去年5月、住宅街にある“空き家”の中で140匹もの犬が飼育されているのが見つかりました。地域住民の通報により犬は保護されましたが、その後、空き家は1年近くそのままの状態で放置され、悪臭を放っているといいます。なぜこのような事態が起きているのでしょうか。

鍵の穴から“犬の鼻” 中を覗くと10匹以上の犬

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今年3月、取材班が訪れたのは兵庫県三木市の2階建て住宅。住宅街の中にある普通の民家に見えるのですが、よく見ると、敷地内にはゴミが散乱し、ドアも壊れています。
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(近所に住む 山本希代子さん)
「ここの前を通るたびに犬の鳴き声がしていて、1匹ではなく何匹もの鳴き声がしたのと、犬同士が喧嘩している鳴き声とか、子犬が鳴く声とか悲痛な声がしたので、ちょっとただごとじゃないなというのは薄々感じていました」

近所に住む山本希代子さん(48)は、去年5月にこの民家の前を通った時にただならぬ違和感を覚え、その1か月半後、ある光景が目に飛び込んできたといいます。

(山本希代子さん)
「(ドアの)鍵穴のあいている部分から、“犬の鼻”が代わる代わる出ていた」

その時の映像を記録していました。

家の中から聞こえる犬の鳴き声。そして壊れた鍵穴から見えたのは犬の鼻。水を与えようとすると次から次へと犬が鼻を出します。
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鍵穴から中を覗くと朽ち果てた建物の中に10匹以上の犬が確認できました。

(山本希代子さん)
「子犬がかなり苦しそうな状態で倒れかかるような状態ですごく弱っていた。お隣の方がおられたので状況を聞くことができて、ここが何年も前から空き家だということがわかりまして」

山本さんはすぐに警察や動物保護団体に通報。犬たちは保護されたといいます。

保護団体が家に入ると…そこには約140匹の犬が

保護された犬たちはその後どうなっているのか?神戸市内にある保護団体を訪ねました。

(動物保護団体「GUARDIAN」 秋山文子代表)
「この子、この子。今残っているのは6~7匹かな。普通の民家が家の前にも隣にもあり、こんな約140匹の犬がいたということにびっくりした」
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なんと、その民家の中に約140匹もの犬がいたといいます。こちらの団体では約60匹を引き取りました。

(動物保護団体「GUARDIAN」 秋山文子代表)
「来た時にかまれながらもボランティアさんが洗って。(家の中で)好き放題して生きてきたから、ハウスすることを覚えさせて、トイレの場所も教えてということを、半年くらいかけてやった。世話をしている者の言うことは聞くようになったかなと」
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犬を保護するために民家の中に入った際の映像です。入るなりたくさんの犬が近寄ってきます。
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奥の部屋を見ると数十匹の犬がひしめき合っているのが確認できます。

さらに、2階に続く階段の上からも犬がこちらの様子を伺っています。子犬も数匹見つかりました。
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(保護スタッフ)「赤ちゃんはちょっと衰弱しています」
(保護スタッフ)「生後何か月くらいですかね?」
(保護スタッフ)「1か月経っていないと思う」

犬は床下や仏壇の引き出しの中からも見つかるなどして、約140匹の保護活動は一晩かけて行われました。
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(動物保護団体「GUARDIAN」 秋山文子代表)
「今でこそ、かむことはもうしてこないけど、あの時は触ったら手を思いっきりかまれた。自分が抱えられない頭数は飼うべきではないし、飼っているうちに入らない」
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取材によりますと、この民家には元々家族が住んでいましたが、病気などで全員が亡くなったとみられています。その後、知人の50代の男性がこの民家で犬を飼い始めたといいます。犬の保護から2日後の去年6月に男性は動物愛護法違反容疑で警察に逮捕され、その後、罰金刑を受けています。

こうした『多頭飼育崩壊』によるトラブルは全国で相次いでいます。今年4月にも東京都内の自宅で劣悪な環境下で犬を飼育したとして自称占い師の40代の女が動物愛護法違反容疑で逮捕されています。

犬がいなくなった後も放置される民家『悪臭、ネズミ、ムカデ』

約140匹の犬が保護された兵庫県三木市の民家については、飼い主の逮捕で一件落着かと思いきや、そうではないようです。近所の住民は今も悩まされているといいます。

(近所の住民)
「困ったことはネズミとかムカデとかいろんなものが(自分の家に)入ってくる。ムカデも親指ぐらいの大きさ。撤去して更地にしてほしい」

犬を飼育していた男性が逮捕されてからまもなく1年になりますが、民家は清掃も解体もされておらず、今も悪臭などが付近に漂っています。

(近所の住民)
「(Q男性は民家の住民?)いや、違うよ。ここの(住民の)お父さんの会社の社員か何か。(Q犬を飼っていたのは住民ではない?)そうそう、全く関係ない」

近所の住民らによりますと、逮捕された男性は建物や土地の所有者ではなく、民家は誰が管理しているのかわからない状態だといいます。

所有者はどこにいる?

取材班が入手した民家の建つ土地の登記簿。そこには、神戸市須磨区に住むA家族と、神戸市垂水区に住むB家族の名前が記されています。あの民家の所有者なのか?取材班は早速、神戸市須磨区のA家族の住所を訪れてみました。
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(記者リポート)
「このあたりに土地の所有者の住むアパートがあるはずなんですけれども、住所でいうとあちらですが、すでに駐車場になってしまっています」
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そして神戸市垂水区のB家族の住所も訪ねてみました。そこには民家がありましたが…。

(記者リポート)
「名前が書いてありますけれども、違う名前が書いてあります」

インターホンを押すと、この家から出てきた人が取材に応じてくれました。

  (記者)「所有者をご存じですか?」
(民家の人)「ここですか?いや、わからないです」

結局、取材では所有者はわかりませんでした。

三木市の見解は?

所有者不明の『迷惑住宅』。行政側はどう対応しているのか。三木市に話を聞きました。

(三木市生活環境課 西本正仁課長)
「あれだけの多頭飼育の情報は入っていなかったものですから。所有者はすでに死亡しておられましたので、いわゆる相続人を探していった。最終的に権利者が確定しました」

三木市によりますと、半年ほどかけて戸籍などをさかのぼり、民家の相続人を特定。しかし、相続人にはそもそもその家を所有しているという認識はなく、市に家を寄付して市が民家を清掃して解体する方針だといいます。

“犬屋敷”と化した民家。問題発覚から放置された状態が続いていて、住民らは夏が来るまでに建物をどうにかしてほしいと訴えています。

(5月3日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『憤マン!』より)