MBS 毎日放送

2019年02月09日 12時00分 公開

<センバツ名試合:2013年 県岐阜商―大阪桐蔭>痛みに耐えたエース 『親子鷹』が大敵倒す

今年で91回目を迎える春の選抜高校野球。本連載では、「高校野球生き字引」MBS森本栄浩アナウンサーにセンバツの過去の名試合を振り返ってもらう。今回は、2013年3回戦・県岐阜商-大阪桐蔭の試合をピックアップ。新旧名門対決は、「親子鷹」で気迫あふれる投球の県岐阜商エースが、1点を守り切って大阪桐蔭の甲子園3大会連続優勝を阻んだ。しかし幕切れは意外な形だった。

新旧名門対決は意外な展開に

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 センバツ連覇、甲子園3大会連続優勝を狙った大阪桐蔭がまさかの3回戦敗退で姿を消した。前年の春夏連覇に貢献した主将の森友哉捕手(3年=西武)をけがで欠いていたとはいえ、幕切れは大阪桐蔭らしからぬものだった。
 県岐阜商はセンバツには欠かせない名門校で、戦前に3回の優勝がある。春夏合わせた甲子園出場回数も、龍谷大平安(京都)、中京大中京(愛知)に次いで多い56(春夏とも28=2018年現在)という全国屈指の伝統を誇る。対する大阪桐蔭は、PL学園に代わって大阪を代表する強豪に成長した新興勢力で、全国の球児が憧れる存在となっていた。特にこの前年、藤浪晋太郎(阪神)を擁して春夏連覇を果たし、現在、名実ともに全国のすべてのチームから目標とされている。
 さて、試合は思わぬ展開となる。初回に2点を先制した大阪桐蔭だが、先発の左腕・網本光佑(3年)が踏ん張れない。四球に失策が絡んだとはいえ、3安打を集中されて県岐阜商にあっさり逆転を許すと、3回にも突き放された。5回からエースの葛川知哉(3年)が登板すると、大阪桐蔭もようやくエンジンがかかり始め1点差で6回の表を迎える。
 グラウンド整備が終わった6回表の攻撃、県岐阜商はエース・藤田凌司(3年)が右足に死球を受けた。左腕投手にとって大事な軸足で、強打・大阪桐蔭の攻撃はまだ4回も残っている。6回以降のマウンドは、気力だけ。まさに自分との戦いだっただろう。藤田の父は、チームを率いる藤田明宏監督で、監督もエースにすべてを託した。

ボールが転々 同点か!いや、違う!

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 そして迎えた9回裏。投げるたびに、右足に激痛が走る。痛みに耐えて二者を三振に打ち取ったが、さすがは大阪桐蔭。ここから上位打線が藤田に襲いかかり、二走者を置いて4番・福森大翔(3年)に回す。福森は期待に応え、センターにはじき返すと、二塁走者は躊躇なくホームへ。県岐阜商のセンター・青木翔哉(3年)が素晴らしい返球で、クロスプレーとなった。走者と捕手が激しくぶつかって、ボールが転々とする。
 「同点だ!」大阪桐蔭の三塁側アルプスが大歓声に包まれたが、間髪を入れず、球審から走者の守備妨害が宣告された。躍り上がる県岐阜商の選手たち。捕手の神山琢郎(3年)は倒れたままだ。ようやく神山が立ち上がると、固唾を飲んで見守っていた県岐阜商のアルプスはもちろんのこと、球場全体が大きな拍手に包まれた。県岐阜商は1977年以来、36年ぶりの準々決勝進出。当時、大阪桐蔭はまだ誕生していなかった。今回ように、本塁でのクロスプレーを厳しくするきっかけが、前年の高校日本代表の米国との国際試合にあった。当時、2年生で代表入りしていた森が、タックルまがいの激突で吹っ飛ばされ負傷していたのだ。大阪桐蔭が同じような守備妨害で敗れるとは、皮肉としか言いようがない。
 藤田は、気力と気迫で最後まで投げ切った。その姿は、2学年後輩で、のちにソフトバンクにドラフト1位で入団する高橋純平投手が、「凌司さんの気迫あふれる投球に憧れていた」と話したほどだ。父の明宏監督は、県岐阜商のOBで、1985年夏に主将として甲子園出場を果たした。自身は本塁打を放ったが初戦で敗れ、「あまりに悔しく、もう一度甲子園を」と指導者を志した。監督としては、前任の岐阜城北で春4強。夏も09年に県岐阜商を4強に導くなど、岐阜を代表する名指導者で、現在は県内の朝日大学で監督をしている。この大会は8強で終わるが、最愛の凌司投手との「親子鷹」で大阪桐蔭に勝ったことは、二人にとって一生、忘れられないだろう。激闘を終えて引き揚げる「親子」のほほえましい様子を実況席から見ていて、「こんな幸せな瞬間があるだろうか」とうらやましく思ったものだ。

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第85回選抜高等学校野球大会(2013年)県岐阜商(岐阜)×大阪桐蔭(大阪)の試合の動画はこちらから!

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