大阪市内に『ゴミをステルナ』と書かれた貼り紙が掲示されている住宅があります。この家はいわゆる“ゴミ屋敷”で、近隣住民からは「危ない」「火災時が心配」などの声が聞かれます。一体、何が起きているのか、取材班が住人の男性を直撃しました。

家の前にクーラーボックス、工具、鍋のフタ 入り口には『ゴミをステルナ』の文字

 大阪市東淀川区の線路沿い。住宅密集地の中に、ひと際目立つ古民家があります。
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 入口を塞ぐようにモノが置かれていて、さながらゴミ屋敷です。
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 (記者リポート)
 「見てみますと、台車、その上にクーラーボックスのようなものが置かれていますね」
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 他にも複数の傘や金槌などの工具類、鍋のフタなどあらゆるものが混在しています。
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 家の裏手に回ってみました。

 (記者リポート)
 「中が見えてしまっていますね」

 家の主はいないようです。
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 民家の周辺に置かれたものはゴミなのでしょうか。入口には『ゴミをステルナ 迷惑』と書かれた貼り紙もあります。これは一体、どういう意味なのでしょう。

ゴミとして捨てられたものを集めている?近所の住民「迷惑です」

 近所の住民に話を聞きました。

 (近所の住民)
 「新聞紙とか何か訳のわからんものがいっぱい家の中に入っていまして、(住民)本人はどこで寝ているのかなという感じですわ。あっちこっちから寄せ集めてくるんじゃないですかね」
 「迷惑です。近所の方皆さんおっしゃっています。小学校の子どもたちが(家の)前を通るので危ない。衛生面も(不安)ですよね」
 「表に燃えるようなモノを置いていらっしゃるので、それに火をつけられるようなことがもし起こったら、うちの方にも延焼する可能性がありますので、それが一番心配です」

 近所の住民らによりますと、この家には70代の男性が1人で暮らしていて、どこかでゴミとして捨てられていたものを集めているとみられています。

「ゴミのような山」が道路にはみ出し道幅を狭める

 12年前(2010年)の現場の様子を確認すると、民家の前にはまだモノは置かれていません。
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 近所の住民らによりますと、男性と同居していた母親が亡くなったのを境に年々モノが増えていき、気づいたときには今のような状態になっていたといいます。
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 ゴミのような山は、家の入り口だけでなく道を挟んだ反対側にもできています。両側から一部が道路にはみ出しているため道幅が狭くなってしまっています。
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 (記者リポート)
 「(家の前の道に)車が来ましたが、危ないですね。ゴミがかなり邪魔になっています」

 住民らにとっては通りにくい状況が続いています。

 (通行人)
 「年いってるから(車に)当てられたりしたら死んでしまうから、車を通してから通る」

家の前にゴミを捨てていく人も

 さらに、信じられない事態が起きていると話します。

 (近所の住民)
 「ああいう状態だから、みんながゴミを放りに来て、それで『ステルナ』という看板を(住人の男性が)自分で書いている」

 なんと、ガレキの山をめがけてゴミを捨てる人がいるというのです。
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 取材班が民家の前で様子をうかがってみると、通行人とみられる男性が、空き缶が入ったゴミ袋を白昼堂々と放置していきました。
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 別の男性も何かを置いていったようです。
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 (記者)「今、何か置いていかれましたけど?」
 (男性)「いや、アレや…。広告のアレ」
 (記者)「ゴミじゃない?」
 (男性)「ゴミじゃない」
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 男性が置いたのはスーパーのチラシの束。これはゴミではないのでしょうか。まさに“ゴミがゴミを呼ぶ”実態です。

区役所「男性と話ができていない状況」 ゴミ屋敷に関する条例もあるが…

 取材班は何度も家を訪ねましたが、この日も家にはいないようでした。
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 地域住民はこれまで「何とかしてほしい」と区役所などに相談。区役所側も現場を確認し、男性への接触を試みたと言いますが…。

 (大阪市東淀川区役所・保健福祉課 原結花課長)
 「残念ながらお声掛けはさせていただいたんですけど、お家の中に入ってしまわれまして。ご本人とお話ができていない状況ですので、どのような対応が必要かについて判断できる状況ではない」
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 大阪市では「ゴミ屋敷」について、強制撤去などの対策が取れる条例がありますが、対象になるのは害虫や悪臭などがある場合に限られています。今回の民家に置かれたモノはゴミかどうかわからないので対応できていないというのです。

早朝に『自転車の整頓』『ゴミの分別』する男性の姿…この人が「ゴミ屋敷」の住民?

 住民の男性は一体どこにいるのか。取材班は、最近住民と会ったという人物に話を聞くことができました。

 (住民の知人)
 「(住民男性は)自転車の整理に来たり、駅前のゴミを拾ったり、朝、1人でやっているからね。私も声をかけて時々手伝うこともあるねんけど」

 男性は早朝に最寄り駅の周辺で自転車の整理や掃除をしているというのです。
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 3月16日の朝6時すぎ、取材班が駅前で待っていると、白い髭を生やした男性がやってきました。この人が「ゴミ屋敷」の住民でしょうか。
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 (記者)「自主的にやられている?」
 (男性)「そうや」
 (記者)「毎朝ですか?」
 (男性)「うん。自分勝手なやつやもん。要するに、みんな他人のこと気にしてへんやん。めいめい勝手や」
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 男性は駐輪場の自転車を整頓した後、近くのマンションのゴミ袋を確認していました。

 (記者)「分別している?」
 (男性)「そうや」

男性「放っておいてくれ。ボチボチ片づけていく」

 本当にこの男性が「ゴミ屋敷」の主なのか。取材班が民家の前で待っていると、あの男性が帰ってきました。家の話を聞こうとすると…。

 (男性)「放っておいてくれや!関係あらへんやろ!」

 突然、男性は声を荒らげます。

 (記者)「周りの皆さんが迷惑されているが?」
 (男性)「金がないからボチボチしかできへんねん、アホ」
 (記者)「何か手助けがあれば片付けられる?困っているということでは?」
 (男性)「放っておいてくれや」
 (記者)「放っておいたらあのままでは?」
 (男性)「おたくらも仕事やけど、俺もボチボチやっているんやから」
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 「ボチボチ片づけていく」と話した男性。置かれているモノは何なのかを尋ねると…。

 (男性)「缶や。空き缶や」
 (記者)「缶以外にもいっぱいあるが?」
 (男性)「もうええやんもー、片付けるって言っているやん。放っておいてくれや、もう」
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 男性は取材に対して「今後2~3年かけて徐々に元の姿に戻していく」と話しました。

 区役所側も「男性が対話に応じてくれれば相談に乗りたい」と話していて、取材班は今後も状況を見守っていきます。