現在、セ・パ交流戦真っただ中のプロ野球。阪神タイガースは6月10日から12日まで西武との3連戦、そして13日から15日まで楽天との3連戦で6連敗。それでも、2位のDeNAと2.5ゲーム差でセ・リーグの首位に立っています(6月16日時点)。ミスタータイガース・掛布雅之氏が6連戦の中で注目したポイントを解説します。
リズムが崩れる中での6連敗 チームとしてどれだけ我慢できるか
―――6連敗しましたが、先週の月曜日は3.5ゲーム差でしたから、ほとんど変わっていませんね。
「藤川(球児)監督が交流戦前に、岡田(彰布)前監督のやった2年の野球や今年のキャンプでやった野球と全く違う布陣で戦いを始めたわけです。佐藤(輝明選手)がライトを守り、森下(翔太選手)がレフトを守り、そしてサードには外国人選手が入ったり熊谷(敬宥選手)が入ったりだとか、キャンプでもやったことがないような野球をやった場合に、しばらくしてくると野球のリズムが崩れてくるということは多々あるんですよ。だから今、阪神が監督も含めて、どれだけチームとして我慢できるか。17日から阪神甲子園球場でセ・リーグのルールで戦いますから、このロッテとの3連戦がすごく阪神にとって大切な3連戦になると思います」
―――逆転負け、サヨナラ負けが続いてる現状についてはいかがでしょうか?
「阪神は、7回・8回・9回を完璧な投手リレーでつないでいく『勝つパターン』を持ったチームなんです。そのチームが、7~9回に点を入れられて逆転負けをするという野球は、勝ちゲームが負けゲームになるわけですから、これはすごく大きいんですよ。ただ、2位と2.5ゲーム差ある。それだけ貯金があったということです」
「リリーフ陣の負担がちょっと重くなりすぎている」
―――阪神が誇る鉄壁のリリーフ陣にも疲れが出てきたのでしょうか。掛布さんとしては、6月6日のオリックス戦で頭部に打球を受けた石井大智投手(今シーズン24試合登板・17ホールド・3セーブ・防御率0.36)の離脱の影響は大きいとして、「先発をもう1イニング引っ張る采配をしてもいいのでは」という見方のようですね?
「10日の試合で先発した才木(浩人投手)は6回を投げて94球、無失点で降板。ギアを上げなければいけないイニングが何度かあったので、6回94球というのは、ベンチでしかわからない才木の体力の消耗があったのかもしれませんけど、6連戦の頭を投げるピッチャーですから、6イニングでおろすようなことをすると、リリーフ陣がきつくなります。これはもう1イニング伸ばせたと思うんですよ」
「11日の先発・伊藤(将司投手)のピッチングは100点です(8回途中105球を投げて無失点)。14日の大竹(耕太郎投手)は5回を投げて88球(1失点)ですから、しかもこの試合は楽天のホームでDHを使っているわけですから、もう1イニング伸ばせたと思います。そうするとリリーフ陣のバランスが変わってくると思うんですよね。リリーフ陣の負担というものがちょっと重くなりすぎている。その分、先発投手陣をもう1イニング伸ばすような形のピッチングリズムを考えれば変わるんじゃないかなと思います」
―――やはり考えるのは球数ですか?
「球数以上に、ピンチを背負ったときにギアを上げる出力、前半3回までに一度二度上げると、後半に出力が上がらないんですよ。(ピンチの場面に出力を上げると)すごく体力を消耗します。だから、同じ94球でも体力の消耗の多い94球と少ない94球がありますね。前半3回、相手打者が一回りする間は、出力を抑えた投球で抑えるということが、先発ピッチャーはすごく大切なんだというのは元巨人投手の江川(卓さん)が言っています。3回までにピンチを作ると、後半しんどいって言うんですよ」
佐藤輝明選手の「あってはならないプレー」 チームはどうすべき?
―――そして掛布さんがどうしても気にかけてしまうという佐藤選手。15日の楽天戦の延長11回、同点の場面で先頭バッターとして打席に入り、センター後方にホームラン性の打球を放ちました。しかし、これは惜しくもスタンドには届かず。佐藤選手はスタンドインを確信していたのか、1塁ストップとなりました。
「自分の感覚で“スタンドまで届いたな”という感覚は僕も何度もあります。ただ、楽天の球場の右中間の広さだとか、風だとかいろいろ考えれば、走らなきゃだめ。絶対走らないといけません」
―――いい感覚だと、ああいった“確信歩き”というのも?
「わかるんですが、打球が飛んだのは外野の最深部ですよ。右中間の一番深いところまで飛んでいるわけですから、ホームランになればなったでいいので、一塁ベースまでは全力疾走せずとも普通に走ればいい、7割ぐらいの力で。そうすればこういうプレーは起きないんです。(佐藤選手は)歩いてますもんね。ただ、4番として、とんでもなく強いホームランを打ったときには、4番の強さを見せたいんですよ。佐藤の気持ちはわかりますが、走りなさいと」
―――今回のようなことが起きてしまった後、チームとしてはどうすべきですか?
「ベンチの中で『佐藤に怒れるコーチがいたか』『藤川監督がベンチの中で大声で怒ったか』、これがすごくポイントなんですよ。あってはならないプレーをやってしまったわけですから、そこでコーチが選手の前で佐藤を怒っていれば、佐藤の野球は変わると思います」
「それと、開幕前に言ったと思うんですが、大切なのは『藤川監督と選手の距離感』と『藤川監督とコーチの距離感』です。今、藤川監督とコーチの距離感が、ちょっと離れすぎているんじゃないかなと心配してる。だからこういうプレーが起きるんじゃないかなと思うんですね」
交流戦も残すところ6試合。本拠地・甲子園でロッテ、ソフトバンクとの試合に臨む阪神はどのような戦いを見せてくれるでしょうか。