夜に営業を続けている店に対して過度な正義感などで嫌がらせなどの行動に出る「自粛警察」の存在。新型コロナウイルスの感染が広まり始めた去年4月以降、「自粛警察」による被害が相次ぎました。こうした嫌がらせは今も続いているようです。その実態を取材しました。

大量の「アホ」の貼り紙 入り口には生ゴミや油も

大阪市東淀川区のマンションを所有している崔領二さん(41)。今年4月、1階のドアや郵便ポストなどに「アホ」と書かれた紙がびっしりと貼られているのを見つけたといいます。

(崔領二さん)
「郵便受けもいろいろ、鍵も何個か壊されるなど。いろいろやられて情けなくて、ばーっと結構、涙があふれてきた」
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崔さんは当時の様子を映像に残していました。1階のドアに無造作に貼り付けられた「アホ」と書かれた紙。
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さらに中にも「アホ」の貼り紙が…。発見時は全部で100枚ほど貼られていて、1枚1枚はがしているうちに悔しさで涙があふれてきたといいます。

実は、こうした貼り紙はこれが初めてではありませんでした。

(崔領二さん)
「貼り紙されていた時にあった紙だけじゃなくて、これ以外にもたくさんある」

今年2月以降、何度も中傷する貼り紙があったといいます。
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『カレーくせーでてけ』
『キエロ』

(崔領二さん)
「もちろん許せないですよ、はっきり言って。許すつもりもないし、許してはいけない、こういうのって。こんなコロナ禍の中の誹謗中傷でギブアップしますとか、会社をたたみましょうとか、ふざけるなという話です」

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被害は中傷ビラだけではありません。マンションの入り口付近に、たばこの吸い殻や生ごみを捨てられるなどの被害もあったといいます。

(崔領二さん)
「(入り口に)ドサッと生ゴミとかを捨てたり、油とかをダーってかけたり、吸い殻をまとめて500本、まとめてここに捨てに来ている。冷静になれと言われても、やられた本人は怒りしかない」

一体、なぜこのような被害を受けたのでしょうか。

コロナ禍での「プロレス団体」立ち上げが原因?

崔さんの職業は「プロレスラー」。今年1月にプロレス団体「コレガプロレスリング」を立ち上げ、代表を務めています。当時、大阪で2度目の緊急事態宣言が出されていた最中の旗揚げでした。

プロレスのリングがあるのは大阪市福島区。しかし、中傷被害を受けたのは大阪市東淀川区のマンションで、別の場所です。

(「コレガプロレスリング」代表 崔領二さん)
「正直、プロレスは今、なかなか昔みたいにスポンサーも集まらないし、なかなか経営していくのがすごく厳しい状態で、プロレス競技を目指す人が食べていけるようにということで、マンションを建てて賃貸契約をしている」
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このマンションはプロレスラーの寮などにも使われていて、コロナ禍での旗揚げを快く思っていない人物が「自粛警察」のような行為をしていると崔さんはみています。

マンション1階のインド料理店では電動自転車に被害

さらに今年6月、マンションの1階に入るインド料理店でも…。

(インド料理店の店長)
「これ見てください。(Qこれはなんですか?)自転車のスタンド。曲げることはできない。めっちゃ重たい」

ぐにゃりと曲がった電動自転車のスタンド。マンションの外に止めていた自転車が夜の間に何者かによって嫌がらせを受けたのです。スタンドはかなり硬く、強い力で曲げられたことがわかります。
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(インド料理店の店長)
「びっくりしました。誰がするのかわからないから。1回警察に連絡しようとしたが本当に言葉がわからないから…怒っている」

コロナ感染拡大と「自粛警察」

偏った正義感や不安感から過度な攻撃を行う「自粛警察」の存在。新型コロナウイルスの感染が広まり始めた去年4月。旅行先の外国から帰国した学生らでクラスターが発生。近くの飲食店では大学を名指しした貼り紙が…。

(飲食店の貼り紙)
『当面の間、大学生並びに交流の有る他学生方のご入店はご遠慮お願い致します』
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感染の震源地と名指しされた大阪・ミナミの飲食店では去年5月、ドアの入り口に落書きがされるなど被害が相次ぎました。
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さらに去年6月、美容院にも中傷する貼り紙が貼られていました。休業要請の対象ではないのに営業しただけで被害を受けました。当時、どんな思いだったのか。今年8月、改めて美容院のオーナーに話を聞きました。
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(「hair salon MADE」 杉野将史オーナー)
「貼り紙はここ(ドア)に貼られていましたね。当日はびっくりしました、さすがに、腹が立ちましたけれども。その後は結局、全くわからずじまい」

1年が経った今は、嫌がらせを受けることはなくなったといいます。

(「hair salon MADE」 杉野将史オーナー)
「(自粛の)ストレスなどが嫌がらせにつながっていたんじゃないかと思うんですけれども。今は、国が自粛しろと言ってもみんな正直聞いていない、大半が」

専門家「自粛警察的な声をあげたところでどうしようもない」

集団心理などに詳しい甲南大学の田野大輔教授は自粛要請が続く中で、自粛警察も変化してきていると話します。

(甲南大学 田野大輔教授)
「みんなコントロールがきかなくなっているから、それに対して誰か自粛警察的な声をあげたところでどうしようもない。そういう状況をまねいている政府に対して、そろそろ批判の矛先が向かいつつあるのかなという感じはあります」

感染対策を徹底して運営 プロレスラーたちの思い

崔さんが代表を務めるプロレス団体「コレガプロレスリング」。イベントの客入れは収容率の50%までという要請ですが、感染症対策を徹底するため「500席あるうちの80席を上限」と、より厳しくしています。プロレスの試合は日曜日を除く週6日。ファンはマスク着用で大声は出さずに観戦。試合は1試合終わるごとにロープの消毒が行われますが…。
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(プロレスラー ボディガー選手)
「オーイ!!!消毒やりすぎやろお前!滑るぞこれ!」

崔さんのプロレスの売りは“楽しく魅せる”こと。リング内を消毒する時は試合のワンシーンとして演出します。

(観客)「やっぱり笑いたいんですよね。特にこんなご時世なので」
(観客)「ここは大きいですし。密という感じには思えませんよね」

感染症対策を徹底しながら客を楽しませているレスラーたち。「自粛警察」の標的になっていることについては…。
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(プロレスラー 大門寺崇選手)
「否定される方の声もちゃんと受け止めますし、でも、僕たちは何かルールを破って、ここでプレーしているわけではないので。ちゃんとお客さんの安全第一を考えて試合を行っているので、それだけはわかってほしい」
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(プロレスラー 入江茂弘選手)
「自分としてはこれ以外の仕事がないので。生活のため、生きていくため」
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“誰かに不満をぶつけたい”混沌とする時代に顔の見えない人たちからの攻撃。そんなものには屈しないと闘い続けています。

(8月19日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『憤マン』より)