岐阜県大垣市に住む桐山淳さん(85)は、80歳の妻、信子さんをひとりで介護しています。信子さんは50歳の時にくも膜下出血で手術し、のちにパーキンソン病と認知症を発症しました。「うまく介護サービスを使いながら日々、過ごすことが出来ている」と話す桐山さん。咀しゃくができない信子さんのために食べ物をペースト状にして、食べさせています。いまの心配事は、「口から食事がとれなくなること」。けれどある日、信子さんは、誤えん性肺炎を発症し、緊急入院することに。
「老々介護」の末の悲劇は、あとを絶ちません。2022年には、神奈川県の海に車いすごと79歳の妻を突き落として殺害したと82歳の夫が逮捕されました。40歳を前に妻が脳梗塞で倒れ以降、「死ぬまで妻の面倒を見る」と決め、献身的に介護を続けてきたそうです。けれど、高齢となり自身の体調不良もあって「事件の2、3日前には、一緒に海に飛び込み死のうと考えるようになった」と裁判の中で告白しました。
超高齢化社会の中で、いかに「老い」どのように「介護」と向かい合うか...。信子さんが誤えん性肺炎で入院し、再び我が家に帰るまでをつぶさに描きながら「老いを味わえば良い」と話す淳さんの日々を見つめます。
月1回、それも日曜日深夜の放送という地味な番組ながら、ドキュメンタリーファンからの根強い支持を頂いており、2020年4月で放送開始から40年になります。
この間、番組は国内外のコンクールで高い評価を受け、芸術祭賞を始め、日本民間放送連盟賞、日本ジャーナリスト会議賞、更にはテレビ界のアカデミー賞といわれる国際エミー賞の最優秀賞を受賞するなど、輝かしい成果を上げてきました。また、こうした長年にわたる地道な活動と実績に対して、2003年には放送批評懇談会から「ギャラクシー特別賞」を受賞しています。
これからも「地域に密着したドキュメンタリー」という原点にたえず立ちかえりながら、より高い水準の作品をめざして“時代を映す”さまざまなメッセージを発信し続けてまいります。