物価高を受け、政府は11月21日、「総合経済対策」を閣議決定。電気・ガス料金支援や、子ども1人あたりに2万円給付、そして自治体向けの交付金を拡充して「おこめ券」などで食料品の購入を支援することを決めました。

 政府が打ち出した「おこめ券」配布の支援。実現に向けたプロセスは、着実に進んでいくのでしょうか?コメ政策に詳しい流通経済研究所・折笠俊輔主席研究員の見解を交えてまとめました。

コメ価格 12週連続の4000円台

 コメの価格が高止まりしています。農水省によると、11月23日までの1週間に全国のスーパー約1000店舗で販売されたコメ5kgあたりの平均価格は、前週より52円上がって4312円となりました。2週間ぶりの値上がりで過去2番目の高値となり、12週連続の4000円台です。

 新米が出ても価格が下がらない状況について、専門家からは、コメの量は足りているものの、仕入れの段階である「概算金」が高かったため、市場に出るコメの価格もなかなか下がらないのではないかという見解が示されています。

最近よく耳にする「おこめ券」とは?

 そうした中、物価高対策として政府が検討しているのが「おこめ券」の配布です。

 現在流通しているおこめ券は主に2種類あります。

 ▼全国共通おこめ券:全米販(全国米穀販売事業共済協同組合)が発行
 ▼おこめギフト券:JA全農が発行

 おこめ券は、コメと交換するための券ですが、店舗によっては食料品や飲料などと交換できる場合もあるということです(利用の可否は店舗による)。

 なお、おこめ券自体には有効期限がないため、受け取った後いつでも利用することができます。

配布する・しないは自治体が判断

 おこめ券はいつ、どのように配布されるのか気になるところですが、流通経済研究所の折笠氏は「そもそもおこめ券を配らない自治体も出てくるのでは?」という見解を示しています。

 実はおこめ券を支給する・しないは各自治体の判断に委ねられるということです。

 政府は、物価高対策として「1世帯あたり平均1万円程度の支援」に加え、食品価格高騰をふまえて「1人3000円相当の特別加算分」を別枠で予算措置し、その“おすすめメニュー”としておこめ券を提示しています。

 そのため、何をどう支援するかは自治体が決めることになります。おこめ券のほか、独自のポイントサービスなどに利用することも可能だということです。

 対策の進め方について、政府は12月3日から、自治体向けの説明会を開く予定です。しかし、一部の自治体の長からは、「国がやるべきことを地方に押し付けている。無責任ではないか」といった批判の声も上がっています。

 ちなみに、大阪市・京都市・神戸市におこめ券を配布するかどうか確認したところ、3市とも現時点では未定とのことでした。

 京都市は、「重点支援地方交付金」がいくらもらえるのかが不明だとし、おこめ券・商品券・現金給付はそれぞれ、事務費がどれくらいかかるかなども検討が必要だと回答しています。

「コスト面ではマイナス」と専門家 実は12%の手数料

 折笠氏は「おこめ券には手数料が乗っていてコスト面ではマイナス」と指摘しています。

 おこめ券は1枚500円で販売されていますが、店頭で利用する際に12%の手数料が引かれるため、実際に交換できるコメの価格は440円分になるということです。

 また、物価高対策として、おこめ券ではなく現金給付を望む声もあります。

 内閣府は、自治体が決めるのであれば、現金給付でも問題ないとしています。しかし折笠氏は、現金給付は貯蓄に回ってしまう可能性があり、制度の趣旨に合わないのではないかと述べています。

コメ価格 専門家は「年明けから安くなるかも」

 最後に、折笠氏に今後のコメ価格の見通しを聞いたところ、「年明けから徐々に安くなるかも」とのことです。

 現在はコメは余っている状況ではあるものの、高く仕入れたコメが流通していることから、年内は高止まりが続く見込み。しかし年末年始の「出費疲れ」に合わせて徐々に値下げされる可能性があるといいます。

 また、新米が出回る前の来年5~6月ごろには、さらに安くなるのではないかと予測しています。

 おこめ券をめぐる対策が、各自治体でどのように具体化していくのか、今後も注視していく必要があります。