、京都市はある“秘策”を用意したといいます。それが「路上喫煙禁止」と書かれた路面シート。喫煙所の外に貼ることで啓発につなげる狙いです。この秘策でマナー違反撲滅へ。市が動き始めます。
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 (京都くらし安全推進課 奥井慶司課長)「こちら車止めと(反対側にも)合計4か所に看板を設置するとともに、啓発シートを公園内4か所に貼らせていただいております。目に触れるような形で案内表示をすることで、喫煙所の中で吸っていただくことが分煙にもなると思いますので、そういった取り組みを続けていけたらと思っております」

 路面シートは身勝手な喫煙者たちの心に響くのか。様子を見てみると…。

 (記者)「『喫煙所を除く公園内は禁煙』と書かれた看板が設置されましたが、気にする様子もなくたばこを吸っている人の姿が見られます」

 設置から約30分後には、これまでとまったく同じ状況が広がっていました。
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 (喫煙者)「(Q喫煙禁止のシールがあるが?)結局向こう(喫煙所の中)が多かったらこっちに流れてくるので。狭いっすね正直。ここから向こう半分を全部喫煙所ぐらいにしないと、ここ結構人来るので」
 (喫煙者)「多分見てると思うんですけど、そないに意識して見ていないので」

 残念ながら「路面シート」には気づいているものの、効果は十分とはいえない結果でした。

「喫煙所も灰皿もあるからマナーを守って」

 清掃ボランティアをする篠部さん。再び清掃に来ていました。3人がかりで吸い殻を拾い続けること30分、公園はようやく元の姿に戻りました。
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 (篠部大五郎さん)「別に落ちてなくていいものですからね。その部分はみなさんマナーを守っていただいて、喫煙所もあるわけですし、灰皿もあるわけですから。ひとりひとりのマナーを高めていってほしいですね」

 誰もが使えるみんなのオアシスにするためにも、喫煙者ひとりひとりの最低限のマナーが問われます。