0歳~6歳までの園児を預かる京都市営の保育所では2021年度も“全ての年齢”で受け付けをしていましたが、「1歳児と3歳児以外の受け入れを中止する」との知らせが“突然"届きました。一体なぜこのようなことになったのか、困惑する保護者に話を聞きました。

保育所に申し込んだのに…「受け入れは未定」と通知

京都市中京区にある市営の聚楽保育所。午前7時~午後7時まで園児を受け入れていて、共働きの子育て世帯にとっては貴重な受け皿になっています。

聚楽保育所に長男を通わせていたAさん。長男はこの春に小学生になりましたが、0歳の次男も入所させようと2020年11月に申し込みを済ませました。しかし、思わぬ事態が起きたといいます。

(Aさん)
「最初は『未定』ってどういうことだろうという困惑と、入所できないことがあると担当者から聞いて、絶望しかなかったです」
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春からの新規入所の申し込みが締め切られた後、京都市からAさんに次のような文書が届きました。

(京都市の通知・2020年12月7日)
『令和3年4月の保育利用申込受け入れ(新規入所)については「未定」としております』

京都市は突如、聚楽保育所について新規入所を受け入れるかは「未定」と通知しました。

結局は「受け入れない」と通知

さらに、その10日後には別の文書が届きました。

(京都市の通知・2020年12月17日)
『継続した保育の提供をお示しできない状況であることから、受け入れ枠について未定としておりました。1歳児及び3歳児についてのみ、受け入れ枠を設定します』

一旦は申し込みを受け付けながら、「1歳児と3歳児(2021年度に2歳か4歳になる園児)以外は新たな園児は受け入れない」と一方的に伝えてきたのです。

(Aさん)
「私の家庭は夫と私の両方が早出があったり残業があったりなので、ここ(聚楽保育所)でなければフルタイムでの復職はできないことがわかっていたので、かなり大きなショックでした」

「なぜ受け入れなくなったのか?」その理由とは…

一体なぜ、京都市は1歳児と3歳児以外の受け入れを取りやめたのか?書面にはこんなことも記されていました。

(京都市の通知・2020年12月17日)
『公営保育所としては廃止し、民間事業者に設置・運営を移管するよう調整を進めていましたが、候補者が辞退し、現時点で移管をどのように進めるかが決定していません』

京都市は2012年以降、財政難などから市営保育所の民間移管を積極的に進めていて、すでに4割の保育所が民営化されました。聚楽保育所も2022年4月から民間に移管されるはずでしたが、2020年10月になって突然、事業者側が辞退したというのです。市は『今後の保育所運営が不透明になった』として、待機児童が比較的多い1歳児と3歳児しか受け入れないことを決めたのです。

(Aさん)
「まったく納得ができなかったです。そもそも移管があってもなくても、今年度は市営保育所として運営される予定でしたし、なぜ0歳2歳4歳だけがこういった拒否にあってしまうのか」

Aさんは京都市に決定を見直すよう求めましたが市は受け入れず、結局次男を別の民間保育園に通わせることになりました。
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自宅から聚楽保育所までは歩いて10分ほどですが、民間の保育園までは路線バスもなく倍の20分以上かかります。また、受け入れ時間が午後6時までで、希望していたフルタイムでの復職を断念し、時短勤務となることを余儀なくされました。

(Aさん)
「やっぱり思っていた通り時間もかかるし、体力的にもかなりきついなと。復職したらこれを仕事前に毎日しないといけないのかと思うと、本当に大丈夫なのかなという不安しかないです」

一方、Aさんは次男の入所を認めるよう裁判所に申し立てましたが、「将来の運営状況を見据えた京都市の判断には一定の合理性がある」として裁判所はAさんの申し立てを退けました。

去年から娘をこの保育所に通わせている母親の不安「同級生が入って来ない」

憤りを感じているのは、Aさんだけではありません。聚楽保育所に4歳の息子・時生ちゃんと、4月に1歳になったばかりの娘・結生ちゃんを通わせている山口茜さん。

2020年度、保育所で0歳児は結生ちゃん1人でした。同学年の園児が入所してくることを心待ちにしていましたが、京都市が新規入所を認めなかったことで、4月からも“ひとりぼっち”の状態に…。このまま入所停止が続けば、小学校に進学するまで学年1人のまま過ごすことになります。
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(山口茜さん)
「同級生は入って来ないんだなと、不安に思いました。上の子(兄の時生ちゃん)は0歳からずっと一緒の子たちと兄弟みたいに遊んでいるから、そういう子たちがいないことは、もしかしたらつらいんじゃないかなと」

保育所側はひとつ上の学年のクラスに結生ちゃんを入れて混合クラスとしましたが、不安は消えないといいます。
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(山口茜さん)
「みんな(一学年上の子)がやっていることはまだできないし、もちろんみんな歩いているので。うちの子だけなので、まだハイハイしているのは。言葉っぽいものもみんな発しているけど、うちの子はまだほとんど言えないし」
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山口さんはほかの保護者らとともに新規入所の再開を求める署名活動を行い、3月に保護者や地域住民ら3500人あまりの署名を市に提出しました。

京都市の考えは?

こうした保護者らの訴えを京都市はどう考えているのでしょうか。取材班が京都市の担当者に話を聞きました。

(記者)
「新規入所停止の判断が募集終了後という事後的なものになってしまった、保護者は“後出しじゃんけん”をされたような印象を持っていると思うのですが?」
(京都市幼保総合支援室・公営保育所課長 木下尚彦さん)
「京都市の財政状況がかなり厳しくなってきたということで、“民間でできるものは民間で”という大きな方針の下、1歳と3歳以外の園児は(聚楽保育所)周辺の保育施設に受け入れ枠の空きがたくさんありますので、(聚楽保育所の今後は)縮小廃止も含めて、あらゆる観点から検討する」

専門家「後から悪い条件を出すのは裁量権の濫用」

京都市の判断に問題はなかったと言えるのでしょうか。行政の政策決定に詳しい同志社大学政策学部の武藏勝宏教授に聞きました。

(同志社大学政策学部 武藏勝宏教授)
「後から悪い条件を出すとか、特定の人たちを狙い撃ちにするような形での門前払いは、公平性という観点から非常に問題があります。私はこれは裁量権の濫用であると考えています」

突然の新規入所停止に翻弄される園児や保護者たち。「子育て環境日本一」を掲げている京都市ですが、保護者らは未だに納得できる説明を受けていないと不信感を募らせています。

(4月12日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『憤マン!』より)