MBS(毎日放送)

第80回 松本慎一郎

金の卵6個目落ちて、7個目落ちて、8個目でやっと受かりました。

―いつごろからお笑いを目指されたんですか?

きっかけは、中学生の頃にテレビで「ダウンタウンのごっつええ感じ」(フジテレビ)とか、あと千原兄弟さんがMCの「すんげー!Best10」(ABC)でテンダラーさん、水玉れっぷう隊さんなんかを見て、ものすごく漫才をやってみたくなったんですね。
(クラスの中でも目立つ方?)
お笑いはメッチャ好きで、よく友だちとお笑いの話をしてました。「ガキの使いやあらへんで!」(日本テレビ)の初期の頃のダウンタウンさんの漫才ばっかりを集めたビデオをレンタルして見たり。中学2年生の時は、面白い人みたいな感じで、クラスのランキングでは上位でしたね。中学3年生ではそこまでじゃなかったですけど。
(高校卒業してNSCへ?)
高校3年の時に、うちは母と2人だったんですけど、「卒業したらどうするの?」と言われて、心の中ではNSCへ行くって決めてたんですけど、「放送芸術学院専門学校に行って、芸能人のマネージャーになりたい」と言ってました。結局、隠れてNSCに応募して、入学金とかの請求が来た時に、「話が全然違う」ってなって。若かったんで、親にも強気で、「大丈夫や。絶対売れたる」みたいなことを言ったと思うんです。で、高校卒業して、NSC入って、相方を見つけて、ネタ合わせもしてて、いざ、ネタ見せの日に、相方が来なくて…電話も出ない。どうしようと思って。NSCで知り合ってるんで、関係はそんな深くないんです。同い年で石川県から来てるって言ってたんで、本気かなと思ってたんですけど…。その後はネタもせんと、ちょっと人見知りだったんで相方も見つけられず。で、半年経たないうちに、(NSCに)行かなくなりました。アルバイトしながら、高校のラグビー部の同級生で、お笑い好きな奴が「僕とやりたい」と言ってくれたんで、当時、baseよしもとで一般からも受けられたプレステージというオーディションがあったので、受けようという話になった時に「辞めとくわ」ってなって。その後4年くらいフリーターしてたんです。何もせずに24~5歳になって、どうしようっていう時に、新聞で「あなたも夢をつかみませんか?」みたいな広告、あるじゃないですか。
(あははは…)
劇団の東俳ってご存知ですか? オーディション告知を見て、やっぱり芸能の世界がやりたいなと思って。応募して、合格して、劇団東俳に4年くらい行ってたんです。年に2回の自主公演で舞台に立ったり、朝ドラや東映の時代劇のエキストラとか行かせてもらったり。でも基本、子役がメインの事務所だったので、役をもらうのは難しかったんです。29歳になって、もう30やと。
(ちょっと考えなあきませんよね)

―新喜劇に入ろうと思われたきっかけは?

ずっとアルバイト続けてて、このままでは食べて行けへんな~と思ってた時、ある日、テレビで「よしもと新喜劇」を見てたら、金の卵オーディションをやっているというのを見て、受けてみようかな、と。当時、5個目までは毎年オーディションがあったので、よし、東俳辞めて、新喜劇入ろうと思って、劇団を2011年7月に辞めて、夏ぐらいにオーディションがあると思って待ってたら、なかったんです。そのうち、10月くらいにNGKの進行スタッフの募集をしてたので、ここに行ったら、勉強になるし、近くで見れるし、人との接点も生まれるわと思って、11月から進行スタッフになったんです。オーディションいつかなと思いつつ。結局、冬は越えて、2012年になって6個目のオーディションがあったんですが、6個目は落ちました。
(あ、落ちた…?)
正直ね、1回目落ちた時、どうしようかと思いました。その時、川畑さんが「お前、落ちたな」って声かけてくださって。昔やったら、お前みたいな普通のタイプが受かってたかも知れないけど、今は、即戦力とか、キャラが濃いやつとか、なんかな~って、結構しゃべってくれはったんですよ。新喜劇は入ってもクビとかない。でも仕事がなかったら、給料も出ない、下手して1か月出番がなかったらゼロ円とかもある。それやったら「入りたい奴、入らせたったらええのになあ~」って(笑)。そんな風に川畑さんと喋ったことで、頑張ろうっと思って。

―落ちてからは?

そっから、また進行の仕事をやりまして、7個目も落ちたんです。8個目でやっと受からせてもらいました。2回落ちて、3回目で合格して。
(そこまで頑張る人ってあんまりいないような…)
確か、8個目から座長がオーディションを見るようになったんですよ。小籔さんとすっちーさんと川畑さんが見るようになって。僕のオーディションの時は小籔さんがいなかったんですけど。ようやく3回目のオーディションで受かったのが、2014年やったんです。
(長い道のりでしたね~)

―初舞台は覚えてますか?

初舞台、覚えてますよ。内場さんの週でNGKのお正月公演でした。ただセリフはない役でした。オープニングで獅子舞みたいなのがあって、僕は演奏する役。セリフのある役は、すっちーさんの座長週でしたね。警察官の役で、途中で出て来て、「吉田裕を連れてきました」みたいな。ドキドキしましたね。あの一言。
(稽古時間も短いですよね)
特にオープニングとかのネタを作らなあかん役の時は、前日、または2日前に台本をもらって、作り上げるのが、すごいと思います。普通のお芝居やったら、1か月とか稽古期間あるやないですか。僕みたいなのは、セリフ全然ないですけど、セリフの多い人、座長さんとか回しとかツッコミの人とかスゴイなと。(セリフが)感覚で入ってるんやろな、と思います。新喜劇ってほんまに流れが大事で、流れに乗っかって、こっち行ったりとか。それをバーっと計算して、何とか対処は出来る時もあるんですけど。自分のセリフだけ言おうとしたら、えらいことになります。浮いてしまうし。新喜劇はほんまに流れなんやなあ、と。

―劇団での経験は役に立ちました?

僕、劇団にいたんですけど、けっこう、芝居下手くそで。辻本さんの週に出演することが多いんですけど、自分が力不足なので、ダメ出しされる事が多いんです。普通の芝居だと間違えたらけっこう、「アッ」となるというか。新喜劇は普通のお芝居と違って、ミスして噛んでも全部、笑いにしてくれるじゃないですか。それがスゴイですね。ほんまに舞台に立ってみて、実感してます。台本にないノリで、目の前でアドリブが一気に生まれるのが、スゴイな~と思って。今でもセリフに入るタイミングとか、笑い待ちせなアカンとか、メッチャ間違えます。待てなくなるんですよ。辻本さんが「間が大事」って、よく言われるんです。ほんまその通りなんです。間を外して出てきたりとかセリフ言ったりしたら、見てる人もやっぱり気持ち悪い。間って大事ですね。

―憧れの先輩は?

一の介師匠には憧れがありますね。まず、お芝居が出来て、なおかつ、みんなから、愛されているんですよ。普段から楽屋とかで。後輩も入りやすいというか。いじられキャラというか。キャラクター的にハゲてはないんですよ。いや、ちょっとハゲてるかな。
(あははは)
憧れてるというと、僕ね、そもそも内場さんにメッチャ憧れてて、新喜劇入る時に、回しがやりたいと思ってたんですよ。でも僕、いじられる方が多いんです。バカなんで。いじられて…。そっち(回し)じゃないんかな、って気づき始めて。でもボケをやりたいなと思っても、そんなに気の利いたボケも出来ない。祇園花月で1週間すべり続けたこともあったんですよ。一の介師匠になりたいっていうのは、一の介師匠のポジション、メッチャいいなって思うんです。芝居うまくて、ツッコミも出来て。憧れますね。でも、どこかで自分も回しやりたいというのはあります。はははは(笑)

―新喜劇で一番お世話になっているのは?

僕、一応、扱いはNSC23期なんで、奥重敦史、吉田裕と同期で。先輩というと、平山昌雄さんとか。あんな感じの人なんで、僕もメッチャとっつきやすいです。劇場出番では辻本さんの舞台に出させていただいてるんで、ほんとに辻本さんには感謝してます。お芝居とかお笑いの基本とか、当たり前のことを言ってくれるんです。「声、小さい」とか「そこは待つとこやろ」とか。はっきり、ほんまに基本を言ってくださって丁寧にご指導してくださるんで、メッチャ感謝してます。祇園花月でスベった時も、舞台上でもダメ出しされながら、少しはネタ行けたかな?と思ってたら、「あれ、滑ってるで」って。もう、わからなくなるんですよ。アドバイスもらって、僕らはウケてるかなと思っても、辻本さん的にはその笑いの量ではウケてるってならん、それで満足するな、っていう愛のある言葉やと思います。

―これまでに一番失敗したのは祇園花月?

失敗…失敗(笑) そうですね。ほかにもありますよ。すっちーさんと営業でご一緒してオープニングをやらせてもらった時に、けっこう怒られました。あんなに優しいすっちーさんに、ガチ目で。オープニングですち子さんが出て来る、アメ撒いて、「誰に撒いてるんですか?」「イタチです」「ダメでしょう」って絡みがあるんですけど、初めてすち子さんとオープニングでそんなに絡むというか。うれしかったけど、すごい緊張で。僕は段取りで突っ込んでしまう癖があって、セリフは頭に入ってるけど、ちょっと違うセリフで返されたら、「あわわ」ってなって、ツッコミのフレーズを間違えて、「いや、違うやん」みたいな。稽古終わってから、「段取りでやりすぎやわ。何が来るかわからんで」って怒られて。その営業は富山で何日かあって、テレビ収録もあったんです。一応乗り切ったんですけど、マシンガンに撃たれてる気がしました。すごいいい経験になりましたね。
(緊張すると、あわわに?)
僕はメチャクチャ緊張しいです。それをいじられることもあります。辻本さんに「手の形おかしくなってるで」って突っ込まれたりとか。
(緊張しながらも、舞台に立ち続ける?)
そうですね。楽しいですね。どんな役であっても、新喜劇って一つのストーリーの中で、脇役でも、脇ワキワキ役でも、芝居の役に立ちたいっていうか…あ~うまいこと、まとめれないです。
(え~いいこと言ってたのに…)
「どんな役でも意味はあるんやで」っていうのをすっちーさんに言われたことがあるんです。ヤクザの舎弟の役で、「こいつ捕まえてきましたわ」の一言でも意味あるんやでと。しっかり見てはるんで。皆さん。
(そうですよね~)
ひとつ、僕に飛び抜けるものがあれば、もっと使ってもらえるかもしれないんですが、今やったら中途半端なんです。めちゃめちゃツッコミ上手いわけでもない、芝居上手いわけでもない。ボケが面白いわけでもない感じなんで。ひとつ何かね、これっていうのがあれば…。
(頑張ってください)

―最近、ハマっていることや興味を持っていることは?

僕ね、アイドルグループの欅坂46にめちゃくちゃハマってて、先週もライブコンサート行ってきました。メッチャ好きですね。今までアイドルにハマったことなくて。初めてです。こんなハマったの。
(へえ~)
欅坂46の魅力は、パフォーマンスしてる時、歌とかダンスしてる時はめっちゃクールなんですよ。でもバラエティになったら、普段はフツーの感じの子なので。そのギャップも好きで。めちゃくちゃカッコいいんですよ。ほんまに。名前言えって言われたら、全員言えます。
(じゃあ、ライブではテンション上がって?)
ペンライト振ってタオル持って。めちゃくちゃ楽しかったです。
(お気に入りは?)
います。小池美波ちゃんっていう子が。兵庫県の子でメチャ可愛らしくて…。小池美波ちゃん、新喜劇好きらしいです。伊賀健二さんのファンで。
(え~また渋い!)
東京の方でやってるバラエティで「欅って、書けない?」(テレビ東京)っていう番組があるんですけど、その中で小池美波ちゃんが芸人が好きで、「新喜劇も憧れです」って言ってて。MCが土田さんとハライチ・澤部さんから「新喜劇の誰が好きなの?」と聞かれて、「伊賀さんです」「渋いね~」みたいな。「新喜劇出てみたいです」とも。
(じゃあ、ひょっとして、ひょっとしたら?)
僕がもっと頑張ったら、いつか共演したいですね。ほんま好きなんですよ。でも、欅坂46、全員好きなんですよ。その中で押し、って言われたら小池美波ちゃんです。
(じゃあ、共演目指して頑張ってください!)

2018年9月10日談

プロフィール

1982年3月29日大阪府出身。
2000年NSC23期生。
2015年金の卵8個目。

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