4月4日夕方、発足されたばかりのこども家庭庁の記者会見室。まだ建築資材の匂いが残る出来立てほやほやのこの場所で、日本各地のこども新聞から派遣された13人のこども記者による小倉將信大臣記者会見が行われました。

会見形式は、大人の記者に対するものと同じです。まずは小倉大臣から冒頭発言として3分間ほど、こども政策の概要について説明がありました。大臣が使う言葉も「去る3月31日、子ども子育て政策の強化に関する事案、少子化対策のたたき台を取りまとめました。今回のたたき台では、従来とは次元の異なる思い切った政策をお示ししております」といったもので、通常の会見で使う言葉ほとんどそのままです。

そして、こども記者からの質問に移りましたが、その内容に、周りで見ていた大人たちは驚かされました。

週刊しもつけ子どもタイムズ記者の小林淑佳さん(新中学1年生)
「少子化について質問します。出生数が80万人を下回りました。こども政策は今後どのくらいの期間で、どんなことを達成していくなど具体的なアイデアを教えてください」

この質問に対し小倉大臣は「2030年になるまでのここ6、7年間が勝負であって、総理も時間との戦いと言っております」と前置きして、子育てをする親への支援や、保育士などの待遇改善、児童手当の延長、奨学金制度の拡充などについて説明しました。

毎日小学生新聞の足立礼実さん(新中学1年生)
「こどもが意見することができてもこどもに決定権がなく、話を聞いた大人たちが決めるのであれば、その人の考え方も入ってしまいフィルターがかかってしまいます。こどもは意見が言えるだけで決定権がなければ、本当のこどもまんなか社会とは言えないのではないでしょうか」

小倉大臣はまず、こどもの権利条約によってこどもは権利の主体者であることが明記されていることを説明し「皆さん方にはこの国の様々なことについて意見をいう権利があり、我々には聞く義務があります。こども家庭庁のもとでは皆さん方から集めた意見がどのように(政策に)反映されたのか、あるいはどういう理由があって反映できなかったのかも含めてきちんと話したいと思っています」と答えました。

南日本こども新聞オセモコの原口知花さん(小中一貫校新7年生)
「政策の持続可能性について質問します。こども家庭庁の政策は選挙のためのアピールだという一時的なものではなく、私達が大人になるまでずっと続くものでありますか」

小倉大臣は一瞬苦笑しましたが、「こども家庭庁は国会の意思のもとでこどもまんなか社会の実現をするために、縦割りをなくし、子どもや若者の意見を聞く組織が必要であるということが示されたわけでありますので、しっかりと選挙目当てだと思われないように、子どもたちのためにずっと続く組織であるというふうに思ってもらえるような政策をしっかりやっていきたいと思います」と答え、その後はこども大綱について丁寧に説明しました。

ほか「支援局でのヤングケアラーに対する具体的な支援策は」「母子家庭が多いが、女性の賃金を上げるには」などの質問や、「(制服の自由化で)女子がズボンをはくより、男子がスカートをはくのは勇気が必要だと思う」という意見、「大人の価値観をこどもが変える大人検定の実施を」といった提案もあり、この会見の取材に来ていた大人の記者も唸る展開となりました。

あまりに鋭い質問ばかりで「大人が手伝ったのかな?」と少し勘ぐってしまいましたが、こどもたちに聞いたところ、自分で調べて自分で考えたそうです。勘ぐってしまった大人の目こそが濁っていたのだと大反省しました。

小倉大臣も、通常の記者会見と同じように資料に目を通しながら真摯に答え、こども記者たちも熱心にメモを取っていました。

そして会見後は、小倉大臣からこども記者たちに名刺を差し出し、よく見る名刺交換タイムとなりました。いつもと違うのは交換する相手がこどもだということだけ。大臣が一貫してこども記者と対等に接していたのが印象的でした。

会見終了後、こどもたちに感想を聞きました。

茨城こども新聞の高木一佳さん(新中学1年生)
「自分の意見が積極的に言える環境があれば、私も意見をたくさん言って社会を変えられたらいいなと思います」

毎日小学生新聞の平野瑞貴さん(新小学6年生)
「大人と同じような立場で扱ってくれて、すごく嬉しかった。自分が認められたという感情があるのですごくいいと思います」

朝日小学生新聞の弓立燈子さん(新小学6年生)
「質問にちゃんと答えてくれてうれしかったです。社会の仕組みにちゃんと携わっている感じがしました。今までは学校で意見を聞いてくれないとか、やっぱり社会の中に入れてくれないというのはあったので」

こども記者たちは一様に「楽しかった」と目を輝かせていました。「こどもをこども扱いしない」。聞く耳を持って接してもらえ、個人として尊重されることが、これほどまでにこどもたちに力を与えるものなのかを目の当たりにしました。変わらなければならないのは大人であり、未来を切り拓けるかどうかはその姿勢次第なのだと、強く感じました。

東京報道部  石田敦子