
THE TEAM #4
「我々が諦めたら、そこで終わり」
“沈黙の臓器”に最強チームで挑む
早期の発見が難しく、見つかった時には周辺への転移が進んでいるケースが少なくない膵臓がん。日本では、すべてのステージのり患者数トータルでの5年生存率は、9%に満たないとされる。
その治療で目覚ましい実績を上げているチームがある。富山大学附属病院の膵臓・胆道センター。強みは、他の病院で「切除不能」と診断された膵臓がんを、抗がん剤や放射線で小さくして手術できる状態までもっていく治療。まさに「最後の砦」と全国から患者が訪れる。
病院は富山駅から車で30分の山の上にある。2018年にセンターを立ち上げたのが外科医の藤井努だ。術後の合併症を防ぐため、残った膵臓と小腸とをつなぐBlumgart変法縫合という技術を開発するなど、経験と技術に優れた膵臓がん手術のエキスパートだ。
だが、センターの強みはそれだけではない。消化器内科医の安田一朗、病理診断医の平林健一と、いずれも日本有数の膵臓・胆道治療のスペシャリストが所属。緊密に連携して治療に当たることで、抗がん剤治療と外科手術の合わせ技であるコンバージョン手術などを可能としている。それだけではない。人体内部にメスを入れる膵臓がん手術はしばしば長時間に及ぶが、センターでは所属する複数の外科医が交代で執刀に当たる。患者の情報や手術の方針が共有され、体力的にも精神的にもフレッシュな状態で手術が続けられる。普段の勤務体制も分業が徹底され、若手や女性の医師も無理なく働ける環境が整う。
取材中、他の病院で「来年の桜を見ることはできない」と告げられた患者がセンターを訪れた。早速、抗がん剤でがんを切除可能なサイズまで小さくし、手術に臨む方針が立てられた。難しい症例が集まるセンターでも数年に一度あるかないかという超高難度。15時間にも及ぶ手術に、鮮やかなチームワークが発揮される――。
TOYAMA UNIVERSITY HOSPITAL
Tsutomu Fujii/Pancreas Biliary Center
2018年9月、消化器外科医の藤井努と消化器内科医の安田一朗を中心に、外科と内科の垣根を超えたチーム医療を届けるため、国内初となる膵臓・胆道専門のセンターとして誕生。
藤井(1968年生まれ)は、膵臓がん治療で高い実績をもつ名古屋大学第二外科で腕を磨き、2017年に富山大学医学部教授に着任。安田曰く「日本一諦めが悪い外科医」。
安田(1966年生まれ)は、岐阜大学医学部を卒業後、今では膵臓がん検査で当たり前になりつつある超音波内視鏡の可能性にいち早く目をつけ、ドイツで技術を習得。「安田に見つけられない膵臓がんはない」ともいわれる。
さらに2022年、膵臓・胆道を専門にする病理診断医・平林(1976年生まれ)が加入。総勢約30人の医師が連携して手術・治療に当たり、世界的な実績を上げている。

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