観光客が戻ってきた京都・嵐山。しかしその影で『電車の大混雑』や『ゴミ問題』が起きています。地元住民や観光客の憤懣を取材しました。
JR嵯峨野線が混みすぎ!?「地獄絵図」との声も
コロナ禍で落ち込んでいたインバウンド需要が急速に回復している京都・嵐山。
(アメリカから来た人)
「竹林と嵐山モンキーパークに行きます。とても美しいです」
「とてもいいですね。日本は美しい。かわいいですね」
しかし、その影で今ある問題が起きています。それが…。
【SNSより】
『嵯峨野線ほんまヤバいよなぁ…』
『地獄絵図』
「JR嵯峨野線が混みすぎている」という声が相次いでいるのです。
視聴者から寄せられた映像では、通勤ラッシュではない時間帯にもかかわらず車内は大混雑で、身動きがとれない状況となっています。
さらに嵐山からの電車が京都駅に着くと、ホームが人であふれかえり、車内を通って出口に向かう乗客の姿も。
普段からの利用客は困惑
京都駅と嵯峨嵐山駅の15分ほどの区間で一体何が起きているのか?取材班は現地に向かいました。電車が嵯峨嵐山駅のホームに到着すると…。
(記者リポート)
「結構多くの人が一斉になだれ込んできました。ホームが小さいのも相まってかなり混雑しているように見えます」
大勢の乗客が電車から降り、駅の出口に向かって大移動です。
また別の日も同じように大混雑。階段前では前に進めず立ち止まる人の姿も見えます。この混み具合に普段からの利用客は。
(利用客)
「朝とかぎゅうぎゅうですよ。(Q立っているのがやっと?)そんな感じ」
「人が多すぎるっていうか混みすぎるね。困りますよ。我々の生活のリズムが狂うし」
『コロナ禍から続く減便』『4両編成』ですぐ満員に…
では、激しく混みあっていた嵯峨野線の始発・京都駅は。ホームへ向かうと、ベビーカーを押した女性が乗車できないなど、大勢の人でごった返していました。その要因の1つが…。
(記者リポート)
「京都駅嵯峨野線の時刻表です。観光客の多いこの時間帯は、嵐山に向かう列車は1時間に4本編成されています」
実はJR西日本はコロナ禍の2021年春に、嵯峨野線(京都駅-嵯峨嵐山駅)のダイヤを1時間あたり5本から4本に減便。観光客が回復した現在も減便状態が続いているうえ、4両編成を基本としているため、すぐにあふれかえってしまう状況なのです。
(利用客)
「前のやつを逃しちゃったから、次が来るまで30分くらい待たないといけない」
「とても混んでいるね。僕はもっと両数も本数も増やしたほうが良いと思う」
嵐山商店街の石川恵介会長(54)はこの状況に危機感を募らせます。
(嵐山商店街 石川恵介会長)
「せっかく癒やしに非日常を味わいに嵐山に来られるわけですよね。こんな満員の状態で来られるのは非常に気の毒ですし、あんな混んでいる電車しかないんだったらやめておこうかみたいな、避けられることになってしまうとかね。なかなか残念なことになるんじゃないかなと思っています」
風情が台無し『ゴミ問題』も 商品や看板にも置かれる!?
嵐山をめぐる問題はこれだけではありません。あふれかえるゴミ問題です。
(記者リポート)
「入りきっていないというレベルじゃないですね」
幻想的な散歩道が人気の竹林の小径でも、ゴミ箱には缶やペットボトルが詰め込まれて、いっぱいに。せっかくの風情を打ち消します。
商店街の石川会長は、竹細工の店を営んでいるのですが、ここでも…。
(嵐山商店街 石川恵介会長)
「竹細工店なので、かごが売っているわけですけど、これをゴミ箱だというように、この中にゴミを入れられちゃっている。中にはソフトクリームがついていたり、あんみたいなのとかみたらし団子とか汁がついてしまうと、その商品は売り物にならなくなってしまいますので」
店の顔になる看板の上にもゴミが置かれていました。
(嵐山商店街 石川恵介会長)
「見た目にも汚らしいので、お店としての価値も下がってしまうので、それは本当にやめてもらいたいですよね」
ゴミ問題の背景に「ゴミ箱がない!」
こうしたゴミ問題、マナーの悪さが原因かと思いきや、それだけでもないようです。
(イギリスから来た人)
「ゴミ箱を探しているけれど、どこに捨てたらいいのかわからない。ずっとゴミを持っていないといけないし、暑いし嫌だ。もっとゴミ箱を置いてくれたほうが良いのに」
(中国から来た人)
「ゴミを収集するために、このビニール袋を20円くらいで買ったんです。(Qゴミ箱が見つからない?)ないですね。全然見つけられない」
食べ歩きのゴミを捨てる場所が不足していました。実は嵐山商店街には公共のゴミ箱が1つもないのです。
京都市は以前、商店街エリアに4つのゴミ箱を設置していましたが、あふれてしまう状態が頻発。景観を乱してしまうとして4年前に撤去した背景があります。
石川会長は商店街の仲間らと、この景観を守るためにも月1回の清掃活動を行っていますが、問題の解決にはやはりゴミ箱の設置が不可欠だと訴えます。
(嵐山商店街 石川恵介会長)
「ゴミ問題にやっぱり行政も本腰を入れて、美しい嵐山を保つために予算をつけていただいたりとかね。なかなか今、京都市も行政厳しいんですけど、なんとか力を貸していただきたいと思っていますし。ゴミ箱をやっぱり京都市に置いてほしいですね」
JR嵯峨野線は『夏休み期間中の増便』などを決定
一方で、利用者から不満の声が相次ぐJR嵯峨野線。7月12日、JR西日本の長谷川一明社長はその対応について、こう話しました。
(JR西日本 長谷川一明社長)
「混雑してきているということは聞いておりますので、これからも必要な増結だとか増発で対応させていただきたいと思っています。インバウンドの方だけではなくて、毎日ご利用いただいている方々に快適にご利用いただくのが大事なことだと思いますので」
JR西日本は嵯峨野線の混雑緩和に向け、夏休み期間の7月21日~8月31日は臨時で増便6本・車両増26本(休日34本)を決定(※お盆期間はさらに増便・増結)。ただ9月以降の対応はまだ決まっていないということです。
長いトンネルを抜けた先に待ち受けていた電車の混雑にゴミ問題。これがマイナスにならないよう継続的な対策が必要なのではないでしょうか。