9月12日、総裁選への出馬について問われた小泉進次郎農相は、明言を避けました。しかし水面下では、すでに推薦人に必要な20人を超える議員が、小泉氏の出馬に向けて陣営立ち上げに着手しているとみられ、出馬意向を固めたことは確実です。

 当初は「出馬見送り」もささやかれていた自民党のプリンス。どうして出馬を決意するに至ったのか?後ろ盾になる大物は誰か? 総裁選の裏話も交えて、政治ジャーナリスト・武田一顕氏の解説です。

「『あんた出馬しろ、出馬しろ』と言ってくる人は大体信用できない」

 自民党の総裁選への出馬の意向を固めました小泉進次郎農相。9月15日の週に正式に出馬会見を行う方向で調整しているということです。このほか、9月12日時点で、茂木敏充氏が出馬を正式に表明をしているほか、高市早苗氏、林芳正氏、小林鷹之氏が出馬の意向を示しています。

 小泉氏の出馬をめぐっては、様々な憶測が出ていました。武田氏によると、当初は出馬見送りも有力だったといいます。その理由として、現在44歳という若さと、石破総理に辞任を説得した小泉氏が、石破氏の退陣直後に出馬すると“印象が悪化”する懸念があったことを挙げています。

 武田氏はまた「総裁選の出馬経験者に聞いたことがありますが、総裁選が始まったときに『あんた出馬しろ、出馬しろ』と言ってくる人は大体信用できないんです。なぜならそういう人は、基本的には、自分がどこかのポストに就きたいなど、自分の利益で言ってるわけです」と指摘。

 「だけどこういうときに、『いや、小泉さん、出ちゃ駄目だ。今まだ若いんだから』と言う人は、信用できる人だから、そういう人を信用して一瞬迷うというのは普通のことですよ」と分析します

 しかし、そうした中でも小泉氏は出馬意向を固めました。

 他の4人より少し遅いタイミングでの決断について、武田氏は「小泉氏の場合は、前回の総裁選でも、『カナダのトルドー首相は私と同い年』だとか、『北朝鮮の金正日氏と父が会ったことがある』と言って、そんな外交は簡単じゃないよって言われてボロボロになったという記憶があります。そういうことも含めて“失言”をしないように、できるだけ後で出馬の宣言をした方が得だろという計算が働いた」と考察しました。

麻生氏は“何としても主流派に戻りたいので小泉氏を支える”?

 小泉氏を支える可能性がある、“有力者”は誰なのでしょうか
 
 「菅氏が後ろ盾というのは間違いありません。仮に、石破氏も政策的にも近い小泉氏を応援することになり、岸田氏も乗っかって、その上に麻生氏も小泉氏を応援となると、派閥政治を全然反省してないじゃんとなるので、その反発を小泉氏が政策でもって跳ね返せるか」

 前回の総裁選で高市氏を応援した結果、石破氏に敗れて「非主流派」と冷や飯を食わされた立場にあった麻生氏について、“今回は何としても主流派に戻って、美味しい目にあずかりたいとなると、小泉氏を支えるのでは”という観測が強いと武田氏は話します。
 

「党内野党と言われた石破氏でも新しいシステムを作れなかった。ましてや小泉氏や高市氏では…」

そして、国民も冷静に総裁選に目を向けるべきとも話します。

 「自民党というシステムがどんどん崩壊しつつあるという時代だと捉えれば、誰が総裁になっても何もできないんですよ。小泉氏が総裁になっても、財務省のくびきから逃れられるわけではないので、国民が驚くような新しい政策はできず、結局自民党は誰がやっても同じという話になる」

 「総裁選はドラマがたくさんあり、面白いと思いますが、実際には自民党のコップの中の争い。そもそも石破氏がなかなか辞めないからこんなことになってるんだというふうな、冷めた目で見るという視点は、必ず必要です」

 「1955年から70年間、自民党はごく短い時間を除いて、政権与党にいて、その中でいろんなしがらみや完成されたシステムがあるから、そこから逃れることはできないわけです。小泉純一郎氏だって『自民党をぶっ壊す』といっていましたが、結局ぶっ壊れてないじゃないですか。変えるには1回政権が変わって、また戻ってくることが必要。第二次安倍政権で、なぜアベノミクスを掲げて生活を重視したか。それはその前に、民主党政権の際の野党時代があったからです。がんじがらめになって身動きが取れなくなっているのを、石破氏がまた証明してくれたわけです。党内野党と言われた石破氏でも新しいシステムを作ることができなかったということは、ましてや小泉氏や高市氏では変えることは基本的にはできない」

連携相手は“維新”?

 小泉氏が仮に総裁となった場合、連携する野党はあるのでしょうか?

 「菅氏は第二次安倍政権で官房長官になったときに、松井一郎氏や橋下徹氏とたびたび食事をして、パイプを作っていました。その菅さんが後ろ盾で、同じ神奈川選出の小泉氏が総裁となれば、維新と組む可能性が高いだろうと」

 そして小泉氏はがどういった政策を今後打ち出していくのか?現在、農水大臣ということで農政改革を打ち出す可能性があると武田氏は分析したうえで、もっと何か驚くようなものが出てこないと、期待感は高まらないとしています。

 自民党総裁選の投開票は10月4日です。