Q1あなたの仕事を教えてください。
2019年、元号が平成から令和に変わる瞬間、天皇陛下を撮影する。2023年、広島でG7が開催されたとき、空港に到着したウクライナのゼレンスキー大統領の姿を画に残す。歴史が動く瞬間をカメラに収め、世の中に発信するのが、私たち報道カメラマンの仕事です。
前述したのは、私がこれまで撮影に成功したできごとの一部。希少価値の高い映像を撮ることができたら、長く受け継がれ使われ続けるのは、報道カメラマンの醍醐味です。

もうひとつ、大きなやりがいがあります。自分で考え、動き、多様な人生に触れながら、メッセージを発信できることです。
2024年、私は病気の影響で視力をほとんど失ったある中学生が、フットサルに挑戦する姿を取材し、放送しました。
彼が困難に立ち向かう姿を目の当たりにし、そのひたむきな姿勢が、視聴者にとっても自身の日々を見つめ直すきっかけになればと思いました。弱視のプロサッカー選手との出会い。弱視者向けのフットサル「ロービジョンフットサル」との出会い。公式試合への出場…密着した期間は約1年。本人やご家族へのインタビューなども含めて、私一人で追い続けました。放送終了後、ご両親からも「赤井さんに取材してもらったことで、息子も成長できました」と感謝の言葉をいただいたときの嬉しさは、今でも覚えています。
Q2自分の想いを大切にできる理由は?
目がほとんど見えなくなった彼への特集取材をやり遂げられたのは、私一人の力ではありません。
実は、1年間の取材・撮影において、何度も迷いが生じたことがありました。自分がしていることは、本当に意義のある報道だろうか。視聴者に有益だろうか。何かがずれてしまえば、彼本人やご家族を傷つけることになりかねません。
上司や先輩に何度も相談し、たくさんのアドバイスをもらいました。
どんなに忙しいときでも、私のやりたいことや意志を尊重し、真剣に向き合ってくれる先輩方に、どれだけ助けられたか分かりません。

1時間のドキュメンタリー番組『映像’24』で、小児性犯罪の加害者に密着したときもそうでした。
公園で、少年に偏った想いをもつ加害者の男性にカメラを向けているときのこと。突然、見知らぬ男の子が男性の目の前に現れました。「ふたたび過ちを犯してはいけない」と、思わず目をつぶる加害者。
いきなりの事態に、何をどう撮ればいいのか分からず、その一部始終はガタガタと揺れた映像になってしまいました。
それを見た先輩は「下手だけど、視聴者の目線で迷いが表現されていると思う」。正直、悔しさでいっぱいでしたが、少しだけ救われた気がしました。
もしかしたら先輩は、この失敗も覚悟したうえで、私に撮影を任せてくれたのかもしれません。思い返せば、「全力を尽くせばなんとか乗り越えられる壁」を仕事として託してもらった気がします。そして、任せっぱなしにはせず、ちゃんと見守ってくれている。
だからこそ、厳しい言葉も、嬉しい言葉も、素直に受け入れられる。関わる人や会社を信じて前に進めるのだと思います。
Q3これからの目標を教えてください。
私は今、南海トラフ地震が発生したときの準備を進めるプロジェクトに参加しています。2023年、入社7年目になったときに「テレビ局として、社会に何ができるのか」を強く考えるようになりました。そんなときに、上司から「南海トラフ地震の会議に参加してほしい」と打診を受けたのです。
津波が起きたとき、ヘリコプターで何を撮影するか。必要な機材は何か。どの災害備品をそろえるか…。映像に関することだけでなく、設備や環境のディスカッションにも参加しています。

だからこそ、2024年1月1日に発生した能登半島地震は、他人事ではありませんでした。「今、改めて、災害の重大さを身をもって知っておかなければ、南海トラフ地震が起きたときに何もできないのでは」という想いに駆られ、現場への派遣を直訴したんです。
孤立集落へ向かう自衛隊の同行取材は、重い機材を持ち、道なき道を1時間半歩き続ける過酷なものでした。ただ、被災した地域の皆さんのショックと比べたら軽いものです。災害の残酷さ、準備の大切さを思い知らされるだけでなく、災害と向き合う覚悟を自分自身に改めて問う重要な機会にもなりました。
テレビには、その人に生活や考え方を問いなおす時間をもたらし、よりよいものにする力があります。
いつか、能登半島での経験を活かして、災害対策を改めて考えるきっかけを視聴者の皆さんに提供したいです。
休日の過ごし方
休日は、年に1〜2回、ひとりで海外を旅しています。最近はアルバニアやボスニアへ。知らない街を歩いたり、現地の人と話したりする時間が楽しくて、気づけば遠くまで足を延ばしてしまいます。
それから、バイクでのツーリングも大好きです。入社2年目のときに買った愛車で、和歌山や兵庫、富士山まで走ったことも。風を切って走ると、気分がリフレッシュされます。
この間のゴールデンウィークにはまとまった休みを取ったんですが、いつもとは違う過ごし方ができて、新鮮な気持ちになりました。やりたいことを思いきり楽しめる時間があるのは、やっぱり嬉しいですね。
Q4MBSにピッタリな人は?
入社間もない若手社員の想いも尊重してくれるのがMBSのいいところ。
私も入社2〜3年目のとき、獣害となる鹿をジビエにする会社を設立した学生の特集を制作するチャンスを得られました。きっかけは「生き物を殺して食にすることの重要性を発信したい」という想いから。
しかも数年後、改めて彼らを取材・撮影する機会にも恵まれました。ジビエの料理を振るまう店舗を出していて、プライベートでも利用しました。感慨深い気持ちになりました。

譲れないこと、
叶えたいことがある人、ぜひ!