MBS(毎日放送)

93歳のゲイ~厳しい時代を生き抜いて~

2022年6月26日(日)放送

93歳のゲイ~厳しい時代を生き抜いて~

長谷忠さん(93)は2018年、自分がゲイだと初めて周囲に打ち明けた。結婚したこともなく、同性のパートナーができたこともない。ずっと孤独と向き合ってきた。差別が怖くて、自分が同性愛者であることを89歳まで心に秘めて生きてきた。

香川県で生まれた長谷さんの初恋は、小学校の男性の先生だった。その後も恋愛感情や性的魅力を感じる相手は男性ばかり。周りに自分と同じような性的指向を持つ人がいることも知らず、家族にさえ相談できなかったという。これまで、倉庫作業や清掃など11もの仕事を転々としてきた。同性愛がばれるのが怖くて、仕事仲間と親密になるのを避けてきたという。

同性愛はかつて「変態性欲」とみなされ、治療が可能な「病気」とされてきた。同性愛者が偏見や差別に苦しむ時代が長く続く中、1971年に日本初の男性同性愛者向けの雑誌「薔薇族」が創刊される。編集長だった伊藤文学さんは「同性愛は異常でも病気でもない」と創刊当時から訴えてきた。薔薇族創刊からおよそ20年後、世界保健機関が「同性愛は治療の対象ではない」と示し、日本でも病気ではないという知見が確立された。

長谷さんは、同性愛が病気とされてきた時代を生き抜く中、ペンネームを使った詩や小説の中で、自分をさらけ出してきた。10代の頃から詩を書き始め、30代の頃には、詩人の新人賞としては最も歴史のある「現代詩手帖賞」を受賞。いまでも、短歌や俳句を書き続けている。自分が生きてきた痕跡を残すためだという。人生最後の目標は、これまでの作品をまとめて出版することだ。

同性のパートナーと暮らす人たちも増え、同性婚を国に認めるよう求める動きも活発化している。「いまの時代に生れていたら、違う人生だったかもしれない」と話す長谷さん。「人と違うことを認め合える社会になってほしい」。残りの人生をかけて取り組む93歳のゲイの日々を見つめながらこの国のゲイの歴史を振り返る。

次回は、3月31日(日)深夜 0時50分から放送

労組と弾圧~関西生コン事件を考える~

労組と弾圧~関西生コン事件を考える~

映像’24は、1980年4月に「映像’80」のタイトルでスタートした
関西初のローカル・ドキュメンタリー番組です。

月1回、それも日曜日深夜の放送という地味な番組ながら、ドキュメンタリーファンからの根強い支持を頂いており、2020年4月で放送開始から40年になります。
この間、番組は国内外のコンクールで高い評価を受け、芸術祭賞を始め、日本民間放送連盟賞、日本ジャーナリスト会議賞、更にはテレビ界のアカデミー賞といわれる国際エミー賞の最優秀賞を受賞するなど、輝かしい成果を上げてきました。また、こうした長年にわたる地道な活動と実績に対して、2003年には放送批評懇談会から「ギャラクシー特別賞」を受賞しています。
これからも「地域に密着したドキュメンタリー」という原点にたえず立ちかえりながら、より高い水準の作品をめざして“時代を映す”さまざまなメッセージを発信し続けてまいります。

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