12月4日、半月以上を経てようやく完全に鎮火した大分・佐賀関の大規模火災。現場は木造民家が密集する地域で、家同士が近く延焼しやすかったことや、道幅が狭く消火活動が難航したことから、被害が大きくなったとみられています。
実は、「危険な密集地」のうち約6割が集中している関西。中でも大阪は425haと全国ワーストです。なぜ関西に多いのか?どう対策していけば良いのか?近畿大学・寺川政司准教授の見解を交え、現場を取材する記者がお伝えします。
1位は大阪・3位は京都…関西に多い「危険な密集地」

2012年、国は地震時等に著しく危険な「密集市街地」を公表しました。火災が起きた場合の延焼危険性(燃え広がりやすさ)や避難困難性(避難しにくさ)が高い地域のことです。「住宅が1haあたり80戸以上」かつ「想定平均焼失率が20%~25%以上」などを基準としています。
こうした「危険な密集地」は全国で1347ha(甲子園球場約350個分)ありますが、特に関西に多く全国の約6割が集中しています。
<関西の危険な密集地>
▼大阪 425ha
▼京都 220ha
▼兵庫 176ha
▼滋賀 10ha
(国交省資料より 2024年度末時点)
中でも大阪は425haで全国ワースト。2位は神奈川県・3位は京都府・4位は兵庫県と続くことからも、関西が目立っていることが分かります。
「ここら辺は空爆にあっていない」大阪・鶴橋の古い街並み

大阪・生野区の鶴橋駅付近は、小さな木造住宅が隙間なく建ち並ぶ「危険な密集地」。道幅も非常に狭く、7軒連なっている長屋も。空爆を免れた古い街並みが今も残っているのです。
「戦時中にここら辺は空爆にあっていない。それが今の状態で残っている」(北鶴橋連合振興町会・田中照章会長)
住民も長年住み続けている高齢者が多く、軒先にバケツを置くなどして、火災には常に警戒しているといいます。
「(消防車などが)来るまでは自分たちで頑張ってやらないと…全部消滅してしまうでしょうね。(住宅が)つながっているので」(北鶴橋連合振興町会・田中照章会長)
解消進む密集地…ここ10年ほどで約4分の1に

一方、行政の尽力により「危険な密集地」は解消しつつあります。大阪ではすでに1823haが解消済みで、全国で見ると、ここ10年ほどで約4分の1にまで減ってきています。(2012年度:5745ha⇒2024年度:1347ha)
大阪府・大阪市では、消防車が通れない道路の幅を広げる工事(例:約2.7m⇒約6m)が行われたほか、また、燃えやすい古い住宅の建て替えなどに補助金制度を設けるといった対策を行ってきました。
国も地方公共団体の取り組みを支援していて、2030年までに密集地をゼロに近づけようとしています。
「今さらほかへ行くのも…」立ち退き・セットバックは困難

しかし、たとえ補助金があったとしても、現実的にも気持ち的にも、解決できないことも。
取材をした大阪・生野区では、セットバック(道路の幅を広げるため土地を後退させること)の話が出ているようですが、道路沿いの住民からは「家がこれ以上狭くなると住めない…」「ご近所付き合いがあるので今さらほかへ行くのも…」といった声があり、なかなか解消が進んでいないようです。
「著しく危険な密集地域」国指定エリア以外にも危険な場所は多数存在

今後どうすればいいのか?
近畿大学の寺川政司准教授は「すぐに密集を解消できなくても、地域で今できる防災体制をつくる」ことが重要だと指摘。セットバックや立ち退きが現実的に難しい以上、今の状態で災害に強い街を作っていくしかありません。避難ルートの確保などについて住民同士で話し合う機会をつくり、それを行政が後押しすることが必要だと言います。
また、寺川准教授は「『著しく危険な密集地域』以外にも危険な場所はたくさんある」と指摘。実は、大規模火災のあった大分・佐賀関は「著しく危険な密集地域」に指定されていない場所でした。
国が定めたエリア以外にも「危険な密集地」は存在しています。火事から街を守るためにも、私たち一人ひとりが防災意識を高める必要がありそうです。