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2025年06月08日(日) 放送分

上田拓郎野菜農家
Vol.1356

基準は「自分が食べたいかどうか!」
奥能登の自然で育む “奇跡のトマト”

石川・輪島市の小さな農園で作られるトマトが今、一流シェフたちの間で話題を呼んでいる──。
手がけるのは上田拓郎、41歳。家族経営の1.5ヘクタールの農園では、イタリア野菜をはじめとする70種類の野菜を育てている。中でも評判なのが、水を極限まで絞り、しっかりとした果皮に強烈な甘みと酸味が閉じ込められた「トマト」。「こんなのに出会いたかった!」はるばる現地に足を運び、仕入れを直談判するシェフも珍しくない。
美味しさの裏には「徹底した水管理」と「実が緑色でいる期間をできるだけ長くする」ための緻密な戦略がある。北陸の一般的な種まきが3月のところ、上田は2か月も早い1月にスタートを切る。地中に電熱線を這わせ、その上から遮光と保温のシートを二重で被せ、温める。極寒の時期からじっくりと育てることで、糖の蓄積する時間を稼ぐのだという。さらに、植え付けから収穫までの2か月間、一滴すら与えないこともあるくらい「水をやらない」のも特徴だ。味を決定づける収穫の時期には、特別のこだわりがあった。「満月の前後は樹液(水分)が上に集中し、新月は根に向かう。だから最も水分が落ちた新月の夕方に収穫するトマトが一番美味しいんです」
そんな上田に予期せぬ試練が訪れる。去年9月、能登半島を襲った集中豪雨。猛烈な雨で農園のすぐ側を流れる川の堤防が決壊。トマト栽培には不向きな"湿気"を含んだ土砂が、30センチ以上も畑を覆い尽くしてしまった。
番組は、豪雨直後から初夏の収穫までの半年間に密着。復旧作業と再起をかけた日々・・・だが、ようやく芽を出したトマトに次々と異変が現れる。果たして上田は、幾度の試練を乗り越え奇跡のトマトを実らせることができるのか?懸命に自然と折り合いをつけ、挑み続ける農家の知られざる営みを追った。

PROFILE

1983年、石川県輪島市生まれ。農業高校卒業後、父親が立ち上げた農園で本格的に働き始め、2016年に経営継承。父の代では、家庭菜園用の苗づくりや地元スーパー向けの野菜栽培が中心だったが、上田が舵を取ってからは、ヨーロッパ野菜などを積極的に取り入れ、レストランへの販路を拡大。現在は年間70種類におよぶ野菜を手がける。2025年にはその実績が評価され、農林水産大臣賞を受賞。農園は自宅から徒歩3分。趣味は料理、サボテン、バイク。妻と2人娘と4人で暮らす41歳。

STAFF
演出:小林佳乃子
構成:田代裕
ナレーター:窪田等
撮影:矢吹啓司・武井俊幸・井坂雄哉
音効:中嶋尊史
編集:斉藤淳一
制作協力:ドキュメンタリージャパン
プロデューサー:沖倫太朗・新津総子

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