各地で相次ぐハトのフン害問題。今回の舞台は大阪市西成区です。柵に囲まれた“謎の三角形エリア”にハトが集結していて、住民らが悩まされています。原因となっている「エサやり」をする人を直撃すると、驚きの主張が返ってきました。
「街のフン害や!」“三角形のスペース”に集まるハト 電線にも40羽以上
大阪市西成区の商店街で副会長をしている多田竹正さん(77)。ここ数年、あることに頭を悩まされています。
(今池本通商店会 多田竹正副会長)
「町内、商店街の理事長も、みんな言っている困ったことの1つなんですけどね。信号を守っている方に、『プン』『ピチャー』と」
憤マンしているワケ、それはハトです。電線には40羽以上が確認できます。
その下には道路の一部を柵で囲った三角形のスペースがあり、中にハトが集まっています。
(今池本通商店会 多田竹正副会長)
「私が追っ払って飛んでいったって、私が向こうに行ったらまた寄ってくるからな、もうこの根比べには…勝てん。街の“フン害”や!」
柵の周りを見てみると、ハトが止まる電線の下にはたくさんのフンが落ちています。
飲食店ではハトが店内に入ってくる被害も
目の前にはスーパーがあり、人の行き来が多い場所ですが、そんなことお構いなしに、頭上からフンを落とします。
近くを行き交う人に話を聞きました。
(街の人)
「電信柱からフンが落ちてくるからね。赤信号のときは結構上を見るね、みんな」
「できるだけハトが上にいないところを。避けて通るような感じですね。ハトがよく集まるところなので気になります」
近くの飲食店が頭を抱えているのは“フン害”だけではありません。
(西成屋台立呑み処 俺の出番 店長)
「フンもそうですけど、ときどきハトが店の中に入ってくる。衛生的なものもありますし、万が一お客さんにフンがかかることがあると飲食店としてダメだと思うので」
客が不快に思わないよう2人がかりで30分かけて店の前を掃除する毎日です。
パンやお米を投げる人たち!1日に2回訪れた人も
では、なぜこの場所にハトが集まってくるのか。取材班が張り込んでみると、そのワケがわかってきました。
“張り込み”から30分後、ハトがパンに群がっていきます。柵の周辺を見てみるとパンを持った男性がいました。
(記者)「あっ投げました。食パンをそのまま投げましたね、投げ入れました」
エサやりをしているようです。男性はパンがなくなると、袋をその場に投げ捨て、すぐに立ち去っていきました。
10分後には別の男性が…。
(記者)「あっ落としましたね、男性が袋から何かを落としました」
エサやりをしているのは1人ではなかったようです。
さらに…。
(記者)「パンくず…ですかね、女性がハトたちにパンを投げています」
(記者)「男性は何かパックの…お米ですね。パックに入った白米を投げました」
(記者)「すごい量のパンの耳を落としました。エサやりの様子を観光客たちが見ていますね。男性はエサを食べるハトを見ながら体操をしています」
エサやりをする人はほぼ途切れることなく、中には1日に2回訪れた人もいました。取材した日は7時間の張り込みで、8人のエサやりが確認できました。
さらに別の日も…。
(記者)「男性がパンをちぎって少しずつ投げています。あっ自分でも食べましたね」
(記者)「自分が食べていたものを何か投げたようです。男性はハトが食べる様子を見ながらお酒を飲んでいます」
毎日、不特定多数の人がエサやりをし、ハトを集めていたようで、柵で囲われた三角形の土地が“エサやりスポット”になっていました。
“三角形のスペース”が存在するワケは?
そもそもこのスペース、いったい何のためにあるのでしょうか。市の担当者に聞いてみました。
(大阪市建設局津守工営所 山原春彦道路適正化担当係長)
「あの場所は実は昔、南海天王寺支線という鉄道が走っていた場所なんですね。地域柄、屋台ですとか露店、野宿生活者さんが、道路の不正使用・不法占拠をすることが予想されるということで、その防止策というところで柵を置いています」
30年前に鉄道路線が廃止になったことで三角形の土地だけが残ったといい、そのスペースが露店などで使用されないように柵で囲ったといいます。まさか人ではなくハトに使われるとは…。
(大阪市建設局津守工営所 山原春彦道路適正化担当係長)
「ハトに対してはそこまでの対策といいますか、視点はなかったと思っています。それよりもまずは『人』だということでやっていたのかなと」
「私のエサやりはたまにやから関係ない」
大阪市には“エサやり条例”があり、エサを与えること自体は認められていますが、フンや羽根などが散乱しないように掃除することが義務付けられています。しかし、三角形のスペースでは、ハトが残したパンやごはんが地面に散乱。2日間で18回行われていたエサやりのうち、掃除を行っていた人はゼロ。市でも電線に細い防鳥ワイヤーを張ったり啓発のポスターを貼ったりするなどの対策をとっていますが、ポスターの前でも構わずエサをやる人たち。
取材班が直撃しました。
(記者)「今、ハトにエサをやっていました?」
(女性)「ちょっとね、なんで?」
(記者)「どうしてエサをやっているのですか?」
(女性)「いやいや、みんなお友達もやるからね。私のエサやりはたまにやから関係ない。みんなにも言ったらいいやない」
「エサやりをしているのは自分だけではない」と主張する女性。
(記者)「迷惑する人もいますが?」
(女性)「そりゃそうよ、わかってるよ」
(記者)「迷惑する人がいるのをわかってて…」
(女性)「わかってる!わかってる!わかってる!もうわかってる!」
「SDGsで動物が全部拾っていく」食べたものを吐き捨てていた人の主張
自分で食べたものを吐き捨てていた男性は。
(記者)「エサをまいているのですか?」
(男性)「まいていない、まいていない。口が細いから、食べながら吐くねん。エスディージー…SDGsで動物が全部拾っていくから」
あくまでエサはまいていないとしつつも、ハトに食べてもらうことが目的だと話しました。
(記者)「ここに吐くことでハトが集まってしまうと思うのですが?」
(男性)「ハトは野生で生きてるから関係あらへん、ワシに言わせたら。大阪の西成の大都会“アーバンシティ”やから、ハトが増えて問題なっているかもしれないけどな」
(記者)「ハトが集まると嫌な人もいるのですが、それについては?」
(男性)「知らん。ワシはハト大好き」
「ハトは平和のシンボルやからエサやりを続ける」
また、別の男性は…。
(記者)「パンを…」
(男性)「毎日やっているよ」
(記者)「なぜ?」
(男性)「ハトがおなかをすかせているから」
周辺住民がエサやりに迷惑していることについては。
(男性)「ハトは平和のシンボルやから」
(記者)「平和のシンボルだから迷惑している人がいてもいい?」
(男性)「そうよ、当たり前やん」
(記者)「これからもエサやりを続ける?」
(男性)「そうよ」
迷惑を顧みずにエサやりを続ける人たち。フン害に悩む地元商店街の多田さん、いくら注意しても続く現状に諦め半分です。
(今池本通商店会 多田竹正副会長)
「ハトにエサをやる人が何もエサをやらなければ動物は寄ってこないからね。ほんまにほんまに困ったことや」
ハトが飛び去り、住民らの悩みが解消される日は果たしてくるのでしょうか。