
一本一本、我が子のように・・・
バラらしくない「和ばら」を愛して
「しらたま」、「雅(みやび)」、「ひなあられ」、「てまり」に「かしこ」。
これらすべてがバラの名前だと聞くと、いかがだろうか。
生み出したのは、國枝啓司。彼のオリジナル品種である「和ばら」の花ごとの名前だ。國枝のつくるバラは、優しい中間色の花色、何層にも重なる花びら、しなだれたまま風にたなびく姿が特徴。まさに「日本らしさ」を突き詰めたバラを生み出すことに、半生をかけてきた。
「きれいなバラはつくりたくない。かわいいバラをつくりたい」
父が営むバラ園で働きながら、ビニールハウスの片隅で育種を始めた。天皇陛下と雅子皇后陛下がご成婚の際には、オリジナル品種「プリンセスマサコ」を献上。その後独立して「Rose Farm KEIJI」を立ち上げると、ますます育種にのめり込む。だが、自分の理想とする最初の「和ばら」を生み出すまで、実に25年もの歳月を必要とした。
バラの育種は、めしべに別品種のおしべの花粉を受粉させ、できた種を植えて行う。その発芽率は数%程度。思うような花の形や色味を持ち、かつ強く育つ一つの品種をつくり上げるには3~4年かかる。気の遠くなるような営みの先に、84種類の"かわいい"和ばらが農園に咲き誇る。
取材は、今年もまた新しい和ばらを生み出す國枝に密着。ところが、蒔いた新品種の発芽が遅い。昨夏の猛暑の影響なのか...。「こんなことは43年やっていて初めて」と不安に駆られる。
目指すのは「花びらが幾重にも重なった白いバラ」。果たして思い描くバラは咲いてくれるのか。一輪一輪に人生をかける育種家の、花への愛がそこにある。

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