<センバツ名試合:藤浪 VS 大谷!>まさか1回戦で当たるとは 初日から150キロ対決に沸く

エンタメMBS

2019/02/02 12:00

今年で91回目を迎える春の選抜高校野球。本連載では、「高校野球生き字引」MBS森本栄浩アナウンサーにセンバツの過去の名試合を振り返ってもらう。今回は、2012年1回戦・大阪桐蔭-花巻東の試合をピックアップ。藤浪と大谷。球界の大スターがセンバツの1回戦で対決していた。大谷は病み上がりで投球は不本意だったが、この試合で藤浪からアーチを架け、二刀流としての評価を不動のものにする。

藤浪対大谷 ファン垂涎の対決が実現
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エースがともに150キロを超える速球を持つチーム同士の対決などそう滅多に見られるものではない。しかも、春のこの時点で、「秋のドラフト1位 間違いなし」と言われ、ともに190センチを超える超逸材の対決だ。それがセンバツの初日に実現した。抽選会で対決が決まった瞬間、どよめきとともに「もったいない」という声も聞かれた。
花巻東(岩手)の大谷翔平(3年=日本ハム~エンゼルス)は、前年夏に甲子園デビューし、初戦で帝京(東東京)に敗れていた。秋も股関節の故障でまったく投げられず、チームは東北大会の準決勝で敗退。それでも光星学院(現八戸学院光星=青森)の神宮枠獲得でセンバツには辛くも滑り込んだ。大会前のインタビューでは、「高校生のうちに160キロ出したい」と話し、その夏の岩手大会で実現させるのだから恐れ入る。そして大谷には、もう一つの武器があった。それは打撃だ。代打中心の起用となった秋の公式戦では、本塁打こそなかったものの.444の高打率を残し、東北大会の光星戦では140メートル級の大ファウルを放っていた。
対する大阪桐蔭の藤浪晋太郎(3年=阪神)は、入学時から評判に挙がっていた名門のエースで、前年夏は大阪決勝で東大阪大柏原に逆転負けし、この試合が甲子園初登板だった。秋の近畿は初戦こそ完封したが、天理(奈良)戦で守備の際に指を痛め、それがたたって準々決勝敗退。こちらも胸を張って出場できるような成績ではなかった。大阪桐蔭はそれまでセンバツでは好成績を残しておらず、この試合も大谷に本来の投球をされれば、「桐蔭危うし」の声も聞かれるほどだった。試合の焦点は、優勝候補同士というより、「超高校級エース」の対決が焦点だったと言える。

大阪桐蔭に流れをもたらした森のセンス
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そして始まった注目対決。ナイター必至の午後4時前のプレーボールとなったが、こういう試合は、最終的にチーム力が勝敗に直結する。立ち上がりは花巻東のペースだった。2回に大谷が藤浪のスライダーをとらえ、先制アーチを架ける。4回にも加点し、投げても大谷が桐蔭打線を5回まで2安打に抑えた。試合が大きく動いたのは6回。新チーム発足後初の公式戦登板で、スタミナに不安のある大谷に疲れが見え始める。立ち上がりから制球に苦しんでいた大谷は、先頭打者に四球を与えピンチを招くと、7番・笠松悠哉(2年)に逆転打を浴びる。7回には、1番・森友哉(2年=西武)が口火を切り、4番・田端良基(3年)が2ランを放って、一気に突き放した。大谷は9回にも四死球や暴投で大量失点し、完投することなく173球でマウンドを降りた。
この試合は剛腕対決に目がいきがちだが、最も輝いていたのは森だ。藤浪の投球を生かすリードとキャッチング。特に外角の豪速球を、球威に引っ張られることなくミットにきっちり収めていた。攻撃でも4度の出塁(2安打)で、大谷攻略に一役買った。攻守両面で、森の非凡なセンスが、試合を予想外の結末(9-2で大阪桐蔭の勝ち)へと導いた。逆転打を放った笠松とともに、下級生が躍動した大阪桐蔭のチーム力が上回った。
この大会、大阪桐蔭はセンバツ初優勝を遂げるが、大谷から死球を受けた田端が2回戦から欠場し、4番不在のピンチに見舞われた。また、最難関だった準々決勝の浦和学院(埼玉)戦で先発した澤田圭佑(3年=オリックス)の好投も見逃せない。この試合から始まったチーム一丸の精神は、夏の甲子園でも生かされ、同校初の春夏連覇へとつながっていく。
【文・森本栄浩(MBSアナウンサー)】

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第84回選抜高等学校野球大会(2012年)大阪桐蔭(大阪)×花巻東(岩手)の試合の動画はこちらから!

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