今年7月、神戸市の踏切内でトラックが立ち往生して動けなく事故がありました。近隣住民は「この数十年の間に何回も同じようなことが起きている」と話します。なぜトラックは踏切内で動けなくなってしまったのか。取材班が現場を訪れて判明した“危険な踏切”の正体とは…。

各地にある危険な踏切

 (記者リポート 去年11月・大阪府堺市)
 「危ない危ない!車がまだ中に…。あ!またすぐ警報機が鳴りだしましたね」

 大阪府堺市のJR阪和線にある「開かずの踏切」。ピーク時には1時間のうち52分間も遮断機が降りていました。
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 一方で滋賀県東近江市には「開かずの踏切」とは正反対の「開きっ放しの踏切」もあります。遮断機も警報機もなく、列車の接近を知るすべのない危険な踏切でした。

 憤懣取材班はこれまでに様々な危険な踏切を伝えてきましたが、まだ知られていない危険な踏切があるのです。

神戸市東灘区の危険な踏切…トラック立ち往生で電車ストップ
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 神戸市東灘区の閑静な住宅街にある「小路踏切」が今回の憤懣の舞台です。踏切には警報機や遮断機がついていて一見すると特に危険な感じはしません。
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 しかし今年7月10日に撮影された小路踏切の映像。警察官が交通規制する先には立ち往生しているトラックの姿がありました。踏切の通行再開まで約1時間がかかり、阪急電車は上下線の計78本が運転を取りやめるなど2万3000人に影響が出ました。
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 この動画を撮影した片岡正さんによると、当時辺りは騒然としていたといいます。

 (片岡正さん)
 「ちょうどトラックの後ろのバンパーが線路の溝に引っかかっているような状況だったんですよね。警察の方が5人くらいおられて、それでこの辺が通れないので、どんどん車が渋滞して迂回していってる感じで」
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 警察によりますと、引っ越し業者の2トントラックが踏切を渡り、そのすぐ先の急勾配の坂を上る途中、トラック後部のバンパーが線路の溝に引っかかり動けなくなったというのです。

 実はこの踏切では去年4月と10月にもトラックの立ち往生が起きています。付近の住民によると過去にも頻発しているといいます。

 (踏切付近の住民)
 「もう数十年の間に何回も起こってますもん。一番怖いのは(電車との)事故ですよね、阪急のね。阪急の事故が起きたら大変ですもんね」

近隣住民『底をぶつけた車はいっぱいいる』

 実際どんな踏切なのか、憤懣取材班が車で通ってみました。

 (記者リポート)
 「道幅がかなり狭いですね、ギリギリです。おぉ結構揺れますね。そして踏切が終わった直後から急な坂道が始まります」
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 踏切に繋がる市道の幅は約3m。車がすれ違うことも困難な狭さです。
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 踏切付近の線路はカーブになっているため傾斜しています。そのため踏切内にはデコボコがあり、乗用車も底を擦りそうになりながら通過します。
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 坂を下ってきた車も地面スレスレ。アスファルトには深い傷が残っています。

 (踏切付近の住民)
 「結構慎重に運転しないと底をぶつけたりする。底をぶつけた車はいっぱいいますよ。僕は通らないようにしている」

トラック後部のバンパーは「突入防止装置」

 一方で、トラックのバンパーにも原因があるという声もあります。トラック後部のバンパーは「突入防止装置」とも呼ばれ、事故の際、追突した車がトラックの下に潜り込むのを防いでいます。車種によってはこのバンパーが地面に近い場所に取り付けられるケースがあるといいます。

 (運送会社を経営する西原一郎社長)
 「この部分ですね。衝突があった時に車が中に入らないようにということですね」
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 そして『そもそもトラックのドライバーは地面との接触を意識しづらい』と運送会社を経営する西原さんは指摘します。

 (運送会社を経営する西原一郎社長)
 「(Q後部バンパーを気にすることは?)あまり極端にはないですね。どちらかというと箱型のトラックは高さ制限とかのほうが事故やトラブルが多いんですよね。なかなか起こりにくい事故の事例だとは思うんですけれども、それがよっぽど危険なことだとは思いますね」

「安全な踏切」あるがナビでは「危険な踏切」に

 立ち往生の原因は踏切の形状とバンパーの位置に関係があるようですが、ではなぜトラックはこの危険な踏切を通るのでしょうか。

 (踏切付近の住民)
 「ここを知らない軽トラックとかコンテナが通ります。知っている方はここを通りません」

 問題の踏切の約100m先には勾配が緩やかな踏切があり、地元の人は迂回してここを通るといいます。
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 しかし今年7月に事故を起こしたトラックの運転手は『ナビに目的地の住所を登録したらこの道が出てきた』と警察に説明。憤懣取材班がナビゲーションにも使われる地図サイトで確かめてみると…。

 (記者リポート)
 「確かに問題の踏切を通るルートが設定されていますね」  

 目的地までの距離は隣の踏切を使うルートとさほど変わりませんが、試した複数の地図サイトで問題の踏切を通るルートが推奨ルートとして示されました。

神戸市『勾配のどこかを低くするとどこかを高くしないといけない』

 神戸市は去年12月、踏み切り周辺の道路に注意を呼び掛ける電柱幕を設置していました。しかしその効果なく今年7月に立ち往生が起きました。
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 より効果的な対策はとれないのか。道路を管理する神戸市東部建設事務所の松岡栄蔵担当課長に聞きました。

 (神戸市東部建設事務所 松岡栄蔵担当課長)
 「(Q急勾配を無くすことは可能?)土地の低い所と高い所を繋いでいる道路なので、どこかを低くするとどこかを高くしないといけないので。そういう所でまた立ち往生する車が出ても難しいと思いますので。知らない方々に『こういう道があって危ないよ』ということをちゃんとわかっていただけるようなことをもう少し考えないといけないと思います」

 現状ではドライバーへの周知を徹底するしか方法はないといいます。

 トラックの立ち往生が相次ぐ危険な踏切。取返しのつかない事故が起きる前に、抜本的な対策が求められるのではないでしょうか。