季節外れのインフルエンザ。全国の小中学校で9月11日午後1時時点で38クラスが学級閉鎖となるなど全国に広がっています。このインフルエンザの早い流行でせき止め薬が不足しているということです。
残暑が続く中でのインフルエンザの流行。ワクチンは?そして予防は?葛西医院・小林正宜院長が解説します。
◎小林正宜:葛西医院・院長 総合診療医 救急医療・在宅医療にも尽力
インフルエンザで学級閉鎖も 流行の予兆はまだ
ーーーインフルエンザによる学級閉鎖が広がっていて、全国の小中学校で38クラスが学級閉鎖となっています(9月11日午後1時時点)。実際に今年は流行が早いのでしょうか?
(葛西医院 小林正宜院長)「流行が早い可能性がある、ということだと思います。学級閉鎖というのは局所的なものを見ているため、地域全体で見たらどうかというと、まだ予兆はそこまで見えてきていない」
ーーーインフルエンザの流行のピークはいつ頃になりそうですか?
「おととしに流行の前倒しみたいなことがあり、9月中旬くらいから流行しました。もしかしたら今年がそういったトレンドになって流行時期が早まってくるかもしれません」
"異例の暑さ"が感染広がりの背景に?
ーーーなぜいま流行が広がっているのか。小林院長によりますと、新型コロナウイルスの流行で受診・検査する人が自体が増えた結果、インフルエンザと診断される人が増えているということですね?
「9月でインフルエンザが猛威というところまで言えるかどうかはまだはっきりしないんですが、現在、新型コロナは流行しています。そのときに高熱で関節も痛いとなると、医師はインフルエンザも頭にかすめます。一度の検査でインフルエンザもコロナも両方検査できるため、インフルエンザの検出率が高い。診断精度の向上も一つの要因かもしれません」
ーーーインフルエンザは冬に流行するイメージでしたが、暑い中でなぜ感染が広がっているのでしょうか?
「沖縄では夏にも流行すると言われていて、はっきりとした理由は解明されていませんが、いくつかの要因があります。今年は特に暑い中で、エアコンを常時使用していると思いますが、そうなると湿度が下がりウイルスの感染力が強くなるんです。
また、子どもたちは暑さのためなかなか外に遊びに行けなくなり、部屋の中で集まって遊んだりすると、感染はしやすくなる。そうしたことでインフルエンザが広がる可能性はあるんじゃないかと考えます」
ーーーエアコンをつけながらも定期的に換気をした方がいいのでしょうか?
「症状がある人や体調が悪い人が室内にいる環境や、不特定多数の人が出入りする場所では換気をした方が良いと思います」
ーーー体調不良で受診する人はいま増えているんですか?
「今はコロナが流行しているので、喉や熱、風邪のような症状で病院に来てコロナの検査をすると陽性という人が増えています」
ワクチン接種時期は焦らず 流行時期をみて判断を
インフルエンザのワクチン接種について見ていきます。厚労省によりますと、薬事承認や供給の見通しを踏まえて10月1日から定期接種を開始する方向で準備しているということです。
小林院長は「10月1日以降からワクチンが打てると思っていただいていいですが、各病院で対応が異なるため問い合わせてほしい」といいます。
―――ワクチンを接種するタイミングは?
「インフルエンザの感染者を報告する定点観測では、9月第1週目はまだ全然流行の兆しが見られていません。一つの目安としては、定点観測の値が10を超えると感染流行の注意報が出るため、そのあたりで接種を考えていただければいいと思います。
例年で考えると11月頃に打つのがいいんじゃないかと思いますが、おととしの流行ピークは11月だったので、おととしのような流行になる場合は、10月初めの方に打った方がいい。ワクチン持続期間は一般的には3か月程度と言われていて、個人差があるため一概には言えないが、接種時期は流行に応じて考えていただいたらいいと思います」
ーーーインフルエンザワクチンは何歳から接種できますか?
「一般的に生後半年以降は何歳でも接種は可能ですので、むしろ子どもは接種した方がいいでしょう。また妊婦の人も積極的に接種して子どもにしっかりと抗体を持たせるというのは大事でしょう」
コロナや百日咳も流行…関連は?
今年はインフルエンザの以外にも「百日咳」が流行していて、国立健康危機管理研究機構によると累計の患者数が7万人を超えました(2019年の4倍)さらにコロナの報告数も増加しています。
―――複数の病気が流行していますが関連性はあるのでしょうか?
「なかなか難しいところですが、百日咳の猛威が今年は異常。特徴としては止まらない咳。ほかにもコロナは高熱になるなどそれぞれ特徴があります。受診の目安としては『早め』です。百日咳は早めに診断しないと、抗生剤が効かなくなってしまう」
ーーーワクチンの同時接種はどうでしょうか?
「一般的にはインフルエンザとコロナのワクチンを同時に接種することが多い。特に百日咳は乳幼児がかかると重症化することがあります。妊婦の人が百日咳のワクチンを打っておくと子どもに抗体ができますので、乳幼児の親や妊婦の人は積極的に百日咳ワクチンを打った方がいいと思います」
インフルエンザの流行を過度に警戒する必要はありませんが、手洗い・うがい・睡眠など基本的な対策を行って健康に過ごしてください。