バスがバス停に到着すると横断歩道を塞いでしまう…そのようなバス停を国が『危険なバス停』と判定しています。こうした場所では、バスの後方から道を渡ろうとする人がいた場合、対向車の死角になってしまい、事故が起きやすいとされています。実際にこのような状況で事故が起きたバス停もあります。国は改善を求めていますが現状ではなかなか難しいようです。

横断する人がバスの死角に

あるドライブレコーダーの映像です。片側1車線の道路を車が走っています。
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すると前方に停車するバスがあり、反対車線に出てバスを追い越そうとしたその瞬間、バスの前から2人の女性が飛び出してきました。
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さらに別のドライブレコーダーの映像でも、バスの死角から道路を渡る人が現れ、あわや事故になるところでした。
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バスを追い越そうとする車側も、道を横断しようとする人も、バスが死角になって直前までお互いを認識していないようです。いずれもバスが止まっていたのはバス停でした。

横浜市内の危険なバス停で4年前に起きた死亡事故

4年前に横浜市内で起きた事故。その事故が起きたのはバス停で、道幅は狭く、すぐ近くに横断歩道がありました。
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当時、バスは横断歩道を塞いでバス停に停車。バスに乗っていた女の子は車体の後ろに回り、横断歩道を渡ろうとします。その時、対向車にはねられ、死亡しました。バスが死角になっていたとみられています。

事故があったバス停は、その後、横断歩道から離れた場所に移されました。国土交通省は事故を受けて全国のバス停を調査。そして当初『危険なバス停』が約1万か所もあることがわかったのです。

「危ない」近隣住民も指摘する“最も危険”なバス停

調査で“最も危険”と判定されたバス停が大阪府寝屋川市にあります。

(記者リポート)
「1台のバスがバス停へとやってきました。横断歩道の上に止まっていますね」
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バスは横断歩道の上に停車して、その後、出発していきました。

(近隣住民)
「危ない時はある。バスが止まるでしょ。バスを降りてから横断歩道を渡る人がいる。危ない、危ない」

この場所もバスの後ろから横断歩道を渡ろうとした人が対向車と接触する恐れが指摘されています。対向車からはバスが死角となって見えにくいのです。

さらに取材班が現場を取材しているとこんな光景が…。

(記者リポート)
「後続車が次々とバスを追い越していきます」

現場は片側1車線の道路で、指示器も出さずに次々と車線をはみ出してバスを追い越していくバイクや車が見受けられました。またバス同士がすれ違う際にはギリギリを通過していきました。

こうした危険なバス停の調査は約2年前に始まり、その危険度がA~Cの3段階に分けられています。この寝屋川市のバス停などは最も危険なA判定です。
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【A判定】バスが横断歩道を塞ぐように停車、または3年以内に人身事故が発生
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【B判定】バスが横断歩道の5m以内に停車、または交差点に車体がかかり停車
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【C判定】バスが交差点から5m以内に車体がかかり停車

記者もヒヤリ 目の前に突然車が

大阪府豊中市にあるバス停は、B判定の危険なバス停です。何が危険なのか、近くの住民に話を聞きました。

(近隣住民)
「止まっているバスを追い越す車が多いから危ない。そして乗降客が横断歩道を渡るので危ない部分はありますよね。(Qヒヤッとすることは?)あります。歩いていたり車に乗っていたりしても」

このバス停では、横断歩道のすぐ手前にバスが停車します。対向車が走り去ると、バスに乗ろうと慌てて横断歩道を渡る人がいました。その直後には指示器を出さずに車がバスを追い越していきました。
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反対車線にあるバス停もB判定です。こちらは横断歩道を通り過ぎてバスが止まります。対向車からは横断歩道を渡る人の姿が見えにくいのです。
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(車内からの記者リポート)
「あっ、今、人が飛び出して来たんですが、バスの陰になってかなり見えにくいです」
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取材班がカメラを持って横断歩道を渡ってみると、目の前に突然、車が現れました。

(近隣住民)
「せめて横断歩道の場所がもうちょっとあるんじゃないのかなというのと、信号をつけてもいいんじゃないかと。子どもの通学路にもなっているので、できるだけ早く対策をというところではあるのかなと。交通事故がいつ起きてもおかしくないというところはあると思うので」

改善が進まぬワケとは?

調査で危険と判定された後、去年9月までに対策が取られたバス停は全国でわずか13%に留まっています。大阪ではどこまで対策が進んでいるのでしょうか。12月6日、近畿運輸局に聞きました。

(近畿運輸局大阪運輸支局輸送部門 河原正明さん)
「(危険なバス停は)大阪では現在441か所ですね。(Q当初から改善された数は?)6か所となっています。(Qパーセントでいうと?)1%です」

大阪ではバス停を移設したり横断歩道をずらしたりするなどして危険度が改善したのはわずか1%。バス停に張り紙や車内アナウンスで注意喚起するなどの対策に留まっています。

(近畿運輸局大阪運輸支局輸送部門 河原正明さん)
「どうしてもバス停を移設するときに、そこの地権者や前面者のご理解をなかなか得にくいことが一番大きな要因かと思います。『バス停をぜひ我が家の前に置いてください』という人はなかなかいらっしゃらないので」

運輸局によりますと、バス停の移設には自治体などの道路管理者・土地を所有する地域住民・警察などの承諾が必要で、容易ではないといいます。

バス停の移設は難しいので「横断歩道」を移動

一方、お隣の京都では、少しでも安全を確保しようと様々な試行錯誤を凝らしています。太秦にある危険度A判定のバス停。道も狭く、バス停自体を移設することは難しく、考えられた策は…。

(京都市交通局自動車部技術課 清水稔也さん)
「現在の横断歩道の位置を1~2mほど動かしていただく。それによってバス停から離れますので、安全に横断していただけると」
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横断歩道の位置をずらすことで、バスが塞ぐことを解消して、危険度を下げようとしています。苦肉の策にも見えますが、京都府では危険なバス停472か所のうち84か所(18%)を改善させました。
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(近畿運輸局京都運輸支局 金澤重之さん)
「京都は住民の方々、観光客の方々の利用頻度が非常に高い、バス交通に対して関心が高いエリアでございますので、地域住民の方々を含めて非常に協力していただける土地であると我々は考えています」

全国に今も残っている危険なバス停は約9000か所。全てを解消することは困難ですが、より安全性を確保できる細やかな対応が求められています。