BLOG京ノ旅手帖
2019.04.24
新茶の季節到来!京都で立ち寄りたい、急須で淹れた宇治茶が飲めるカフェ5選
宇治茶は京都を代表する緑茶の名称で、静岡茶、狭山茶と並んで日本三大茶と呼ばれ、日本を代表するお茶のひとつです。鎌倉時代から生産されていたと言われ、創業数百年の茶舗も数多くあります。近年は海外で注目されたり、ペットボトルとして発売されるなど人気の高まりを感じる一方、急須で飲む茶葉の生産量は減少傾向にあるのだとか。そんな宇治茶の美味しさを茶葉や淹れ方からこだわって提供してくれるお店を見ていきましょう。築100年の古民家を活かした「aotake」で、日本茶と向き合う至福の時間 2018年8月にオープンしたaotakeは、京都駅から徒歩10分、高倉通りに面した角地にあります。 店主の田中さんは、2017年までf同名のカフェを木津川市で営業されていて、メディアで紹介されるほど人気がありました。もっとお茶と向き合いたい、お茶にこだわりたいという想いから、京都市内に移転したのだとか。以前に比べ狭くなり席数も減りましたが、ていねいに接客するにはちょうどいいサイズと使い勝手なのだそうです。お店は、大正元年に建てられた古民家をリノベーションしていて、もともと使われていた古材や家具が上手に活かされています。靴を脱いであがる店内は、誰かのおうちに招かれたようでほっとくつろげます。ほの暗い室内から見える庭がとても印象的で、まるで絵のようで素敵です。メニューは、日本茶・紅茶・中国茶と手作りスイーツ。お茶は店主の田中さんが自らセレクト、自信を持って勧められるものばかりです。特に味わってほしい日本茶は「手摘み玉露」。宇治玉露の中でも評価の高い米田さんのもので、自宅用に購入するには躊躇するような価格なのだそう。一煎目は50℃で2分ほどかけてじっくり抽出。そうすることで濃厚な旨味と甘味が引き出されます。口に含むと、これがお茶?と驚くような豊かな味わいに衝撃を感じるほどです。二煎目は60℃、三煎目は75℃と温度を上げていくので、渋みも味わえます。一煎目は田中さんが淹れてくださいますが、二煎目からはセルフで。不安な時は田中さんにおまかせしてもOKです。柔らかくとろとろな豆腐白玉とともに味わってみてください。木津川のお店でもイベントでは日本茶を出していたそうですが、通常メニューに加えたのは移転してから。お店の規模が小さくなった分手間が減り、お茶に時間が注げる。お客さま一人ひとりにたっぷり時間をかけることができ、一番いいタイミングで提供できる...木津川で叶わなかったことが実現できて、今が理想的と語る田中さん。 おいしいお茶を気軽に飲みに来てほしい、そう願う田中さんの想いが、京都市内で花開こうとしています。■ aotake京都市下京区七条通高倉材木町485070-2287-6866 11:30〜18:30(L.O.18時)火曜日・水曜日 休京都駅から徒歩10分できたてアツアツの本わらび餅を、こだわりで揃えたお茶とともにめしあがれ「茶菓 えん寿」太秦・大映通り商店街にある「茶菓 えん寿」は、2017年8月オープンの比較的新しいお店。広隆寺から徒歩10分ほどのところにあります。老舗和菓子店「老松」で18年修行をした泉さんが、切り盛りしています。喫茶店は「喫茶」(茶を喫する)場所なのに、扱う飲み物はコーヒーばかりでお茶じゃないの?そんな疑問からお茶の勉強がしたい、お茶には和菓子がつきもの、和菓子といえば京都が盛んだろうと、故郷北海道から京都へやってきたという泉さん。そんな想いや修行の甲斐あって、文字通り喫茶店をオープンすることができました。観光地への出店も考えたそうですが、太秦にした理由は、若い世代がたくさん住んでいるから。若い人たちにカフェの感覚で立ち寄ってもらいたい、日常にお茶を取り入れてもらいたい、という想いからだそうです。 取り扱うお茶は、シングルオリジン(単一品種)ばかり40種ほど。老松仕込みの和菓子とともに味わえます。お茶は宇治茶や静岡茶など有名なものから、種子島といった珍しい産地のものまでさまざま。しかもおいしいと納得したものをおすすめしたいと、自ら産地を訪れ選んだのだそうです。直接生産者をたずねることで、どんな人がどんな土壌で育てたかがわかり、知見が増えます。お客さまに提供する際、エピソードを添えることで、より関心を持ってもらえて一石二鳥。びっくりするような山奥の産地もあり苦労が多かったそうですが、素晴らしいお茶の前ではそんな苦労も吹き飛ぶのだとか。イチオシメニューは、煎茶と本わらび餅のセット。国産本わらび粉、甘味、水のみでシンプルに作られています。注文のたびに作られるので、できたてアツアツがいただけます。わらび餅というと白いものをイメージしますが、本わらび粉で作ると黒っぽい色。そして弾力と伸びのよさとなめらかに驚きます。黒蜜がいらないほどの自然な甘みが、煎茶の爽やかさとマッチしていておいしいです。京都産の煎茶でオススメは、和束で作られた「やぶきた」。通常行われる"かぶせ"の作業をしていない品種で、お茶特有のさっぱりとした味が強く出るのだそう。旨味もしっかり感じられ、さっぱりと旨味のバランスが絶妙です。 一煎目は泉さんが、二煎目以降はセルフで味わうスタイル。手をかけ作られているお茶は、二煎目以降もしっかり味が出るそうで、五煎ほど味わえるものが多いそうです。煎茶ならではの、淹れるごと変わる味をじっくり楽しんでみてください。■ 茶菓 えん寿京都市右京区太秦多藪町14-93 chien viverrin1階075-432-7564 10:00〜17:00木曜日・第3水曜日 休嵐電・市バス 帷子ノ辻駅下車 徒歩約5分情緒ある京町家でいっぷく「丸久小山園 西洞院店・茶房 元庵」で上質なお茶を味わいたい二条城近くにある「丸久小山園 西洞院店 茶房 元庵」は、創業300年を数える丸久小山園のアンテナショップとして、2008年夏にオープンしました。 築120年の町家を使った造りで、庭を望むテーブル席と二畳の茶室もあります。街ナカにありながら、静かで落ち着いた雰囲気の中で、お茶やスイーツが味わえます。店頭ではお土産のお茶を購入することもできます。長らくお茶の製造卸として営んでいた丸久小山園。以前は消費者との接点が少なく、存在を知ってもらう機会が少なかったといいます。じっくりと直に商品を見てもらいたい、味わってもらいたいと、茶房を開いたのだそう。丸久小山園のお茶は百貨店でも購入できますが、じっくり買い物ができて、お茶もできる茶房は評判がいいのだとか。国内外問わず、観光で訪れる方が多いそうですが、お茶好きの地元の人たちも気軽に利用しているそうです。茶房でいただけるのは、煎茶や抹茶、抹茶スイーツやかき氷(夏季限定)もあってバラエティ豊か。中でも煎茶「翠の院」は、香り立ちが豊かで、旨味のバランスがよいが特徴。コクと旨味が存分に感じられます。上質なものを味わってほしいと、社長自らブレンドし商品化したそうで、西洞院店のみの限定商品です。 一煎目はスタッフ、二、三煎目は自分で淹れて飲みます。淹れ方は丁寧にアドバイスしてくださるので、自分でもおいしいタイミングで淹れることができます。お茶は単品でもいただけますが、和菓子のセットがイチオシ。季節に応じた和菓子が数種類用意されるので、好みのものをどうぞ。主張しすぎない甘味が、お茶のおいしさをより際立たせてくれます。淹れるごとに変化するお茶の味わいとともに、絶妙なバランスをじっくり味わってみてください。種類によっては冷茶が用意されているので、すっきり飲みたいときや飲み比べするのもよさそうです。人気の抹茶のロールケーキは、自社の抹茶がふんだんに使われていて、苦味と旨味が口の中に広がりとても美味。合わせていただきたい自慢の一品です。 週末や休日午後は満席になることが多いので、ゆったりすごせる14時ごろまでの来店がオススメです。■ 丸久小山園 西洞院店・茶房 元庵京都市中京区西洞院通御池下ル西側075-223-0909茶房:10:30〜17:00(ラストオーダー) 売店:9:30〜18:00毎週水曜日(祝営業)、正月三箇日 休地下鉄烏丸御池駅より徒歩約6分<高品質な煎茶を気軽に味わってほしい「YUGEN」でいただく和束産シングルオリジン茶京都イチの繁華街、四条河原町から徒歩5分ほどの場所にあるYUGENは、町家をリノベーションしたコンパクトなお店。2018年7月のオープン以来、おいしいお茶が飲めると話題です。YUGENの店名は「幽玄」から来ていて、気品があり、優雅なことといった意味が込められています。店主・須藤さんは自身も茶道をたしなむほどお茶が好き。お茶や茶道というと敷居が高いイメージがありますが、気軽に自由に楽しんでほしいという想いから始めたそうです。観光地や繁華街から歩いていける場所に出店したのも、地元京都のお客さまが来店しやすいようにという配慮から。おいしくて上質なお茶を手の届く価格で飲めるよう、生産者から直接仕入れるなど工夫をしているそうです。店内は少し座席がありますが、基本はスタンディングスタイル。コーヒースタンドのようなスタイリッシュな造りで、本当に日本茶が飲めるの?というギャップさえ感じます。メニューは、煎茶と抹茶のものを用意。提供方法は異なりますが、すべてがテイクアウト可能で、四条通り界隈を散策しながら味わうこともできます。煎茶は、京都府内一大産地、和束産シングルオリジン(単一品種)を採用。旨味と渋みのバランスがいい「おくゆたか」、玉露の旨味が感じられる「ごこう」、煎茶ならではの爽やかさが際立つ「やぶきた」の三種類が用意されていて、味の個性が楽しめます。旨味や渋みのバランスはメニューにチャートで示されているので、好みと照らし合わせて選ぶことも。一番人気は「ごこう」。店内では2煎まで楽しむことができます。一煎目は65℃のややぬるめで抽出。低い温度で淹れることで、旨味が引き出されたおいしいお茶になります。二煎目は75℃で、煎茶らしい渋みへ変化しているのが感じとれます。添えられる小菓子は季節やタイミングによって変わりますが、お茶と一緒にいただくとよりおいしさが引き立つので、ぜひ一緒に味わってみてください。茶葉も売られているので、気に入ったお茶は家で楽しむのもアリ。有田焼の食器など、センスのいい伝統工芸品も置かれていて購入が可能です。どれもきちんと作られたものでありながら、手頃な値段なものが多く、お茶と共通するところがあります。技術を要する美しいもの、おいしいものを、日常に取り入れ楽しんでほしい...須藤さんはそんな想いで、日々お店を切り盛りしています。YUGENのお茶やグッズを取り入れるところから、いつもの生活を少しバージョンアップしてみませんか。■ YUGEN京都市下京区仏光寺通麩屋町入ル大黒町266-2075-606-5062 11:00~19:00 年末年始 休四条河原町から徒歩約5分邸宅の蔵でオリジナルの煎茶を「Salon de KANBAYASHI」で味わう老舗の味祇園や高台寺、インスタ映えスポットとして人気の八坂庚申堂近くにある「AKAGANE RESORT KYOTO HIGASHIYAMA 1925」。主にブライダルやパーティーで使われている施設ですが、カフェラウンジとして「Salon de KANBAYASHI」が併設されています。 宇治にある、創業450年の老舗茶舗「上林春松本店」とタッグを組み、カフェスタイルで日本茶を提案しています。カフェスペースとして使われているのは、100年以上前に建てられた邸宅にある蔵。改装され洋風に仕上げられていて、ホテルのような上質さが感じられます。上林春松本店といえば、ペットボトル飲料「綾鷹」の開発協力をして一躍有名になったのはご存知の通り。サロンでは、急須で淹れるお茶の味わいと文化を伝えたい、という想いを形にするために、上林春松本店の日本茶やお茶を使ったものをメインに提供しています。オリジナルブレンドの煎茶は、料理と合わせてもバランスの良い味に仕上がっています。これはSalon de KANBAYASHIで提供されているオリジナルスイーツに合うようにとブレンドされたものだから。二店舗あるSalon de KANBAYASHIでは、飲むだけではなく茶葉の購入も可能です。お茶を注文すると、スタッフの方がお茶やエピソードを話しながら、一煎目を注いでくれます。流れるような動きの中から抽出されるお茶は、やや茶色がかった色味。少しローストされた部分がブレンドされているためで、料理とのバランスからだそう。旨味と渋みのバランスが絶妙で、すっと喉を通ります。二煎目は自分で淹れますが、不安な時はスタッフさんにお任せを。丁寧に淹れてもらえます。お茶請けには「抹茶のガトーオペラ 枯山水」を。「琵琶の白」という抹茶の銘柄を使ったスイーツで、プレートに枯山水が表現されていてフォトジェニック。抹茶がふんだんに使われていて、特有の苦味が口に広がります。甘すぎず煎茶との相性がよくおいしいので、一緒に味わってみてください。 定休日は火曜日ですが、ウェディングがあるときは利用できませんので、訪問時は確認をお願いします。■ Salon de KANBAYASHI京都市東山区下河原通高台寺塔之前上る 金園町400番1アカガネリゾート京都東山1925 内 075-551-363311:30〜17:00 火曜日休日・土日祝不定休京阪電鉄祇園四条駅より徒歩12分阪急電鉄京都線河原町駅より徒歩15分JR京都駅よりタクシーで約13分***手軽においしいお茶が飲める時代ですが、急須で淹れるお茶はまた格別です。ハンドドリップでコーヒーを飲むように、急須で淹れた日本茶を飲んでみる。少し手間をかけ、出来上がる過程をも楽しむ...京都へ旅行に来たときぐらいは"一杯のお茶に時間をかける贅沢"を体験してみてはいかがでしょうか。今回ご紹介したお店は、いずれも茶葉を販売しています。気に入ったお茶があれば買い求め、自宅でも急須で淹れるお茶にトライしてみて。急須がなくても、まずは手持ちのポットなどで淹れてみてください。まずは形式にとらわれず、自由に取り入れてみましょう。先人たちが受け継ぎ残してきた、素晴らしい日本茶の文化。現代の生活になじませながら、上手に生かしていきたいですね。
デブ子デラックス
京都在住ライター