石破総理の辞任表明で動き出した自民党の総裁選挙、9月22日に告示され10月4日投開票が行われます。これまで議論が進められていた「103万円の壁の引き上げ」「2万円給付案」などの経済政策は、石破総理辞任後、どうなっていくのか…
総裁選の有力候補として名前が挙がっている高市早苗氏、小泉進次郎氏、林芳正氏、小林鷹之氏、9月10日に正式に立候補を表明した茂木敏充氏の経済政策への姿勢とは?政治ジャーナリスト・武田一顕氏と、野村総合研究所・木内登英氏の見解を交えて解説します。
国民民主が求める「年収の壁」引き上げは進むのか…
所得税が課税される“ボーダーライン”、いわゆる「103万円の壁」は今年4月から、123万円に引き上げられ、年収200万以下の人については160万円まで引き上げられました。引き上げを主張する国民民主党は178万円まで引き上げることを求めていますが、それには及んでいません。
この「年収の壁」、総理・総裁が変わることでどうなっていくのか。カギとなってくるのが新総裁と国民民主党との距離感です。総裁選の軸になると言われている高市早苗氏・小泉進次郎氏それぞれと国民民主党との距離感について政治ジャーナリストの武田一顕氏に聞きました。
武田氏によると、高市氏が選ばれた場合は、経済政策が国民民主と近いため「壁」が引き上がる可能性があるが、小泉氏は維新との距離感が近いと言われているため、引き上げは進まないのではということです。
自民党公約の2万円給付は実現難しい?
では、自民党が参院選の公約で掲げていた「2万円給付」はどうなるのでしょうか。武田氏によりますと、そもそも2万円給付の公約は、物価高対策として“しかたなく”出した案ではないかということです。そして参院選での大敗は「民意が2万給付を否定した」ということなので、実現の可能性は低いのではないかといいます。
9月10日に出馬会見を行った茂木敏充氏も2万給付に否定的な考えを示しています。林芳正氏だけは官房長官として公約を守る姿勢を示す可能性はありますが、高市氏・小泉氏・小林氏は2万円給付に消極的だということです。
経済政策の2つの考え方 「財政健全派」と「積極財政派」
経済政策を考えるうえで「財政健全派」と「積極財政派」という2つの考え方があります。
■財政健全派(財政規律)
国の借金や財政赤字を増やさない、税収に見合った支出が基本という考え方
メリット:将来世代の負担を避ける
デメリット:景気後退の可能性
■積極財政派
景気回復や成長のために支出、借金をしてでも景気刺激策を行うという考え方
メリット:経済活性化・雇用拡大
デメリット:財政赤字の拡大
どちらで進んでいくべきかは、専門家の間でも意見がわかれるポイントです。
5人の「経済政策」への考え方
総裁選の有力候補として名前が挙がっている5人の経済政策のスタンスを見ていきます。
武田氏と木内氏によりますと、一番「財政健全派」寄りなのが林氏。次いで小泉氏。茂木氏と小林氏は中間の考え方。高市氏は「積極財政派」のスタンスだということです。
それぞれの考え方を詳しく見ていきます。
■林芳正官房長官(64)
・石破路線に近い穏健派
・財政健全化を重視
・増税には慎重
■小泉進次郎農水大臣(44)
・改革派
・規制緩和を重視
・農政改革・ライドシェアを打ち出す可能性あり
■茂木敏充前幹事長(69)
・積極財政寄り
・生活支援特別地方交付金(数兆円規模)を創設する意向→財源は税収の上振れ
・3年で所得を50万円増やす
■小林鷹之元経済安保大臣(50)
・経済安全保障を重視
・投資拡大・成長重視の積極財政寄り
・財務省出身
■高市早苗前経済安保大臣(64)
・積極財政派
・消費税軽減税率0%に
・国債発行をタブー視せず
・反財務省で異色
・増税反対
武田氏と木内氏によりますと高市氏の考えは党内や野党との調整に課題があり、政策実現は難しいのではないかと分析しています。
少数与党の総裁選 独自色のある政策は進められない?
一方で、去年の総裁選との大きな違いは、衆院・参院で与党が過半数割れとなっている点。国民民主や維新など野党の顔色をうかがう必要があり、誰が総裁になっても独自色のある政策が進められない状況と言えます。
誰が最終的に総裁選に出馬するのかも含めて、今後の行く末を見守っていく必要がありそうです。