いよいよ開幕を3月28日に控えたプロ野球。今年の阪神タイガースはどうなる?“ミスタータイガース”掛布雅之さんに注目ポイントを聞きました。
3番という打順が佐藤輝明選手に良い影響?「比較的、精神的には楽な打順」
掛布さんの開幕スタメン予想は以下の通りです。
1(中)近本光司選手
2(二)中野拓夢選手
3(三)佐藤輝明選手
4(右)森下翔太選手
5(一)大山悠輔選手
6(左)前川右京選手
7(遊)木浪聖也選手
8(捕)坂本誠志郎選手
9(投)村上頌樹投手
―――ポイントは6番バッターだと?
「3番・4番・5番というクリーンナップは良いバッターが3人続きますので、この3人が塁上にいる中で6番バッターに打順が回ってくるケースがすごく多いんですよ。6番バッターは『第2の4番バッター』という形で、ポイントゲッターにならなければいけない。岡田彰布前監督は、8番の木浪選手を起点にして、近本選手で返すという下位打線の流れを作って戦っていましたが、今季の打順で前川選手をポイントゲッターにしなければいけないとなると、7番バッターにある程度打てるバッターを持ってこないと前川選手のマークがきつくなり、前川選手の良さが出ません。なので、8番に木浪選手を持ってくることはまずないと思います」
―――去年は木浪選手が“恐怖の8番バッター”でしたね。
「木浪選手が“恐怖の7番バッター”になれば、前川選手がポイントゲッターになりますので、打線が繋がっていく。横浜DeNAに匹敵する強力な打線になるには、6番・7番バッターがポイントかもしれない」
「それともう1つ、この打順の売りは、1番から3番までが左バッターなんです。私は毎年、佐藤選手に期待をして、ちょっと期待裏切られて。ただ、今年まで、佐藤選手でいってください。なぜかというと、佐藤選手自身も上位打線を打ちたいという気持ちは常に持ってきたんですよ。たぶん3番サードで固定して1年間戦っていくと思います。3番バッターというのは初回に必ず打順が回ってきますから、ベンチに腰を下ろす暇がない。4番は一度腰を下ろして、1番バッターが出塁するかアウトになるかで頭の中で計算して打席に向かっていくんですが、その暇がない3番の速いリズムが、佐藤選手のバッティングリズムと守るリズムを変えていくと思います。この3番佐藤選手が機能しないと、藤川球児監督のこの打線がバラバラになると思います」
―――3番の打順で打つことは、守備にも影響する?
「守備にも影響します。良い影響になると思います、そういうリズムになりますので。3番はプレッシャーがない打順で、一番楽なんですよ。4番バッターが後ろに控えてくれていて助けてくれるという打順なので、3番バッターというのはクリーンナップの中で大変な仕事をしなきゃいけないんですが、比較的、精神的には楽な打順なんです。私も3番を打ったことがありますが、後ろに田淵幸一さんがいました。僕が打てなくても、田淵さんの責任ですよ(笑)。3番はそういう逃げ道があるというのもいいところなので、すごく佐藤選手が楽に野球ができるリズムを3番という打順が作ってくれると思います」
―――「森下、あとは頼んだよ」という気持ちでいける?
「そうです。それと5番に大山選手が控えています。大山選手もある程度数字を残していますから、大山選手が4番と3番を育てる、田淵さんのような存在になればいいと思いますね」
―――大山選手と若い選手がどれだけノビノビできるかですね。
「この打線が本当に繋がったら、ぶっちぎるかもしれません」
西勇輝投手、大竹耕太郎投手、伊藤将司投手、高橋遥人投手も控える阪神の先発投手陣
掛布さんの開幕先発ローテーション予想は以下の通りです。
■3月28日(金)村上頌樹投手
■3月29日(土)富田蓮投手
■3月30日(日)門別啓人投手
■4月1日(火)才木浩人投手
■4月2日(水)ジェレミー・ビーズリー投手
■4月3日(木)ジョン・デュプランティエ投手
―――このローテーションのポイントは?
「この先発6人を見ますと、実績があるのは、ビーズリー投手、才木投手、村上投手。他の3人はそんなに実績はありません。ただ、春先は若い選手、新しい力を試す時期なんですよ。勝負どころの9月になってこの3人(富田投手、門別投手、デュプランティエ投手)のメンバーを試すなんてことはできません。4月の早い段階でこの3投手がどういうピッチングをするかということで、後半の勝負どころになったときに使えると判断できると、先発投手の層が相当厚くなるわけですよ。この3投手が駄目でも、今2軍にいる西勇輝投手、大竹耕太郎投手、伊藤将司投手、そしてけがから復帰する高橋遥人投手の4人が控えているわけですから、この3投手も失敗を恐れずに思いっきり挑戦できます。そのあたりを藤川監督は考えてこの先発6枚でいくんだと思います」
「ポイントはですね、序盤は負けてもいいと言っても勝率5割ぐらいの数字を持っておかなければいけないので、連敗は許されないです。そう考えると、村上投手と才木投手の2人は実績がありますので、この2人のどちらかで連敗止めるぐらいのピッチングをして、この2人で25勝、これが優勝する条件の1つです」
「12か13は貯金ができますよね。才木投手に関しては、先日のドジャース戦ですごいピッチングを見せましたけど、そのときのストレートの回転数が2700という数字が出たと聞いています。2700の回転を持っているピッチャーは現役ではほとんどいないんです。我々の時代の江川卓投手がそれぐらいのスピン量を持っていた」
―――スピン量が多いというのは?
「ボールがバットの上を行きます。バットとボールが当たらないストレートを投げられる才木投手は、かなりメジャーを意識しています。今年の才木投手も期待したいですし、村上投手も3月21日のオリックス戦で投げたときに、村上投手らしい低めにコントロールされたストレートを投げていましたので、この2人が中心になって、ローテーションが回っていけば、おそらく大崩れすることはないと思います」
―――門別投手には左のエースになってもらいたいと?
「メジャーのカブス戦で素晴らしいピッチングをしましたので、彼は将来的には左のエースになってもらいたい」
“野球の怖さ”を背負って戦うシーズン開幕へ 優勝はどのチームの手に?
―――阪神はドジャースとカブスに勝ちましたが、選手らは「俺たちドジャースに勝ったんだ」と、少しあぐらをかいているような気持ちになってることはないですか?
「オープン戦が終わり、28日に開幕です。開幕までの数日間で気持ちが180度変わります。開幕モードに入ったときに、選手1人1人が“野球の怖さ”というものを背負って戦いにいくんですよ。ドジャースやカブスの試合のときは野球の怖さを背負っていません。阪神ファンの期待だけを背負って戦っていましたけど、これから始まるペナントレースは、本当の意味の野球の怖さを背負いますので、目の色が変わりますから。今調子がいいとか悪いとか全く関係ありません」
―――それを踏まえて、掛布さんに今季の順位予想をしていただいたところ、3位がDeNA、2位が巨人、そして1位が阪神としていますね。
「丸佳浩選手のけががなければ1位を巨人としていました。巨人は序盤、苦しくなるんじゃないかなと。DeNAはトレバー・バウアー投手の復帰が怖いんですけど、桑原将志選手という昨季の日本シリーズMVPが骨折したんですよ。このあたりで、序盤は阪神が一歩リードをして、そのままゴールテープを切るんじゃないかなと思います」