京都市は現在、深刻な財政難に陥っていて、突然『保育所を廃止にする方針』を打ち出したり、市バスや市営地下鉄の『運賃の値上げ』を決めたりと、“市民の痛みを伴う改革”を行っています。そんな中、今年9月に改装工事が完了した京都市の市議会議場。“京都らしさ”にこだわって宮殿のような趣になっていました。財政難の中で京都らしさはどこまで必要なのか。市民からは怒りの声が上がっていました。

財政難で『運賃も保育料も』値上げ検討

京都市内の大学に通う大学2年生の丸山はるかさん(19)。滋賀県の実家から電車で通学していますが、今年10月に京都市が打ち出した“ある方針”に怒りを募らせています。

(丸山はるかさん)
「本当に学生に優しくないというか。大学生の生活を守っていくためには、値上げはもちろんしないでほしいなって思います」
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京都市が打ち出したのは、早くて2024年度から、市営地下鉄の運賃30円値上げや、市バス運賃を20円値上げするという計画でした。
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京都市営地下鉄は初乗り運賃が220円で、現状でも日本一高い状況ですが、さらに値上げするというのです。

(丸山はるかさん)
「JRと地下鉄を合わせて、3か月分の定期代で約5万円を払っています。元々高いなって思うし、学割もあまり効かないから余計に高いなって感じます」
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京都市営地下鉄は、全国の鉄道の中で学割率は2番目に低く、さらに通学定期が1か月で1000円以上値上げになる可能性もあります。

丸山さんは、父親が病気を患っているため、教科書をメルカリで買ったり食費を削ったりするなどして生活をしていますが、これ以上の負担増は厳しいと話します。

(丸山はるかさん)
「学生の街だからこそ支援できるところはしてほしいなって思うし、なのにこうやって値上げを検討していて、すごく矛盾しているなっていうのは思っているので。ちょっと値上げはしない方向で検討してほしいなと思います」

学生にまで負担を強いる京都市。その背景にあるのは財政難です。

(京都市 門川大作市長 今年6月)
「このままでは10年以内に京都市の財政は破綻しかねません」
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京都市はすでに実質8000億円以上の借金を抱えていて、将来の借金返済のために積み立てていた減債基金も2005年度から切り崩しを続け、5年後にはこの基金も枯渇。破綻を意味する「財政再生団体」に転落する危機に直面しています。
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こうした事態に市は財政改革を打ち出し、バスや地下鉄を安く利用できる敬老パスの見直しを決めました。さらに保育料の実質値上げも検討しています。

“市民の痛みを伴う改革”に、市民からは反発の声も上がっています。

(京都市民)
「財政難っておっしゃるけれども色んなところに無駄があるんじゃないかと思いまして。市役所がきれいになった段階で財政難が発覚しましたよね、公には。(Q地下通路とかもつくっているが?)あれはね、一度も私は利用したことないですし、あそこを通るたびにちょっと不満が…」

一方で『159億円かけて改修工事』された豪華な市役所

天井から差し込むステンドグラスの光。ここは教会ではありません。京都市議会の議場です。
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(京都市会事務局総務課 胡桃雅昭庶務係長)
「古い趣は残しつつ、新しいバリアフリーなどですね、現代に必要な機能を備えた形で改修をさせていただいております」
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昭和初期に建設された京都市役所本庁舎は、老朽化が進んでいたことや、耐震性を高めるために、4年にわたって改修工事が行われ、今年9月に完成しました。今年10月に憤懣取材班が訪れると“普通の市役所にはない光景”が広がっていました。
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(京都市会事務局総務課 胡桃雅昭庶務係長)
「壁のこちらが『緞子張り(どんすばり)』という技法が使われておりまして、当時の色合いを再現しているというところでございます」

市議会の議場は、ヨーロッパの宮殿などでも用いられている『緞子張り』という、織物を直接壁に貼りつける特殊な技法が用いられています。
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さらに歴代議長の顔写真は重厚な額縁に入れられていました。

(京都市会事務局総務課 胡桃雅昭庶務係長)
「(Q金ピカに見えますが?)額縁を作らせていただいておりまして、退任された後に作らせていただくという形ですね」
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式典などで利用される「正庁の間」にも緞子張りが用いられていました。
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(京都市庁舎管理課 山本眞人課長)
「京都市というのは、伝統と文化と言われている面もありますので、基本的には創建当初の形を基本にした」
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照明やカーテンも昭和初期の姿を再現して新たに作られました。
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部屋の中には目的のわからない作りになっている所もありました。

(京都市庁舎管理課 山本眞人課長)
「(Qこれはなんですか?)復元はしていますけど、あそこを使ってなにかしてるとかはないです」
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そして庁舎内にはなんと「茶室」まで作られてました。天井にも和の演出が。来賓をもてなす部屋だと言います。

(京都市庁舎管理課 山本眞人課長)
「外国からの賓客とか来られるときについては、京都は和のシンボルという都市ではありますので、和のおもてなしができるように」
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屋上には市民が利用できる庭園も新たに作られました。市は市役所の改修に当初138億円の費用を見積もっていましたが、資材の高騰などで21億円増え、約159億円の工費がかかりました。
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さらに今年9月には、“市民が雨にぬれずに市役所に行ける”として、市役所と地下鉄につながる地下街とを結ぶ地下通路が完成しました。平日の昼間は人通りは少なく、さながら職員用の通路となっていました。

市民からの怒りの声…市の担当者に聞くと「励ましの声もいただいている」

こうした京都市の施策について、市民はどう感じているのでしょうか。

(京都市民)
「159億、壮大な。財政難やったらなんとかならないのかなっていうような気がします」
「それはたぶん働いている方の自己満足というか、そういうのかなっていうのは思いますね」
「財政難はどこに問題があったのか。門川市長は3期もやっていたら12年もやってるわけやんか。12年の間にどういう解決をしようとしたのか、全然見えへん僕らには。だんだん腹立ってきた」
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こうした市民からの声を京都市の担当者にぶつけてみると、次のように話しました。

(京都市庁舎管理課 山本眞人課長)
「文化財的価値・歴史的価値が高いというふうにご指摘もいただいていますので、古都京都、伝統と文化、街のシンボルである京都として、それを維持しながら再整備をしていくというほうで判断をさせていただいております。(Q理解は得られると?)京都の特性を考えたら、『目先のことだけにこだわったらあかんで』と、そういうふうに市民の方からも励ましのような声もいただいています。しっかりとご理解いただけるようにきちんと説明していくのが我々の責務だと思っています」

250万円かけて新キャラクターも制作

貴重な予算はこんなところにも使われています。

今年5月に市の広報誌に登場したキャラクター「京乃つかさ」。製作費は250万円。これまで「ミッケ」というキャラクターがいましたが、「酒に酔うといけずになる」などと設定が複雑で使いにくかったというのです。
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市が作ったキャラクターはすでに140体に上っています。

財政難で『破綻』の文字もちらつく京都市。本当に必要なところに予算は投じられているのか。第三者の目で検証することも必要ではないでしょうか。