MBS(毎日放送)

第91回 カバ

何か新喜劇に還元できるようなことをやりたいな、と。

―小さい頃からお笑いはお好きでしたか?

小学校2年生の時に、テレビでチャーリー浜さんが「ごめんくさい、これまたくさい、あ~くさっ」で、ドカーンとウケているのを見て、「僕はこういう大人になるんだなあ」、と。
(ふふふふっ)
たぶん、その時にすごく感動したと思うんです。そっから、将来は吉本に行く、と。
(もう、決めていらっしゃった?)
そうですね。決めてたんですけど、遠回りというか、先にいろいろやりたいことをやってから、たどり着いたという感じですね。
(ちなみにその話、チャーリー浜師匠にはされたんですか?)
ありますね。お酒の席で隣に座らせてもらった時に、お話したら、「そうか」とだけ。川畑さんから「こんな先輩にだけは絶対、なるなよ」と、笑いながら言われました。あははは。

―NSCへはいつ?

僕、柔道をやってて、高校卒業して大学へ行ったんですけど、ケガで柔道を辞めてしまって。勉強はちょっと苦手やったんで、大学も辞めました。
(ケガがなかったら、柔道を?)
柔道の最終目標としては、実業団でちょっとだけやるという、旭化成とか今でいうALSOKとか。それも吉本に入るまでに、やれること、やりたいことを終わらせておこうという、感覚でした。NSCには29期の募集の時に地元の友だちと一緒に受けに行ったんですが、僕がお金を振り込むのを忘れてて、入れなくて。その時、酒屋さんでアルバイトをしてたんですが、店長が変わって、その方が人間的にも考え方も魅力的な人だったので、この人の下でちょっと学んでみたいなと思って、2~3年働いてました。NSCには30期生として入ったんです。
(人生の最終目標は吉本?)
そうです。ここに入って、大活躍するっていう。

―NSCでコンビを組まれたんですね?

同じクラスにいた爆ノ介という、その時は坊主頭で、頭にラインが入ってまして。この人は絶対、関わったらアカン人やと思って、距離を置いてたんですよ。目をつけられへんように。僕、もともと違うコンビで、同じクラスの子と2か月だけ組んでみて、2か月経って解散しようとなった、その日に、爆ノ介から電話があって、「コンビ組まへん?」と言われて…あ~俺、終わったなと思って。
(どうして?)
すごい怖かったんです。こんな人に目を付けられるなんて、もう終わったなと。でも、見た目だけで、実はすごい大人ですし、いい人やったんです。
(コンビを組んでみてどうでした?)
僕、全くお笑いを知らなくて、最初、全然しゃべれなかった。爆ノ介はいろいろ経験してきてたので、NSCにいる間は漫才をやって、卒業してから爆ノ介が得意なコントをやろうと。それでコントというものを初めてやったら、こんなに面白いものがあるんやと。コントにハマって行った感じですね。
(お笑いでは何を目指されていたんですか?)
タレントになりたかったんです。フジテレビの「めちゃイケ」とか「とんねるずみなさんのおかげでした」とかをずっと見てたんで、テレビで、とんねるずさんみたいに大暴れしたり、めちゃイケメンバーにいじられるというのに、すごい憧れてましたね。そこに行くために、とっかかりはネタでというのがあったんで、ネタをやり始めて、その楽しさを知った感じですね。
(けっこう長い間、コンビを組まれてましたね)
9年です。「オールザッツ漫才(MBS)」やネタ番組にも出してもらって、レギュラーもちょっとだけですが、いただいたりしました。よく、(コンビが)持ったなと思います。デブで活躍するってすごく難しいと思う。太った人の武器ってほんまにデブネタだけだけど、爆ノ介が上手く使ってくれたというか。「ホンジャマカさんみたいなコントのシュール感を残しつつ、シティボーイズさんやバナナマンさんのラインで戦っていけたらいいよね」と、目標を掲げて、目指すところを示してくれたと思います。
(でも、コンビを解消することに…)
やっぱり、ずっと一緒にいるんで意見もぶつかりますし、僕も最初は何もわからなくて、はいはいと言ってたけど、9年もやってたら、勉強もするし、覚えて行くので、ぶつかることが多くなった気がします。そこで将来を見据えた時に、限界を感じたというか。僕は、爆ノ介と絶対、売れると思ったんですよ。将来も見えてましたし。ただ、今となっては、僕が爆ノ介の気持ちが分かってなかったんかなあ、とか思いますけど。爆ノ介は爆ノ介で思うところがあったと思いますね。

―解散後は?

正直、誰かとコンビ組むのは考えなかったですね。誤解を生むと嫌なんですけど、コンビを組むなら「カバと爆ノ介」を超えないといけないし。果たして爆ノ介以上に僕を上手く使ってくれるのか。僕が自分の使い方をわかってないので。そういう意味では爆ノ介が1位で今後も現われないだろうと。でも、ピンじゃ、活きないなと思って。残るはトリオか新喜劇か。新喜劇には、藍ちゃんもいるし、今別府さんもいたので、もう必要ないやろと思って。どうしようとずっと悩んでいる時に、月亭八光さんに「新喜劇、行き!」と言っていただいたんです。八光さんにはすごくかわいがっていただいてて、「新喜劇行ったら絶対重宝されるし、今別府よりはカバの方がインパクト強いし、今までもやって来てるし、笑いもちゃんと取れるし」って、すごい押してくださって。ちょっと意識するようになって。その頃、漫才コンビを解散して、新喜劇へという流れがあって、それが新喜劇の人からしたら、どう思われているかと思うと、行きにくいというか。だから、自分と向き合って、ちゃんと考えて…。
(座長の小籔さん、すっちーさんも元漫才コンビだし、王道じゃないですか!)
あはははは。そうなんです、そうなんです。八光さんが、すっちーさんと3人のご飯会を開いてくれて、「新喜劇に入りたいんですけど」と相談したら、すっちーさんが「もう、聞いてるで。オーディション受けるんやな。楽屋でも噂になってんで」と言われて、「ええっ!? 僕1回も言うたことないんですけど…」とビックリしました。すっちーさんは「受けるのはお前が決めたらいいことやし。特別扱いは絶対にでけへんから、そこはお前が頑張って実力でちゃんと上がって来てくれ。期待はしてるから、受かったら頑張りや」と言ってくださいました。

―オーディションはトントン拍子に?

いえいえ、全然そんなことなかったです。3次のお芝居で二役やるんですけど、二役とも僕の中では120%出したつもりでした。もちろんスタッフさんが笑う訳はないんですけど、それにしても手ごたえがなさすぎて。これ、大丈夫かな? と。一緒に受けてた知ってる子が「メチャクチャ良かった。笑ってもらって」と言うんで、「あ、俺、落ちた」と思って。でも、いざ蓋開けたら、僕が受かってて向こうが落ちてました。あいつ、どこで手ごたえ感じたんやろ? と。
(ちなみに特技披露は何をされたんですか?)
漫才劇場で小道具とかいっぱい借りて、物ボケとモノマネとギャグを10個くらいやりました。そしたら、「もういいですよ」と言われました。
(合格の連絡が来た時はうれしかったのでは?)
戸惑いましたよ。何でやろ? と思いました。みんなが「受かるやろ」と言うてくれてただけに、プレッシャーでした。

―初舞台は覚えてますか?

合格した年の9月13日に金の卵9個目ライブで初舞台があって、その次に西梅田劇場で、酒井藍座長週で、今別府さんとオープニングで使っていただきましたね。
(覚えてますか?)
いや~覚えてないなあ…。すごく緊張していた事だけ覚えています。
(NGKの初舞台は覚えてますか?)
全然、覚えてないな~。新喜劇でNGK立てた! というのは、あんまりなかったんです。というか、今もずーっと続いてることなんですけど、僕、いろんな人に「メッチャ仕事あるやん」とか「良かったな、仕事増えて」って言ってもらえるんですけど、僕は何も出来てないんです。新喜劇の方々って何かしら、自分で発信して、代名詞になるようなことをいろいろやってらっしゃるんです。松浦さんやったらギター、裕さんやったら乳首ドリル。僕、まだそこを何も埋めてなくて。皆さんが上手に僕を使ってくださっているだけで、僕からは何も出来てない。与えられたことはきっちりせなあかんし、隙あらば何かせなあかんし、何かしたいと思っているし。というので、今3年目でずっとモヤモヤしてる。僕から新喜劇に貢献出来てへんなあっていう。

―新喜劇の中でお世話になっている人は?

舞台のことで教えてもらうことが多いので、やっぱり川畑さんですかね。通常公演で僕、川畑さんの舞台に1回しか出たことないんですけど、営業とかでご一緒させてもらったり、若手のイベントを先頭に立ってくださってて。ほんまに細かいところで、気づけてたはずやけど、気づけてなかったところとかを上手く教えてくださったり。あと、近いところでは、諸見里さん、吉田裕さんとか、信濃さんとか。
(印象に残っているアドバイスとかあります?)
裕さんが「新喜劇は空間芸やから。その空間、舞台で見せているのは日常やから。日常の中で、自然と笑いが取れるようにみんなやってるねん。笑いを取りに行ったりしたら、滑ってしまうことが多々あると思う。それは空間からハミ出してしまっているから、コントになってしまう。そうなってしまうと、見てる人に違和感が生まれるからウケへんねん」というのは凄い残ってますね。あと、内場さん。舞台は生だから、いろいろハプニングも起きるじゃないですか。セリフを噛むとか忘れるとか、ポカするとか。やっぱりみんな笑っちゃうし。反応しちゃうんですけど、内場さんは、芝居の役から絶対に抜けない。お父さん役でやっているのに、急に内場さんになって、反応したりツッコんだりはしない。お父さんとして反応する。それは、「見に来てくれてるお客さんの中で、お芝居をしっかり見ている人がおれば、抜けてしまうと「なにこれ? 今まで見て来たのはなんやったん?」となっちゃうから、もしかしたら1人でもお芝居をちゃんと観てる人がおるかもしれん、だから役から抜けへんねん」、と言われた時は、あっと思いました。新喜劇ってこういうことなんかな、と。僕もコントの人間やったんで、その時の癖で何かあったら、すぐに反応してまうし、抜けてるって言われることが多々ありましたし。今でも抜けてることもいっぱいあるんですけど、それを耳にしてから、しっかりお芝居しようと思いましたね。

―新喜劇はコントの世界と全く違う?

だからすごく苦戦はしてます、正直。全然違うことですし、ゴッチャにしたらいかんな、と。今までしてきたことを活かされへんかなと思ってたけど、一旦、ちょっと違う脳みそやなと気づいて、切り替えるようにしました。新喜劇ってほんまに良く出来てる。大先輩、諸先輩方が歴史を受け継いできて、肉付けして、どんどん良くして、渡してくれたところにたまたま僕は拾っていただいて、関わらせてもらってるので。この時代はこういう奴がおってんでと、のちのち言ってもらえるように頑張りたいと思ってますけどね。3年目なんで、芝居をしっかりと、常々言われてますし、自分でもそうやなと思いますし。あのデブ、メッチャ芝居しっかりしてるやん、とか。言われ出すと僕としてもうれしいです。

―新喜劇で何か悩んでいることは?

締める役というか、しっかりお芝居する人、ボケを担当する人もいるんですけど、やっぱり、これだけの見た目があるのに、持て余しとるんかい、と。それは出ただけでわかるんですね。お客さんの目、この太った人は一体何をしてくれるんやろ? みたいな期待にはまだまだ、応えられてないのかなあと思いますね。
(これまで手ごたえを感じたことは?)
いや~ないんですよね~。ああしたら良かったかなあ、と思いながら、大体1週間終えますね。今日楽日ですけど、まだちょっとずつ変えてみたり。もっとウケへんかなあ、と。
(吉田リーダー週の「デブの壁」はウケてましたよ)
うはははは(笑)あれもう、裕さんと作家さんの努力の賜物ですやん。あの発想は。お客さんが笑ってくれて嬉しいんですけどね。作家さんとリーダーの思惑をしっかりと遂行出来てるんやな、と。常に貴重な歯車にはなりたいなとは思ってます。新喜劇の看板でやらせてもらっているんですけど、新喜劇の中だけでおさまりたくない、というのは、ずっと思っているんで。ただ、拾っていただいたので、最大に還元したいところは新喜劇と思っています。僕を見て、新喜劇に入りたくなったとか、劇場に行きたくなったとかいう人を1人でも多く増やす。そのために僕がどういう風に活動していこうかと。新喜劇+αで何かやりたいなと思ってますね。

―具体的に何かやりたいことが?

食べることが好きなんで、やっぱりグルメロケはしたいかなと思ってます。あんまり外をブラブラするのは好きじゃないんです。疲れるんで。デブのあるあるなんですけど。
(あはははは)
ほんまに僕ずっと世の中には美味しいものが多すぎるって、思ってて。まだまだ出会ってないものが沢山あって。やっぱりご飯屋さん行くたびにそこの味があるし、こんな風に調理してるんやと、毎回、感動してまうんですよ、「うまーっ」て。こんなにおいしいものがあるんでっせというのを、1人でも多くの人に知ってもらいたい。そのお店にも行って、僕が面白いこと言うてたり、何か面白いことが出来たら、それがきっかけで新喜劇にも来てくれるかもしれないし、僕が関わったところすべてに福が行くような…。どれだけ外からのお客さんを取り入れられるか、幅の広げ方やと。それぞれの獲得の仕方があると思うので、僕は僕が得意としてるところで、お客さんを獲得して行けたらな、と思いますね。

―ハマっていることや趣味は?

やっぱり、食べ歩きですよね~。あとは…そうですね、お箸が好きなんで。ご飯食べる時のお箸ってめっちゃ大事やと思ってて、お箸が割り箸だとなんか美味しさに欠けるような。今日はどんなお箸で食べようか、と楽しみになるくらい、10セットくらいは家にお箸があって、それは現在進行形で増えていってます。
(お箸コレクションですね)
昔、「My箸」も持ち歩いていました。最近は持ってないんですけど。3~4年目くらいまでは持ち歩いてましたね。
(Tシャツにもローマ字で「晩ごはんピザ取る」と書いてありますね)
これは僕の友だちが作った物なんですけど…。Tシャツの肩にサルのイラストがあって、名前がピザトルっていうおサルさん(ショウガラゴ)なんです。
(へえ~っ)
その子の名前をつける時に「今日の晩ごはんどうする?」「ピザ取る?」っていう会話があって、この子の名前ピザトルでええやん、ってなって。そんなノリで作ったので、買いました(笑)僕、自分でTシャツを作ってて。やっぱり、太っていると、5とか6とか、3XL着てるんで、チェックの服とか、オーバーオールとか限られてくるんですよ。太った人にはオシャレして欲しい。もっと可愛いのを。そういうのをやってます。
(いいじゃないですか!)
あと8月1日に入籍しました。
(そうなんですね! おめでとうございます!)
それが最近あったプライベートの出来事ですね。
(あ~もう、時間が…)
またプライベート聞いてください。あはははは。

2019年9月2日談

プロフィール

1983年1月29日兵庫県明石市出身。
2007年NSC大阪校30期生。
2017年金の卵9個目。

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