近年のアウトドアブームの影響で、バーベキューを楽しむ人たちが増加しています。その一方で、これまで「無料」でバーベキューを楽むことができた公園が、「禁止」や「有料」となる動きも出てきています。背景にあるのは一部の人たちの「マナー違反」です。

手軽で便利な「有料BBQ場」…『予約が取れない』『学生の時だったら無料のほうがうれしい』の声も

 ことし4月、兵庫県西宮市に新たにオープンした「西宮浜BBQ PARK」。週末は多くの利用客で賑わっていました。施設は事前予約制となっていて、コンロなどを自ら持ち込めば料金は1区画3500円。追加で料金を払えばテント・コンロ・机などをレンタルすることができ、園内には洗い場や炭捨て場も整備されています。
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 手軽で便利な「有料バーベキュー場」。一方で、利用者は…。

 (利用者)
 「なかなか取れないんですよ、予約が」
 「大変ですね。有料になっちゃって、無料っていうところがまず少なくなっちゃった」
 「今までは無料でできたところがあった。今はもうお金を払ってキャンプしたりバーベキューしたりしています」
 「学生の時だったらやっぱり無料のほうがうれしいですよね。お金がかなりかかっちゃうので」

 新しくできたバーベキュー施設の便利さを感じる一方、「有料」ということに少々不満を感じているようです。それは近隣の公園に理由がありました。

放置されたゴミや炭…無料BBQ場で「マナー違反」が横行

 (記者リポート)
 「こちらの公園は炭捨て場も設置されているのですが、現在はバーベキューが全面禁止になっています」
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 実は、西宮市では有料のバーベキュー施設の近くにある2つの公園で、元々、無料でバーベキューをすることができました。ところが3年前、新型コロナウイルスの感染拡大を機に禁止になったのです。新型コロナウイルスが5類に移行した今も禁止は続いていて、西宮市にはバーベキューを無料でできる公園は1か所もありません。
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 市が禁止に踏み切った理由は「マナー違反」でした。西宮市によりますと、バーベキュー後のゴミを公園にそのまま放置したり炭を砂浜の中に埋めたりといった行為が横行していたといいます。
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 このため、市は炭捨て場やゴミ捨て場を設置しましたが、2019年9月には、火を消さないまま炭が捨てられてゴミ捨て場でボヤが起き、消防が出動する事態となりました。バーベキュー客の振る舞いについて近隣住民はどう思っていたのでしょうか。

 (近所の人)
 「においがすごかったですね。あとはゴミですかね。ゴミをそのままで帰ったりとか、その辺に捨ててあったりとか。この植え込みの中に捨ててあったりとか。(Qバーベキュー禁止になったが?)それはもうありがたいです、静かですし」

西宮市『改善が見られず再開は考えていない』

 一方で、無料でのバーベキュー利用再開を求める声も上がっていますが、西宮市は今後も再開する気はないと断言します。

 (西宮市花と緑の課 船越秀史課長)
 「無料で利用されている中でマナーの向上があり、今まであった問題がなければ無料でも利用を続けられたと思うんですけど、改善が見られなかったということで再開は考えていないですね」

アウトドアブームで公園利用者が急増の滋賀県 一方でマナー違反も急増

 無料のバーベキュー場を見直す動きは滋賀県でも進んでいます。滋賀県では現在、県が管理する26の公園で無料でバーべキューをすることができます。このうちの1か所で、ゴールデンウィークの10日間限定で利用者から駐車料金を徴収する社会実験が行われました。

 滋賀県では近年のアウトドアブームにより公園の利用者が急増。特に去年5月は、利用者が約83万人と例年の3倍以上に増えたと言います。
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 その一方で、マナー違反も急増。直火でバーベキューをしたのか、園内のベンチが焦げたり、ゴミが放置されたりしたため、県は有料化によって利用者にマナーを見直すきっかけになってほしいと考えたのです。利用者の反応は…。
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 (利用者)
 「(Q無料と有料はどっちが良い?)それは無料で利用できればそのほうがいいですね」
 「(有料は)良かったと思いますよ、混み具合も全然違うので。さっき無料エリアに行ってきたんですけど、そこはかなり混んでいましたし、車もゴチャゴチャになっている状態で危ないかなと」

 事前予約制のため場所取りをする必要もなく、無料の公園よりも空いているという好意的な意見がある一方、やはり無料が良いという声も聞かれました。
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 滋賀県は今後、有料化やバーベキュー自体を禁止することも含めて検討しています。

 (滋賀県公園魅力向上推進室 石山基室長)
 「ここはみんなの公園ですから、自分たちだけが良ければいいという場所ではございません。公共の場所のマナーを守るというのは最低限のことだと思います。(マナー違反を)実際に目にすると非常にやるせないというか、がっかりする気持ちになります」

日本バーベキュー協会会長『ルールを守らない人に対して法的に罰則を』

 一部の人のマナー違反によって減りつつある無料のバーベキュー場。日本バーベキュー協会の下城民夫会長は「行政は一律有料化ではなく、まずはマナー違反者への対策をするべき」と指摘します。

 (日本バーベキュー協会 下城民夫会長)
 「2000万人の人が手軽に楽しんでいるレジャーなんですよね、バーベキューは。ルールを守らない人に対してはしっかりと法的に罰則を作ると。禁止するだけでなく、その一方で住民サービスとしてのバーベキュー場整備を行政が進めるべきだと思います」

 無料から有料に変わりつつある公園でのバーベキュー。この流れを受け入れる前に、まずはマナー違反への対策を考えるべきではないでしょうか。