高騰が続く都心の新築マンション。不動産経済研究所によると、2025年度・上半期に東京23区で発売された新築マンション1戸あたりの平均価格は、前年同期比で204%上昇し、1億3309万円に。3年連続で過去最高を更新しています。

 近畿圏でも同じ動きが。2025年度の上半期に近畿圏で発売された新築マンションの1戸あたりの平均価格は、前年同期比で150万円アップの5543万円に。1973年の調査開始以降、最高値を更新しました。

 なぜマンション価格が高騰しているのか?リスクや対策は?不動産に詳しい、さくら事務所・山本直彌副社長の見解をもとにお伝えします。

「少し前から右肩上がり」マンション高騰2つの理由とは?

 高騰続くマンション。今年度上半期の新築分譲マンションの平均価格は首都圏・関西圏ともに上がっていて、いずれも過去最高価格を記録しました(不動産経済研究所調べ)。

 ▼首都圏 9489万円 ⇒ 前年同月比19%アップ
 ▼近畿圏 5543万円 ⇒ 前年同月比3%アップ

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 この値上がりについて、さくら事務所の山本氏は「マンション価格はバブル景気以降落ち着いていたが、少し前から右肩上がり」していると指摘。

 新築マンション平均価格の推移(不動産経済研究所調べ)を見ると、バブル期には首都圏で6000万円台を突破するなど上昇し、その後、バブル崩壊以降しばらくは横ばい状態が続きましたが、2010年代に再び上昇へと転じています。その要因して考えられるのが、アベノミクスによる「低金利」と「コロナ禍」です。

「貸して儲ける」から「売って儲ける」へ

 マンション投資のトレンド変化も、価格高騰の背景にあるようです。

 かつては、マンションを購入して貸し出し、家賃収入を得る方法が一般的でした。しかし現在は、購入した物件を転売し、売却益を得ようとする傾向が強まっています。つまり「貸して儲ける」から「売って儲ける」へと変わっているのです。

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 「外国人がマンション投資で儲けている」という声も聞かれますが…

 国交省(11月調査)によると、“国外に住所がある人”の新築マンション取得の割合(今年1月~6月)は、東京都3%・大阪府2.6%で、「国外に住所がある人が東京都心で2億円以上の高額物件を活発に購入している」という傾向は特に見られないと発表しています。

 この数字について、山本氏は「国内在住の外国人も一定数いるので実態は不明」としながらも「外国人投資家にとって日本のマンションはまだまだ“安い”」と分析。さらに円安で割安感が高まっているようです。

 また、海外投資家はマンションを「キャッシュで一括購入」することも。その場合は金利上昇の影響を受けないため、投資対象になりやすいのです。

 なお、不動産価格は「取引事例比較法」という方法で決まることが多いそうです。新築マンションが1億円で完売⇒類似の物件が1.2億円で完売⇒類似の物件が1.5億円で…といったように、取引事例が重なって価格が上がっていきます。

マンション高騰「4つのリスク」

 マンション高騰により、以下4つのリスクが考えられます。

 (1)住みたい場所に住めなくなる
 都心部のマンションに手が届かない場合、通勤可能な郊外に、さらに遠くに…といったように選択肢が狭まっていきます。

 (2)賃貸物件の家賃値上がり
 不動産価格が高くなると、固定資産税や都市計画税などの税金も上昇。その結果、不動産オーナーは「コストアップ分家賃を上げよう」と考えざるを得なくなります。ただ、家賃については売買価格ほどの上げ幅ではなく、さらに法律で借主は手厚く保護されます。

 (3)マンション管理が荒れる
 マンションが投資目的で購入され実際に住まない人が増えると、管理費など滞納の督促が困難となり、建物の維持管理方法などを総会で決めるのが困難になります。その結果、管理・修繕に影響が。

 (4)街そのものが荒れる
 マンションの管理・修繕が不十分だと、治安悪化につながる可能性があります。また、住む人が頻繁に入れ替わると地域コミュニティの維持が難しくなり、災害発生時などにおける住民同士の連携が難しくなるといった問題も生じます。

「かつてのバブルはどこでも値上がりしていたが…」

 今回のマンション高騰。山本氏は「バブルのようにはじける可能性は低い」と指摘。その理由は「かつてのバブルはどこでも値上がりしていたが、今は値上がり物件が都心部に集中」しているからだと言います。

 これまで安かった日本のマンション価格が世界標準に近づいているという側面があり、急激に価格が下がることは考えにくいようです。

「高騰抑制の効果は限定的ではないか」業界団体が“転売”対策

 そんな中、国や業界団体は対策を始めています。11月25日、金子国交大臣は「日本人か外国人かを問わず、実需に基づかない投機的取引は好ましくない」と発言しました。

 また、国交省は不動産登記に「国籍記入」を検討しているということです。不動産取得の実態を把握し市場環境を適正化するのが目的だと言います。

 これについて山本氏は「実態把握が進む可能性はあるが、高騰の原因は外国人だけではない。住みたい人が住みやすい環境にするために今後データをどう活用するかが重要」と分析しています。

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 一方、業界団体「不動産協会」は11月25日、(1)購入戸数の制限、(2)名義の厳格化、(3)引き渡し前の転売禁止といった“転売”対策に着手しましたが…

 「高騰抑制の効果は限定的ではないか」と山本氏は指摘。「引き渡し後でも高値で売買が成立してしまえば、それが新たな基準価格になる」と言います。

 転売対策などが身を結び、高騰は落ち着くのでしょうか?マンション価格の動向に今後も注目です。