2年前にMBSの番組で取り上げた、神戸市内にあるガタガタな道。通る車が跳ねるほどで、「戦車じゃないと通れないような道」という声も聞かれました。2年の時を経て今年10月に舗装工事が始まりましたが、工事内容について住民の間では賛否が分かれています。また、工事の進め方に憤る住民の声も聞きました。

 神戸市西区に住むAさん。自宅近くを通る道路の工事をめぐって憤懣しているといいます。

 (Aさん)「神戸市がどう考えているのかがイマイチわからなくて。もう勝手に決められて勝手にやるみたいな。全然理解できないですね」

 神戸市がこの道路の舗装工事を始めるというのですが、その工事の進め方に納得いかないというのです。

跳ねながら走行する車…2年前に取材「戦車やないと通れんような道ですね」

 ことの発端は2年前に遡ります。神戸市西区の住宅街を走る県道「長坂垂水線」。西区から垂水区までを結ぶ近隣住民の生活道路なのですが…進んでいくと突如、舗装されていない道に変わりました。

 (近隣住民 2021年)「(Q走り心地は?)最低ですよ!最低ですけど、全然渋滞がないので、この道が楽なんです。戦車やないと通れんような道ですね」
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 全長1.2kmのうち一部の区間だけ舗装がされておらず、道はガタガタ。少し様子をうかがうと、車は大きく跳ねながら通り抜け、自転車に乗った高校生は、あわや転ぶところでした。
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 取材班が実際に自転車に乗って通ってみました。

 (記者リポート 2021年)「ガタガタのあまりハンドルを取られそうになります」

 砂利の道は思った以上に走りにくく、路面がガタガタで車が真横を通ると危険な状態だと感じました。
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 そして、夜になると、あたり一面、真っ暗に。県道なのに街灯は1つもありません。

『県道部分の幅2m』のみ舗装して車は通行止めにすることに

 なぜ道路を整備しないのか?この道を管理する神戸市は2年前、次のように話していました。

 (神戸西建設事務所 河南宏樹管理係長※当時 2021年)「そもそも道路の権限、道路の土地というのが2mほどしかないので」
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 実はこの道、幅が6mほどあるものの、市が管理する公道は幅2mほど。県道に指定された49年前は周囲は草むらでしたが、土地開発で境界線が曖昧なまま私有地として広がり、今のような状況になったといいます。

 神戸市は住民らから改善を求める声を受け、整備する方針を決めていました。

 (河南宏樹管理係長※当時 2021年)「今のところは2m。神戸市の持っている用地のところを舗装させてもらう。車止め、棒みたいなポールみたいなものを立てまして、車が通れないようにする」

 県道はあくまで幅2m。市は、そこだけを舗装した上でポールを設置するなどして車を通行止めにするとしていました。

“車が通れないのは困る”住民からは怒りの声

 しかし、この工事の方針について新たな憤懣が。この道は住宅地から商業施設へと繋がっていて、住民にとっては生活道路にもなっています。
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 周辺の道路では商業施設へ向かう車などで度々、大渋滞が発生。
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 県道は抜け道としても利用されていて、この道を通れなくなると大きく回ることになり、渋滞が発生していない時でも倍以上の時間がかかるといいます。こうしたことに住民からは怒りの声が上がっていました。

 (近隣住民 2021年)「(Q神戸市が車止めをつけるそうだが?)…えっ、通行止めにするっていうの?そんなんあかんわ。今までどおりせな。だって県道やで!そんなん県道を通行止めにしてどうすんねん」

 (近隣住民 2021年)「向こうの道はすごく混むのにここを止められたら、住んでいる私たちはどういうふうに生活していったらいいんだろうというのはありますね」

2年後 以前と変わらず舗装されていない道「砂ぼこりがすごい」 工事開始の通知があったが…

 そして今年9月、取材班が再び現場を訪れると、2年たった今も地面はガタガタのまま。街灯もついていません。さらに…。
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 (記者リポート)「うわー砂ぼこりが…砂ぼこりがすごいですね。視界が真っ白です」

 市は道路のへこみを改善しようと定期的に砕石を敷いているため、以前にも増して砂ぼこりが。
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 県道の近くに住むAさんは車止めの設置に反対していて、この2年間、市との意見交換の場を要望。しかし、市は「自治会長からそのような依頼はない」として話し合いの場は設けず、結局、県道がどうなるのかわからないまま時が過ぎていったといいます。そして今年8月、住民らと市が直接対話する機会は設けられないまま一方的に市から通知があったということです。

 (Aさん)「2年前に1回、車の通行を止めるっていう話があって、2年たってまた突然、建設局が動き出したみたいな」
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 2か月後には工事を始め、当初の予定通り道幅6mのうち2mのみを舗装して、車の通り抜けはできないようにすると書かれていました。

 (Aさん)「結局何もできないんです。何を言っても受け入れてもらわれへんし。お願いしても何もしてくれへんし。ここに引っ越してきて8年たちますけど、結局何もしてくれないままですからね。それで最終、通行止めで終わりですから」

住民の間で賛否分かれる「非常に不便」「子どもいるのでありがたい」

 ほかの住民たちはどう思っているのでしょうか?

 (近隣住民)「非常に不便だなと感じますね。工事の通知を頂いた時点でもう決定事項なので、困るんですけど、止めようもないし」

 さらに、幅2mだけの舗装では砂ぼこりの問題は解決しないという声も。

 (近隣住民)「中途半端な感じ。どうせやるなら、街灯とかもつけて安全にするんだったら、ちゃんと道路全部やってほしい」

 一方で、車の通行禁止はやむを得ないと考える人もいます。

 (近隣住民)「もう仕方ないでしょうね。砂ぼこりもたつし、夜中も走る車あるやろうから」

 (近隣住民)「正直、道もけっこう悪いので仕方ないかなと。子どもがいるのでありがたいなと」

 毎日使う道路が突然通れなくなるのは困るという住民と、車が通らないほうが安全だという住民。それぞれの考えがありました。

なぜ2年たって工事を始めた?住民への説明は?

 道路舗装工事について意見が分かれているからこそ、市から丁寧な説明が必要だったのではないでしょうか。神戸市に問うと、次のように回答しました。

 (神戸西建設事務所 奥山晴則管理係長)「大きく説明会などをしてほしいのであれば自治会を通して、要望があればしようとは思っております。気になるのであれば個別での問い合わせも対応させていただこうと思っています」

 また、工事が始まるまでに2年あまり。なぜこれだけの期間を要したのでしょうか?

 (奥山晴則管理係長)「用地調査、あとは設計、どういうふうに整備するかの設計とか、沿道に土地の利用をされている方もおられますので、沿道の地権者との協議を進めておりまして、それがおおむね見通しが立ったので」
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 そして10月10日。ついに市は工事を開始し、車の通り抜けはこの日からできなくなりました。

 (バイクに乗る近隣住民)「不便ですね。学校で、毎日使っています。うわ~…遠回りするしかないです」

 2年の空白期間を経て突如始まった舗装工事。県道を日々利用する近隣住民への説明は十分だったと言えるのでしょうか。